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東京

 東京は怖い。嫌な思い出があるわけでもないし、事件に巻き込まれたことなんかもない。ただ、地方でだらだらと暮らす僕にとってはあまりにも忙しなくて、溢れる情報に時間と心を潰されてしまう。
 ガクヅケ木田はこの様を居心地がいいと書いた。岸田繁は、峯田和伸は、柴田隆浩はどうなんだろうか。東京に行くたびに彼らが上京してきた日を想像する。彼らも最初は怖かったのだろうか。いや、夢に塗れてそんなことを考える暇はなかったかもしれない。
 3人とも”東京”というタイトルがつく名曲を歌っている。曲にこめられた意味はそれぞれ違うけれど、どの曲を聴いても彼らが持つそれぞれの感情の強さに気圧されてしまう。それなら、東京が怖いという僕の感情も忘れずに強く持っておこう。彼らのおかげでそう思える。

 東京は楽しい。素敵な思い出と経験が沢山ある。地方で暮らす僕にとって趣味の楽園であり、溢れる好奇心で時間と心を潰せる。 
 東京は、ひどく広く遠く居心地がいい。中央線沿いの街を歩くだけで文化に触れたような気持ちになれる。実際、本や映画を根強く支えてくれている店が多く、頭が痛くなるほど大量の文化を浴びることができた。
 前付き合っていた子が東京の人だったこともあり、地方から何度も鈍行に揺られた。その2時間はすごく怖くて、でもやっぱりそれ以上にワクワクしていた。

 東京は怖いけど楽しい。それでいいと思う。曖昧な気持ちを楽しめる大人になりたい。でも今はまだ、怖いの方が優勢な気がしてる。

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