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【コラム】進むことは創ること

「先が見えない」という言葉をわりと聞くようになった今、先について考えてみました。創作する行為をこの7年ほど続けて来た僕なりの先の見方ですが…

■今まで見えていた「先」について。

何月何日に〇〇さんと会って、〇〇駅のそばに出来た焼酎の美味しい店に行く。

一見羨ましいスケジュールではあるが、僕はこれがわりと苦手である。
その日までの自分の生活がどんなに充実したとしても、その日がやってくるとそれ以上の所には行きつかない、もっと違うお店に行きたくなるかもしれないし、ワインが呑みたい日になるかもしれないし、逆を言えばそんなに華やかや気分じゃないかもしれなく、コンビニで缶チューハイとおにぎりを買って家に帰りたい日かもしれない。

〇〇さんと約束をしてから10日間あるとすると、10日間の自分の日々を無視して、10日前の約束を果たす事になる。

しかし、これを「近い未来」として安心を見出す事を、僕も含めた多くの人がやっていたのではないだろうか。

フリーランスとして活動をしていくと、1年先の仕事が入ると凄く嬉しい。
では、なんで凄く嬉しいのだろう?

そう。安心するからである。

1年先まで僕はこの仕事をしていていいのだと許された様な気持ちになり、安心して、嬉しい。そしてその日まで、前を向いて活動ができる。
それが「先」だった。

■見える景色は自分で選ぶ

実際に今現在、来年の公演等のお仕事の話をありがたい事に頂いている。しかし、必ず「今のところは開催することになっています…配信になる事も…」という文言がつくようになった。
これに1回、1回、心配を覚える必要もないし、なるようにしかならないのは今始まった事ではない。いつだって100%実施される未来なんてなかった。
その事を、だいたいの人達は想像できなかったし、心配になる事をわざわざ想像しなかったのだろう。

しかし今は、人を集める事が出来なくなり舞台が出来なくなる事が、またあるかもしれない未来を誰もが容易に想像が出来る。

だからといって本番の予定が入る度に、心配事が増えるのでは体に悪い。

考え方によってはこれくらいふわっとした未来の方が、その日まで自分を全力でぶつける事が出来る、とても健康的なものなのではないだろうか。

1年後の為に今日を生きるのではなく、今日を自分の見たい景色を選び、進みたい所に歩るく為に生きた結果。
1年後の未来は、その時、その自分の1番心地の良い今日にななる。

1年後に本当に本番が行われていたら、それは心地の良い時間であり。
本番を行う事が叶わなかった時は、それがその時1番心地の良い結果なんだろう。

誰かに見せてもらっていた「先」は、自分のものではなく。
その誰かが前を向くのをやめたとき、自分の意志とは関係なく奪われる未来だったのだから、「先」が見えないということは、自分で創るチャンスが来た合図なのかもしれない。

■細胞に従う

色々な事が細分化され、様々な職業を持つ人達が増えたのにも関わらず、何かの流れに乗って流れ着く場所が自分の未来であるかのように多くの人が幻想を見てしまうのが人間なのかもしれないが、そろそろやめようか。という事なんだと思う。

人の細胞はどんどん生まれ変わっているのに、思考がついていかない時期が長かったんだろう。
自分の細胞は変化を感じ、窮屈に感じ、変化を繰り返す中で、我々の思考は「いやいやまだ行ける」「今までだって、これで行けたじゃないか」と頑固に執着してしまい。
とっくに違う未来に舵を取った細胞と、自分の思考のずれに今ようやく気が付こうとしている。

変わる時って辛い事もあるよね。ってな感じて、辛い状況をそれ以上に悲観せずに、無理をしていた自分の細胞に、自分の思考で寄り添ってあげる事が「創造」に繋がるのではないでしょうか。

そうして創り続けた日々の先にある、1年後の「舞台」に関わる事が出来るよう、「創造」は続けるべきだと思う。
そして、舞台だけではなく、創造の過程にこそ価値がある事に胸を張り、変化と創造を繰り返したい。
そして先人が残した「過去」に出会えた時は、尊敬の念を忘れずに過去を未来に運べはいい。

人は愚かかもしれないが、恥じる事はなく、悔いることはなく、反省、創造、変化、回帰。

先は見せてもらうものではなく、創るもの。

ダンス劇作家 熊谷拓明

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