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2021年のJ2は熱かった。(昇格争い編)

※長文です※

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12月19日に浦和レッズが天皇杯優勝を果たし、2021シーズンが終了したJリーグ。

明治安田生命J1リーグでは川崎フロンターレが連覇を達成し、YBCルヴァンカップでは名古屋グランパスが頂点に立った。ガンバ大阪やヴァンラーレ八戸はコロナによる活動休止期間が発生して苦しい時期もあった中で、全クラブが無事に今シーズンを完走したことが、まず素晴らしいことだと思う。

今回はそんな2021シーズンの中から、明治安田生命J2リーグについて取り上げる。
22チームが42試合の長丁場を戦い、上位2チームがJ1へ昇格、また下位4チームがJ3へ降格というシステムだった。
(※例年は上位2チームの自動昇格に加えて3位〜6位が昇格プレーオフに進み、その勝者がJ1の16位と入れ替え戦を行なっていた。また例年の降格枠は2チーム)

昇格への道は狭くなり、降格のリスクは大きくなる過酷な条件下。
順位推移の経過をなぞるだけでよみがえる白熱の展開を振り返ってみる。上位編です。

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(画像出典:Jリーグ公式 明治安田生命J2リーグ順位表

残留争いの振り返り編↑

優勝・昇格争い

今季のJ2では、優勝したジュビロ磐田、2位の京都サンガF.C.がJ1昇格を果たした。磐田は3年ぶり、京都は12年ぶりのJ1となり「復帰」という表現も多く見られた。

磐田は第39節で、京都は最終節の一つ前・第41節で昇格が決定。しかし両クラブにとって全てが順風満帆というわけではなく、序盤戦の上位争いは違う形だった。
開幕節から数試合ごとに分けた順位を振り返ってみる。

1〜5節:新潟と琉球の開幕ダッシュ

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(画像内の数字は第5節終了時の獲得勝点)

スタートダッシュに成功したのはアルビレックス新潟FC琉球だった。

ともに第1節から5連勝。当時は「開幕5連勝ならJ1昇格率85.7%」というデータに基づいた記事も掲載されていた(日刊スポーツ)。

新潟、琉球ともに第6節で引き分けて連勝は5でストップしたものの、開幕直後の主役となったのはこの2チーム。新潟は第5節、過去の対戦で0勝7分5敗と苦手にしていた東京Vを7-0で圧倒するなど、5試合で17得点をマークする絶好調ぶりだった。

さらにJ2昇格初年度のブラウブリッツ秋田も最初の5試合を3勝1分1敗と好スタートを切った。第4節まで4試合連続アウェイゲームだったことを考慮すると凄みが増す。

この時点で、開幕2連敗となった磐田は11位、京都は9位。なお磐田のシーズン初勝利は第3節の京都戦(4-3)だった。

6〜10節:進撃の2強と、5連勝の京都

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(画像内の数字は第10節終了時の獲得勝点)

およそ1/4となる第10節を消化した時点でも新潟琉球の勢いは衰えない。
特に新潟は唯一の無敗をキープし、勝点26。2020シーズンの第10節終了時点では、首位の長崎が勝点23、2位から4位までが勝点19だったことを踏まえると良いペースでポイントを重ねていた。

3位に上がってきた京都は、この期間の5試合で全勝。上位2チームにひたひたと追い迫ってきた。京都の5連勝は8シーズンぶりの快挙で、サンガはここから無敗街道を邁進することになる。

また磐田もエースのルキアンが好調で6〜9節に4連勝を達成したものの、第10節で山形に敗れて小休止となった。

11〜15節:天王山を制した京都。首位交代

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(画像内の数字は第15節終了時の獲得勝点)

J2序盤戦の大一番は、第15節にやってきた。

第13節の松本戦に引き分け、翌節の町田戦でシーズン初黒星を喫した新潟は、第6節から8勝1分無敗と好調をキープする京都をホームに迎える。
試合前の時点では新潟が首位、京都は勝点1差の3位につけていた。

強度の高いプレッシングを敢行する京都に対し、新潟はパスワークで応戦。ハイレベルな内容の中、試合は川﨑颯太の決勝点でサンガが勝利を収める。開幕からトップを走り続けていた新潟を引きずり下ろし、2位・琉球も敗れたことで首位に浮上。
J1昇格を達成した京都にとって、この新潟戦は一つのターニングポイントとなった。

この期間の4位以下に目を向けると、ヴァンフォーレ甲府が4勝1分。また指揮官の交代に早々と踏み切ったV・ファーレン長崎が、松田浩新監督の初戦となった第13節の北九州戦を白星で飾り、巻き返しの狼煙を上げている。

そして、愛媛と秋田に引き分けたものの第14節、15節をクリーンシートで連勝し、5試合負けなしとした磐田。ジュビロの快進撃が幕を開けた。

16〜20節:鉄壁の磐田、首位に肉薄

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(画像内の数字は第20節終了時の獲得勝点)

アルビレックスを下して首位に浮上した京都だが、第16節の甲府戦から3試合連続の引き分け。一方の新潟も第16節・琉球との上位対決を制して一時は首位を奪い返したものの、次節で甲府とドローに、岡山には敗れて再びトップを京都に明け渡した。

京都、新潟、琉球を凌ぐ勢いで勝点を積み重ねたのは磐田だった。
第14節から第20節まで7試合連続の完封勝利。甲府や長崎といった上位チームも抑え込み、クラブ新記録、そしてJ2記録に並ぶ快挙を成し遂げる。

第20節の長崎戦後、MF鈴木雄斗はこのようなコメントを残している。

今日の試合に向けたミーティングが始まる前、「自分たちは6連勝しているけど、この6試合勝たなきゃいけない試合しかなかったな」と振り返って考えていました。J1に上がることって本当に大変だなと改めて思いました。無失点で6連勝していても、誰1人として慢心はしていません。毎試合苦しみながら勝っていて、この前も森岡陸と話していたのですが、6試合連続で完封して勝った後でも、(森岡)陸は凹んでたんですよね。自分のプレーに満足できなかったと。5連勝して完封勝利しているDFであんなに凹んでいるとは誰も思わないだろうなと思っていて。そういう姿勢というか、こういうものが勝ちが続いて良いゲームを続けられている要因なのかなと思っています。

出典:ジュビロ磐田 明治安田J2 第20節 vs. V・ファーレン長崎

鈴木の言葉を借りれば、ジュビロは「勝たなきゃいけない試合」をきっちり勝ち続けることができたチームだった。第18節で京都に並ぶと、磐田はぴったりと並走して首位奪取の機会をうかがった。

前述の長崎同様、早い段階で監督交代に踏み切ったモンテディオ山形も快進撃を続けていた。アタッキングフットボールを標榜するピーター・クラモフスキー新監督は、就任初戦となった第14節・愛媛戦で勝利を収めると第20節まで5勝1分。山形は6、7月の主役候補に躍り出る。

また東京ヴェルディはこの期間の5試合に全勝。アウェイ連戦を強いられた第21節以降は苦しんだが、ここでの貯金が物を言った形になった。

21〜23節:ジュビロを止めたのは…

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(画像内の数字は第23節終了時の獲得勝点)

2021シーズンのJリーグは、オリンピック期間による中断期間が7月から8月にかけてあった。
J2は7月17日、18日に行われた第23節を最後に、中断期間へ突入。ここまでが前半戦という位置付けになる。

前半戦を首位で折り返したのは京都
第21節の長崎戦で実に16試合ぶりの黒星を喫して磐田に首位を明け渡したものの、第23節でその座を奪還する。一方の磐田は第21節・新潟との激戦を制したが、そこで連勝はストップ。第23節、ジュビロに第10節・山形戦以来の黒星をつけたのは、またもモンテディオ山形だった。

クラモフスキー監督就任後8勝1分と上昇気流に乗る山形はジュビロのホームに乗り込むと、開始30秒足らずで先制。37分には中原が左足で追加点を叩き込み、反撃を1点に抑えて6連勝を達成した。
指揮官が「大きな3ポイントでした」と日本語でコメントしたことからも、価値の大きさがうかがえる。中断期間へ突入するのが惜しいくらいの、絶好調ぶりだった。

6連勝で締めくくった山形だけではなく、FC町田ゼルビアはラスト5試合を4勝1分で、同じく4勝1分のヴァンフォーレ甲府は4連勝で前半戦を終えた。7位町田と1ポイント差の8位V・ファーレン長崎も京都を撃破するなど上り調子。
”上位”の集団がぎゅっと詰まった中で、J2リーグは3週間あまりのブレイクを迎えることになる。

24〜28節:上位陣に立ちはだかる水戸

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(画像内の数字は第28節(9/5)終了時の獲得勝点)

夏の移籍期間で、各チームは戦力補強を施した。
リーグ中断期間中に加入した選手はもちろん、中断前に加入した選手をさらにフィットさせるためにも、五輪によるブレイクは大切な時間だったはずだ。

磐田は7月にMF金子翔太、DF伊藤槙人、DF高野遼が加入。特に伊藤槙人は、6月にVfBシュトゥットガルト(ドイツ)へ海外移籍を果たした伊藤洋輝の穴を埋める存在として大きな期待を持って迎えられた。第27節で初先発となった伊藤は、以後不動のスタメンとしてジュビロを牽引していくことになる。

磐田京都のつばぜり合いは依然として激しかった。
第25節に磐田が首位に立ったものの、27節に京都が再奪首。翌節、再びジュビロが首位を奪い返した。
なお9/4、5に行われた第28節終了時点で、京都は1試合(第25節・松本戦が豪雨により中止)消化が少なかったものの、9/7の代替試合は引き分けたことで、28試合消化時点での勝点はジュビロが59、サンガが58となる。

上位2チームを追いかける3位以下のチームだったが、その前に水戸ホーリーホックが立ちはだかる。

第25節、琉球に1-0で勝利。翌節京都に敗れたものの、第27節には新潟を、第28節には山形をクリーンシートで退ける。
浦和レッズに移籍した平野佑一をはじめ、主力選手がJ1のクラブにステップアップを果たした中での快進撃は驚きをもたらした。

磐田、京都と3位以下の差はじりじりと離れていく。

29〜33節:負けない磐田、進撃の長崎

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(画像内の数字は第33節終了時の獲得勝点)

首位の磐田は後半戦(第24節)スタート以降、10試合負けなしを継続。
第30節の岡山戦に引き分けて一旦は2位に後退したものの、翌節の白星で再び首位に浮上した。
琉球、町田といった上位陣相手からもしっかりと3ポイントを獲得し、付け入る隙を与えない。

結果的にジュビロはここからトップの座を譲ることなく、優勝を果たすことになる。

2位の京都も第33節までの5試合を4勝1敗。その一つの黒星をつけたのはV・ファーレン長崎だった。

長崎の後半戦は過密日程とともに始まった。

日付、試合 (会場)
8/18 天皇杯 1-3 鹿島 (長崎)
8/22 リーグ 1-1 秋田 (秋田)
8/25 リーグ 2-0 金沢 (金沢)
8/28 リーグ 0-2 千葉 (千葉)
9/4 リーグ 3-1 琉球 (長崎)
9/11 リーグ 0-0 相模原 (長崎)
9/14 リーグ 5-1 山形 (長崎)
9/18 リーグ 3-3 町田 (町田)

8/9の第24節・金沢戦(アウェイ)、8/14の第25節・山形戦(ホーム)が雷雨、豪雨により中止。再開初戦は8月18日、本拠地のトランスコスモススタジアム長崎で行われた天皇杯・鹿島アントラーズ戦だった。(1-3で敗戦)。鹿島戦を皮切りに、長崎は11日間で4試合を戦うことになる。しかも会場は長崎→秋田→金沢→千葉とアウェイの転戦。

9月4日の琉球戦から、長崎は8試合負けなしを記録した。

一方で、3位以下のチームは直接対決でのつぶしあいが続き、昇格圏との差が開いていく。

第29節では新潟(3位)が町田に敗れ、その町田は翌節長崎と引き分け、第32節、33節で連敗。好調をキープした甲府も第31節で新潟に敗れた。残り9試合となった時点で、2位・京都と3位・長崎の勝点差は9。5位の町田以下のチームは、可能性として昇格が難しい状況となった。

34〜38節:昇格、優勝へ。ジュビロの行進

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(画像内の数字は第38節終了時の獲得勝点)

磐田京都のデッドヒートは依然として続いていた。

磐田は第34節、35節で栃木と愛媛に引き分けたが、同じ節で京都もそれぞれ引き分け。勝点差「2」が広がりも詰まりもしないまま、第38節の直接対決を迎える。

この試合で勝利した磐田は3位との勝点差を12に拡大。残り4試合で1ポイントでも獲得すれば昇格は決定し、サンガとの勝点差が5に開いたことで優勝にも近づいた。

この期間の5試合で2勝2分1敗とやや足踏みした京都に迫りたいのはV・ファーレン長崎ヴァンフォーレ甲府。第35節には両チームの直接対決があり甲府が2-1で勝利したが、その甲府は第36節、第37節で引き分け、負けとなり、京都との勝点差は残り4試合で8という状況になった。

残り試合が少なくなると、サッカーの世界では「勝点差が試合数を上回ると逆転が厳しくなる」としばしば言われる。
残り1試合で勝点2差の場合、上位チームが負けて下位チームが勝てば逆転するし、上位チームが引き分けて下位チームが勝った場合でも勝点では並び得失点差の勝負となる。

ただしそれは下位チームが“勝つ”上で、上位チームが“勝たない”のが前提。自力と表現されることもあるが、直接対決でない限り相手の取りこぼしを待つ必要がある。

10月以降、8勝2分1敗(期間内勝点26)だった甲府も、7勝2分2敗(期間内勝点23)だった長崎も、同期間内の獲得勝点が17だった京都を上回っている。両チームの躍進がなければ磐田と京都の昇格はもっと早く決まっていただろうし、ファン・サポーターの興味も削がれたはずだ。

ただし前半戦についた差を覆すことは難しく、連敗をせず勝点を地道に積み重ねた京都を逆転することは、結果的にできなかった。

39〜42節。昇格決定。ジェフの躍進

第38節の天王山を制した磐田は翌39節の水戸戦に勝利し、3年ぶりのJ1復帰が決定。第41節の群馬戦に引き分け、1試合を残して優勝も決めた。

2位の京都は第41節の千葉戦で12年ぶりとなるJ1昇格が決定。繰り返しになるが、京都の昇格決定を第41節まで決めさせなかった甲府と長崎の進撃もまた圧巻だった。

また、最終節の第42節では、興味深いカードが実現した。
ともに直近12試合で負けがなかったファジアーノ岡山ジェフユナイテッド千葉の対戦だ。

岡山は12試合不敗の内訳が6勝6分。その期間内では磐田と京都に引き分け、逆転昇格を目指していた甲府、長崎には勝利している。

対する千葉は7勝5分。下位チームを相手に取りこぼすことなく不敗を続け、第41節では昇格を目の前で見届けることになったものの京都と引き分けた。

来季に向け終盤戦でポジティブな戦いを繰り広げていた両チームの一戦は、3-1で千葉が勝利を収める。

千葉の最終成績は17勝15分10敗の8位。得失点差+12。
第30節終了時点では10勝10敗10分の10位、得失点差もプラマイゼロで話題になっていたが、十分な手応えを得てシーズンを終えた。

後半戦、やっぱりジュビロは強かった

終盤戦で快進撃を見せた千葉と岡山だったが、最後にリーグ戦再開後の後半戦(第24節〜第42節)での獲得勝点を掲載する。

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前述の千葉と岡山の躍進が目立つが、なおそれを上回る存在として磐田、長崎、甲府、京都が位置している。
ちなみに序盤戦の首位争いを牽引した新潟は23、琉球は21にとどまった。

この画像を見てわかる通り、ジュビロ磐田の強さはやはり圧倒的だった。前半戦の最終戦となった第23節。山形戦に敗れたのを最後に19戦不敗でシーズンを締めくくった
第18節の甲府戦で2位に浮上して以降、一度も昇格圏外に落ちることなく昇格と優勝へ向けて邁進した。

来季はアビスパ福岡に移籍したエースのルキアンを失ってJ1での戦いに臨むことになるが、2021シーズンで手にした安定感は大きな強みとなる。

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最後まで目が離せなかった2021年のJ2。今回はシーズンを細切れになぞってみましたが、来季の激闘にまた思いを馳せたいと思います。

最後までお読みいただいた方、長文におつきあいいただき、ありがとうございました。

残留争いの振り返り↑

参考サイト:
J.LEAGUE Data Site

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