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【みんなで選ぶ一人小説ダンス劇】毎日連載「〇〇な男」第9話

ダンス劇作家「熊谷拓明」が、この度の緊急事態宣言が解除されるまで     ダンス劇小説を毎日連載!
もっともいいねを集めた作品を、収束後どこかの会場で、
熊谷が60分の1人小説ダンス劇として上演致します。

第9話「いなせな男」作.熊谷拓明 

「あー、なるほど、んーー。
確かに貴重なものですよね。
しかしですね、こちらでもこの手の品物を取り扱った事がありませんで。。。

んーー。コーヒーメーカーだといえばコーヒーメーカーなんですが、それにトースターが付いていて、トースターの下には小物入れ、小物入れの引き出しから、手鏡が飛び出る仕組みになってるんですね!!
 
ひゃーこれは初めてだ。」

店の中にはギターから、ドラム型洗濯機、宇多田ヒカルのミュージックビデオに出てきてたような、黄色い一人掛けソファー、石と石の隙間から水が溢れ出て、水晶をいつまでも回しているオブジェ、立派な丸みを帯びた脚にささえられた将棋盤、所謂薄型テレビからは、NHKの夕方のニュースが流れ、キャスターの顔がちょうど隠れる位置に、4800円と黄色い画用紙に赤字で手書きされた値札が貼られていて、店内から溢れて路上には、黒いパイプ製のシングルベッド、その上にはキレイに透明のビニール袋でマットレスがパッキングされ静かに横たわり、枕元に大きなスピーカーが2つ並んで、再び震える日を待っている。

その店先で、男は困っていた。

言葉数すくない、品の良いその女性は、ベビーカーと呼ぶよりは、乳母車と呼ぶのがふさわしいそれに、小さな引き出しが4つ付いたウォールナットの木目の綺麗な小物入れの上に、パンが上下で2枚焼ける白いトースター、その左横に8杯分はコーヒーを淹れることができそうなコーヒーメーカー、反対側には小物入れと同じ木目のウォールナットで作られたマグカップホルダが造り付けられている。なんと呼ぶべきかがわからない代物が乗せられていた。

女性はこの代物と40年間暮らしていたらしいのだが、歯が弱くなりカリカリのトーストとコーヒーを楽しむ事が出来なくなり、誰かに使ってもらえたらと。この「なんでも絶対に買い取ります」の看板に誘われて隣の街から乳母車を押してきたのだと言う。

ざっくり切られた金髪に、黒いニット帽、右耳にちいさなピアスを5つ、白いTシャツ、黒いジーンズに赤い前掛けを垂らした男は、街で親しまれている笑顔がしだいに、重力に負け、困り果てている。

なんと呼んでいいのかわからない、この代物をせめて、トースターとコーヒーメーカーに切り離させて貰えないかと女性に頼むが、言葉数少ないこの女性が首を縦に振ることはなかった。

このままでは値段を付けられないので、なんとか切断させてくれと頼むと、女性は小物入れの底を撫で引くと、50センチ程のまたしてもウォールナットで出来た脚が4脚現れた。

男が店先に50センチ背が高くなった、その代物を立たせると、女性は本当に幸せそうに、そして満足げに微笑えんで、
「ねぇ。いいでしょ?」
と男に問いかけた。

「はい。とても。」

困り果てていた男の顔は、いつもの笑顔に戻っていた。

赤い日除けテントに「なんでも絶対に買い取ります」と大きく書かれたこの店は、毎朝近所の人達が食パンとマグカップを持ってやってくる。
2軒先のコーヒー屋の主人がコーヒー豆を煎って持ってくると、毎朝ささやかな歓声をあげ、売り物のテーブルや、大きなステレオや、食器棚の上でそれぞれの朝食がはじまる。

今日はおおきなステレオがこの店を卒業する。

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最後までお付き合い頂きありがとうございます。
もし、この話がダンス劇になったら、どんな動きでどんな声なんだろう。。。
僕も今はわかりません、皆さまが選ぶダンス劇。
一緒にワクワクを感じて頂けたら幸いです。

期間中、サポートボックスよりサポート頂けたみなさまのお気持ちは、選ばれた作品をダンス劇として上演する準備資金として使わせて頂きます。

必ず劇場でお会いしましょう!

踊る「熊谷拓明」カンパニー
熊谷拓明

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新作ダンス劇
「舐める、床。」
2020年12月10日〜13日@あうるすぽっと
詳細後日発表

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