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うさぎ

ポケットの中 ぎゅっとしてみる
からっぽなんだけどな とりあえず とりあえず

今から未来の香りがして
光をひっくり返したところの匂いもする
飛行機雲が太陽の横を通りすぎていった

なにもなくていいや
どうせなにかはあるんだろうし
なにもなくてもいいや
いつだってなにかが注がれているんだし
何億年か前の7月のオーロラのほつれが定食屋と風俗店の隙間で舞っている


よろこび、楽々、そんなのずっとつづかない
かなしみ、望絶、そんなのずっとつづかない
今を使い果たすように
今を残さず食べ尽くすように

なにもなくて
なにかあるとしても空虚で
せめて 未来から思い想い匂いが ふわっとして来てほしい
飛行機雲がひとつ隣の宇宙へ消えていった
何千年か未来に積もった雪がぼくらのまちに雨を降らせた

ポケットの中 ぎゅっとしてみる
なにもないの中にある 不思議にふれる
なんとなくの毎日にモノトーンなりの灯りを点して
飛行機雲が月の裏側でうさぎを乗せてオレンジ色の惑星を目指した
死んだ星に息を吹き込んで懐中時計にした
赤い目のままで
とぼとぼと
からっぽの互いに足音が反響してる
その音が透明なキャンバスに絵を描く
なんとなくの毎日
なにもない に僕以外の誰かと
僕以外の誰かに触れる僕を足す

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