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俳優ファンの人。

インタビュー4:俳優ファンの人。

~信仰が生まれるとき~

Yさん:夫婦で暮らす女性。営業事務。取材時39歳。おでんの友人。

インタビュー:2017年春ぐらい

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●俳優の安藤政信さんが好き。
おでん:Yさんの好きなことっていったら何?
Yさん:安藤君。
おでん:即答や。
Yさん:いや、太極拳も好きなんだけど、今教室を変えたりして迷ってる時期で…。安定して好きなのは安藤君なんですけど。
おでん:じゃあ、ぜひ安藤君の話で。
Yさん:うーん、でもあんまり、中身がないんだよね。ただ好き、ただカッコいいっていうだけだから…。そんなにたくさん喋れないかも。
おでん:まあ、とりあえず話してみてよ。
Yさん:うん。

●結婚発覚は試練だった。
おでん:
安藤君のこと、いつから好きだったか覚えてる?
Yさん:高校生のときから「この子はカッコいい」と思っていてー。『聖者の行進』とかをやってるとき。
おでん:広末涼子が出てたドラマ?
Yさん:そう。野島伸司のやつ。金曜日の夜の4チャンネルの暗いドラマ。そういうのに出てた頃からちょっと好きで…。でも、本気で好きだと気付き始めたのは20代の中ごろぐらい。
おでん:25歳ぐらいのとき。
Yさん:そうね。「この人以外にカッコいい人はいない」って定義づけられたのは24、5歳ぐらいかな。だからといって、映画やドラマをチェックするわけじゃなくて。ただ「カッコいい」ってのを強く思ってた。
おでん:ゆるくファンだった感じかな。
Yさん:そうかも。…私がこう、安藤君に対してアグレッシブになり始めたのは、結婚してからぐらいかなぁ。
おでん:結婚したのいつだっけ。
Yさん:34。それまでは、実生活で好きな人がいたりしたから、安藤君に対して、ちょっと本格始動できなかったの。それが、結婚してちょっと落ち着いて、相手を探さなくてもよくなって、恋愛も興味なくなって…。仕事も10年ぐらい続けて落ち着いてきたというのもあるのかなぁ。身辺がいろいろ落ち着いてきたのね。そうなったとき、いよいよ純粋な…恋愛?いや、違うな、何だろう。崇拝の対象というか…。
おでん:まあ、安藤君にパワーを注ぐ時期が来たわけだね。
Yさん:うん。ずっと好きだったけど、本格的に情報を集めるようになったの。
おでん:一昨年あたり、結婚が発覚したときはショック受けてたよね。
Yさん:あれは悲しかった…。ちょうど福山雅治が結婚した時期でー。福山の結婚は「へぇ~」ぐらいしか思わなかったんだけど、安藤君のこと調べたら、すでに結婚していて子どもが2人もいるって分かって…。世間で福山ショックといってるときに、私は安藤ショックでさ。もう、すごい悲しくて仕事も手につかなくて。その日は一人でとんかつ食べに行った。…あ、私、落ち込んだときはとんかつ食べるんだけど。とんかつ食べてカラオケ行って、一人で河島英五を歌った。
おでん:好きな芸能人が結婚したときにショックを受けるってのは、あれは何なんだろうね。別に自分が結婚できると思ってるわけじゃないし、幸せになってほしいと願ってもいるのに、結婚されるとなぜか動揺しちゃうよね。
Yさん:なんでだろう。なんでだろうなぁ。
おでん:神秘性がなくなるのかな。妄想し甲斐がなくなるというか…。
Yさん:実は、安藤君が結婚したとき、安藤君はベストジーニストでいう殿堂入りみたいなところに入ってもらって、他の人を探そうともしたわけよ。
おでん:おお、代わりを見つけようとしたんだ。
Yさん:そう、一瞬ね。でも、やっぱりいないのよ。ポスト安藤君を探そうとしたけど、あんなにいいと思う人はいなかったね。やっぱ安藤君はさ、顔よし、声よし、役よし、普段よし。全てよしの三方よし!!…あ、四方よしか。ごめん、あの、会社では、仕入れ先よし、私たちよし、客先よしで三方よしなんだけど。
おでん:候補に入る人もいなかった?
Yさん:候補も全然出てこなかった。外国人も調べたけど、ちょっと無理だったね。
おでん:それで、結局、安藤君に戻っていったんだね。
Yさん:そうなの。

●本人を見て、無我の境地に。
おでん:で、去年、生の安藤君を見に東京へ行ったのね。
Yさん:うん。写真家のレスリー・キーさんとのトークショーがあったから。…でも、実は、安藤君を実際に見ることにはすごい恐怖心があったの。私、幻滅しやすいところがあって、憧れの対象を実際に見てがっかりしてしまうことが多くてさ。だから、安藤君を見る機会なんてめったにないのに、すぐに「行きたい!」って思えなかったの。夢を壊したくなくて。
おでん:それはそうかもなぁ。本人に会わないまま20年間温めてきた安藤政信像だもんなぁ。
Yさん:でも、行ってみたらめちゃくちゃカッコよくて!実際に見たら、本当にカッコよくて!!もう、「これだー!!」ってなって、安藤君以外のものは何も頭に入って来なかった。会場で素敵な写真展やってたし、他の芸能人を見かけたりもしたんだけど、何を見ても何も思わなくて。自分の存在もなくなって、心頭滅却しちゃった。
おでん:それはそれは。
Yさん:もうなんか、全てを凌駕した時間、全てを超越した世界だったの。私、いっとき超越瞑想っての習ってたんだけど、それよりも超越したね。安藤君を見た一瞬で、全てを越えた。…あの、怖い?
おでん:大丈夫。
Yさん:変な例えなんだけどさ。安藤君を見た瞬間に、私は座禅で飛んだ、って感じになったわけよ。
おでん:
Yさん:あのね、修行がうまくいった感じ。今まで思っていたことを、安藤君を見ることで実際に確認できたの。
おでん:ああ、20年間イメージし続けていたことが、正しかったと確認できたわけだ。
Yさん:そう。もう、生きてて良かったなーって思って。終わった後、一人でずっと泣いてて。
おでん:良かったねぇ。
Yさん:で、私は今までずっと教祖を探してたんだけど、このときに、神は安藤君だって決まったわけ。
おでん:ほほう。
Yさん:そんな圧倒的な経験があったからさ、あのとき自分は生まれ変わったと信じてるの。一種、悟ったってことじゃん。何というかその、全てが見えた悟りではなくて、自分にとって神は何かが分かったっていう意味で。
おでん:うんうん。
Yさん:ホント、ちんけな話だけど、本当にそう思っちゃったんだよ。夢が叶ったって言ったってさ、一千万円当たるとか、東京ドームでライブするとか、社長になるとかじゃないじゃん。人によってはさらっと流せるような体験かもしれないけど、私にとっては違ったわけさ。あの気持ちは忘れたくない。だから、安藤君を見たあの日は、毎年自分の中でお祝いをしようと思ってるの。
おでん:それはいいね。


●オリジナル信仰が誕生。
Yさん:それまでは私、ちまたの神さまをいまいち心から信じられなくて。こっちで火事が起こってて、あっちで洪水が起こってるのに、どうしてうまく収められないんだろうとか思っちゃうのね。あと、神さまの前だと、良いことをし続けないといけないわけじゃん。そんなのあり得ないし。私はそんなに良い人間じゃないし、殺生だってしまくってるし。あと、世の中には修行したり人助けしたりできる人もいるけどさ、毎日の生活でそれどころじゃない人だっているじゃん。だから、みんなにぴったりの神ってのは無理があるんじゃないかと思ってて。
おでん:うん。
Yさん:でも、安藤君を見て、神さまの概念が変わったの。私が安藤君のことを好きで、それについて考えたら、すごくこう、果てしない気持ちになる(笑)。あははは。その状態が「神である」っていうことになって。…ちょっと胡散臭いんだけど(笑)。
おでん:いやいや、いいよ。
Yさん:優しくしてくれたり、救ってくれたり、何かしてくれる神さまもいるけど、安藤君はいるだけでいい神。何かしてほしいとか、何かになってほしいとかじゃなくて、安藤君が安藤君らしくしてて、それが見られたらいい。北極星とか太陽みたいな感じ。
おでん:うん。
Yさん:で、安藤君のこと考えたら、「自分って何なんだろう」「私は何がしたいんだろう」って悩みがどうでもよくなるの。「安藤君がいるんだから、いいじゃない」って。落ち込んだときとかイライラしたときに安藤君の写真見たら、どんなセラピーよりも効くんだよね。それに、年を取る安藤君も見たいから、自分も長生きしようって思うし。
おでん:すばらしいね。
Yさん:あと、私は安藤君に何も求めないけど、安藤君も私に何も求めない。罰せられることもないの。
おでん:正しく生きようとか、がんばる必要もない。
Yさん:うん。そういうのも超越してるからね。ちなみにこの冬は、安藤君の尻のことを考えて仕事を乗り越えたんだけど…。
おでん:尻。
Yさん:あ、安藤君の写真集、お尻もアップで写ってるから。「どんなにおいなのかなぁ」って、ずっと想像してて…。あ、ごめんね、汚くてごめんね。でも、本当に真剣にずっと尻のことを考えてたの。ちょっと変態っぽいんだけど…。
おでん:神さまなのにね(笑)。
Yさん:普通、神さまの尻のにおいをかぎたいなんて思わないよね。なんか、安藤君は神であると同時に、カッコいい素敵な俳優さんなんだよ。ハイブリッドなの。新しいスタイルの信仰の形なのよ。
おでん:ところで、何かとてつもない奇跡があって、安藤君と付き合うチャンスがあったとしたらどうする?
Yさん:え、なにが。実際に付き合うってこと?ダメだよ!あり得ないよ!!目が合うだけでたぶん、すぐ死ぬか不老不死になるかどっちかだと思うし。
おでん:目が合うだけで…。
Yさん:実は、一回安藤君と付き合ってる妄想しようとしたんだけど、ABCのAも無理だったよ。一生懸命がんばったけど、やっぱりできなかった。一番理想的なのは、風呂上がりに髪を拭いてる姿とか、部屋でカップラーメンを食べてる姿を見ることなんだけど。そうやって、見ることしか妄想できなくて…。
おでん:なんかうらやましいなぁ。
Yさん:…あ、え?うらやましい?
おでん:うん。人って、神さまとか、心のよりどころがある方が、絶対生きやすいと思う。でも、それだけ思いを注げられるものを見つけるって難しいじゃん。何より、Yさんのそれは20年間思い続けた末にたどりついた境地でしょう。真似しようって思っても、簡単に手に入るものじゃないし。その、安藤君への信仰はさ、それは本当に、生涯の財産だと思うよ。
Yさん:え、ああ…、そう…?
おでん:あと、安藤政信ファンのすべてが、彼を神にしているわけじゃないでしょ。
Yさん:そりゃそうだよ。トークショーで見たファンの人たちは、もっと普通だった。
おでん:だよね。信仰にまでなったのは、もちろん安藤君が魅力的であることもあるだろうけど、何よりYさんの才能や努力があったからこそだと思う。
Yさん:ああ…、それは才能あるかも(笑)。信心の才能が…。
おでん:いや、すごいと思うよ。
Yさん:まあ、もともとパワースポットとか好きな方だけど、どこかで疑っちゃうところもあるんだよね。どうしてもご利益を求めてしまうし…。でも、安藤君にはご利益とかないじゃん。世界平和すら願わない。もっとこう、純粋な……あ、もうこんな時間。いやこれ結構喋れるね。どんどん出てくるね。まさか安藤君でこんなに語るとは思わなかった。あはははは。


<おわり>