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派手にDIYした人。

インタビュー2:派手にDIYした人。

~破壊と創造~

Fさん:フリーランスでIT系の仕事をしている女性。1年ほど前にギャラリーを始めた。取材時39歳。おでんの友人。

インタビュー:2017年冬ぐらい

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●行き詰まったので、壁を壊した(物理的に)。
<Fさんがオープンしたギャラリーでお話を伺う>
おでん:好きなことを話してもらおうと思ったんだけど、DIY?DIYが好きだったの?
Fさん:DIYっていうか、ちょっとした大工仕事っていうか。このギャラリーをつくるとき、いろいろやっておもしろかったから。
おでん:そうか。このギャラリーは、事務所を改装してつくったんだよね。えっと、始まりは約3年前かな?仕事で使っていた事務所を、ギャラリーにしようと考えて、改装を始めたのね。
Fさん:いや、厳密にはそうではなくて。…その、3年前の当時、仕事のことでいろいろ行き詰まっててね。「今のままではいけない」とか「新しいことに挑戦しないと」とかいう意識はあったんだけど、何をすれば良いのか全然分からなくて。
おでん:八方ふさがりな感じ。
Fさん:うん。それで、その状態を打破するために、「とりあえず、今できることをやろう!」と思って。…で、まず、事務所の壁を壊した。
おでん:…ん、うん…。
Fさん:「ギャラリーをやろう」と思いついたのは、壁とかを壊した後だね。
おでん:豪快やな。
Fさん:まあ、事務所はもともと家族がもっている物件だったし、私の仕事は事務所がなくてもパソコンがあればできちゃう仕事だから。そうじゃなければ、いきなり壊すのは難しいだろうねぇ。

●バール1本で事務所を解体する。
おでん:だいたい、どういう流れで改装を進めたの?
Fさん:まずは、ここをスケルトンにするでしょ。
おでん:スケルトンってなに。
Fさん:内装を解体して撤去して、空の状態にすること。
おでん:事務所でもギャラリーでもない、ただの空間にするってことだね。分かった。で、スケルトンにしてから?
Fさん:スケルトンにしたら、新しい内装の計画を立てて、設計図をつくる。で、設計図に従って、内装の工事をする。それで完成。
おでん:なるほど。じゃあ、まずは古い内装を解体することから始まるわけね。どれぐらい自分でやったの?
Fさん:解体はほぼ自分でやったよ。壁を壊して、扉をとって、天井をとって。天井の梁(はり)をとるのが大変だったんだよー。こんな大きな梁でさ。古い物件だから本気の梁で、めちゃめちゃ重かったの。あれがバーンて落ちてきたときは死ぬかと思った。
おでん:危ないよ…。解体って、どんな道具使うの?
Fさん:結局、ほぼバール1本でやった。大きめのバールね。…いや、電動工具もいろいろ買ってみたんだよ。でもね、電動工具って、威力があるのは良いんだけど、それを抑える力がないとうまく扱えないんだよ。
おでん:あー。暴走するみたいな感じになるのか。
Fさん:そうそう。腕力を身につけないと、自由には操れないってことに気づいて。それで諦めた。でも、慣れてきたら分かるんだけど、バールでだいたい何でも壊せるんだよね。万能ツールだよ、バールは。板のここにバールの先をガンってやってぐってやると釘がガッと抜けて…。
おでん:そのバールどこ?
Fさん:借りものだから返しちゃった。記念に買い取ろうかとも思ったんだけどね。…写真は残ってるよ。オープン前の告知DMに載せた。
<バールの写真が載っているDMを見せてもらう>
おでん:あ、これね。
Fさん:これこれ。ほぼ1年間がかりで解体したんだけど、ほとんどこれが全部やってくれたの。

●壁に漆喰を塗ってうっとりする。
おでん:解体が終わったら、次は内装工事だね。内装工事は何したの?
Fさん:壁塗りとか。壁には漆喰を塗ってるんだけど、ほとんど自分でやった。自分でやるとプロの人の3倍の時間がかかるんだけど、でも、3倍の時間をかけたら自分でもキレイにできるの。<移動して壁の際を指さす>この、端っこや継ぎ目のところをキレイにするのがポイントなんだけど。…最後に塗ったのはこのあたり。めちゃめちゃうまい。こことかも、めちゃめちゃうまい。
おでん:壁ができたら、次は何するの?
Fさん:棚とかの備品をつくる。備品をつくるために、大工さんに木材を切ってもらって、木の表面に塗料を塗るの。塗料は、自分で塗るから汚いところもあるけど…。これも自分で塗ったの。<木製のバーカウンターをなでる>
おでん:はけで塗るの?
Fさん:いや、ローラーで。4回塗料塗った上に、透明のコーティングを塗るの。これは最後に塗ったから、すごいうまい。めちゃめちゃうまい。<カウンターを見つめてなでる>
おでん:大工さんの仕事は見てたの?
Fさん:見たよ。おもしろいよ~!とにかく段取りが良くてさー。事前にいろいろ考えてるんだろうね。道具を用意しておいて、先にこれを処理しておいて、部品をつくっておいて…って。準備が完璧なの。
おでん:あらゆる工程と、あらゆる可能性が、頭の中で全部見えてるんだろうね。
Fさん:そうそう。やっぱり経験なんだろうね。本やネットに載ってないプロの手際を見せてもらって、「そうすればいいんだー!」って。ホントに楽しかった。自分でやるときも、大工さんの段取りを真似したら、前よりキレイにできるし。

●破壊の快感と創造の達成感。
おでん:DIY的なことって、昔から好きだったの?
Fさん:そうね。部屋の壁紙を変えたり、コンセントのプレート変えたりとか、自分でやってたよ。
おでん:でも、これだけ大きなDIYはなかなかやる機会ないよね。
Fさん:そうだよね。楽しかったなー…。良い経験をさせてもらったよ。これのおかげでレベルアップしたし。
おでん:レベルアップ?何が?
Fさん:技術が。いろんな知識も勉強できたし。大工さんのそばで見習いもさせてもらったし。修行した気になってるからね。
おでん:その技術って、今後どこで使うの…?
Fさん:各所で使えるよ!店内の壊れたところは自分で直せるし。あと、こないだ実家で父が猫専用の小さいこたつを作ってたんだけど、「その作り方じゃダメだな」って、すぐ分かるんだよね。骨組みを作ろうとして棒に釘打ってるんだもん。
おでん:ふうん…(←なぜダメなのか分かっていない)。あのさ、もしお金と時間が無尽蔵にあるとしたら、何したい?
Fさん:自宅を改装したい。
おでん:「家を建てたい」とかじゃないんだ。
Fさん:うん。自宅も結構古いから。あれをまずスケルトンにして…。
おでん:ああ、壊す過程も好きなのかな。
Fさん:そうそう、壊すのも好きなんだよ!釘を抜くときの快感はすごいよ…。ねじ山とかがさ、なめちゃってて取れにくくなってるやつをさ、バリバリバリって抜いたとき?あれは気持ちいいよね…。あ、でも石膏ボードは嫌い。なんかほら、粉がいっぱい出るから。
おでん:壊すのと作るのが好きなんだね。作るときの喜びって何だろう。やっぱり、キレイにできたときの達成感かなぁ。うまくいったときは「よっしゃ!」ってなる?
Fさん:なるなる!だって、あの壁見てよ。完ぺきじゃん。1カ所ちょっとはみ出てて、あそこだけ後悔してるけど、あとは全部完ぺき。できたときは「オレスゲー!」って思ったよ。<しみじみ壁を見つめる>
おでん:そっかぁ。今日はどうもありがとう。いろいろ聞けたからもう大丈夫だよ。
Fさん:あ、もういいですか。まだまだいっぱい話せるけどね。DIYのこと、みんなもっと聞いてくれたらいいのにな。いくらでも答えるんだけど。


<おわり>