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震える手当て

弱さは
恥ずかしさ

見せるなんて
イヤだ

弱さの否定は
ボディーブローのように
ココロに効いていた

ああ、誰か…

「だいじょーぶ」って
自尊心の漏れていく穴に
手を当ててくれ

眠れず
天井を彷徨う視線を落ち着かせようと
SNSに「いいね」を押し続けていた

「ワタシはここにいるよ」

適当な「いいね」は
ひそかなSOS

画面をスライドしていくうちに
空しさだけが積もっていった

みんなは自分を表現している
ワタシはどうなんだ?
評価のない安全に流されてないか?

きっと、この空しさの理由は
そこに自分がいないことなんだ

表現で塗られた世界に
いくらスクロールしても
ワタシはいない

誰にも気づかれない小さなため息ひとつ

合わせたように
スマホがやさしく
「ポーン」と部屋に響いた

ひょんなことから
ワタシが初めて出した作品を
買ってくれた友人からだった

「友人の友達が
トイレに飾ってあったワタシの作品を
抱えて部屋に戻ってきて震えていたと…
だから、それをプレゼントしたんだと

そんな報告にワタシの胸が震えた

あの時の弱さと向き合ったワタシの作品
誰も買わないだろうと適当に値段をつけた作品

ワタシの知らない誰かに伝わり
今、私が震えている

震えをおさえようと
「いいね」を押す作業を止め
スマホを胸に押し当てた

作品への自信のなさがこみ上げる
震えと恥ずかしさが交差する

そんな素敵な現実さえ
疑ってしまうワタシ

でもね
こんな夜だから
喜びも恥ずかしさも
流さず、素直に引き受けよう

こんな夜だから
引き受けたいんだ

だって、
誰かに手当てを求めてたんでしょ?

「だいじょうぶ」

ワタシは私でいいんだ
震源はワタシ

知らない誰かを震わせ
私に共鳴する

あの時のワタシが
私に手を当てて
満たしてくれていた

「だいじょうぶ」

その震えたその手は
知らないあの人の手と重なっていた

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