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OEKfan Program Notes 曲目解説集

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バッハからさだまさしまで―オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を中心とした演奏会で取り上げられた音楽の解説集です。音楽の解説書やCDの解説を見ながら,時には主観的な感想やエピ…
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【曲目解説】プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」Puccini/La Bohem

プッチーニの作曲したオペラの中では「蝶々夫人」「トスカ」と並んで,彼の3大オペラと呼ばれている傑作です。全体の構成の良さ,という点では,他の作曲家のオペラの中でも対抗できるものがないほどです。4幕から構成されており,交響曲の4つの楽章にも比較できます。起承転結の構成を当てはめることも可能です。演奏時間も2時間以内に収まります。 このオペラは,貧乏な若者たちが主人公です。いわゆる「青春群像モノ」で,現代の聴衆が見ても違和感なくストーリーの中に入っていくことができます。プッチー

【曲目解説】ミヨー:組曲「スカラムーシュ」 Milhaud:Suite"Scaramouche"

ミヨーは第1次世界大戦中,ブラジル公使となった詩人ポール・クローデルの秘書官としてブラジルのリオ・デ・ジャネイロに出かけ,そこでサンバ,ショーロといった独特な民族音楽に触れました。そこから得たインスピレーションをもとに書かれた作品の代表がこの「スカラムーシュ」です。 「スカラムーシュ」という言葉は,コメディア・デラルテと呼ばれる伝統的なイタリア喜劇に登場する臆病なくせに空威張りをする道化役のことです(ちなみにイタリア語では"スカラムッチャ(Scaramuccia)"と言いま

【曲目解説】ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲第5番 Vaughan Williams/Symphony No.5 

1943年,第二次世界大戦中、ヴォーン・ウィリアムズ(RVW)が「永遠の平和」を願って作曲した交響曲です。この作品はヴォーン・ウィリアムズの交響曲の中では最も簡素な編成で,近年日本での演奏機会も増えている作品です。1938年頃から着想され,同時期に作曲が進められていたオペラ「天路歴程(The Pilgrim's Progress;17世紀英国のジョン・バニヤンの寓話文学のオペラ化)」と共通の材料が用いられています。 1934年に作曲された交響曲第4番で聞かれた暴力的な不協和

【曲目解説】フランク/前奏曲,フーガと変奏曲 ロ短調, op.18 Franck:Prelude, choral et variations, op.18

1860~62年に書かれた「大オルガンのための6つの作品」の中の第3曲。表題どおり3つの部分から成る作品ですが「変奏曲」の部分は,前奏曲を変奏した形ですので,フーガを中間に挟んだ,A-B-A'の三部形式といえます。各部分は次のとおりです。ビゼーがこの曲を聞いて,フランクを絶賛したというエピソードが残されています。 前奏曲:アンダンティーノ・カンタービレ,8/9拍子。オーボエ管による牧歌的なメロディは,フランクが書いた最も美しいものの一つです。一度聞くと忘れられなくない魅力を

【曲目解説】メシアン/世の終わりのための四重奏曲 Messiaen: Quartet for the End of Time

メシアンが第2次世界大戦の捕虜生活の中で作曲した作品です。20世紀に作られた室内楽曲を代表する作品です。初演は1941年1月に第8-A収容所で行われています。編成がクラリネット,ピアノ,ヴァイオリン,チェロという変則的な形を取っているのは,収容所で書かれたことと関係があります。メシアンと同じ収容所にこれらの奏者が揃っていたことがその理由です。偶然できた編成なのですが,そのことによって不思議な色合いが出てきたとも言えます。 この作品は,旧約聖書の「ヨハネの黙示録」第10章から

【曲目解説】ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ Ravel / Pavane pour une infante défunte

ラヴェルの音楽の中でも,そのメロディの優雅な美しさとタイトルにぴったりの謎めいた気分で特に親しまれている作品です。パヴァーヌというのは16世紀スペインに生まれた宮廷舞曲の一つ。孔雀のように威厳をもって静々と踊られる舞曲です。 オーケストラ曲として馴染んでいる方も多い作品ですが,まず,1899年にピアノ独奏曲として作曲されました。ラヴェル自身,この曲に対して「あまりにもシャブリエ風。貧弱な形式...」と批判的だったのですが,実は愛着もあったようで,1910年に自身で小編成オー