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詩集

158
詩、ポエム、詞のタグが付いた投稿を一つにまとめたものです。
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2020年10月の記事一覧

無題

光が強ければ強いほど
影は濃く黒くなり
光源を見ることは叶わず
光の差す方角に背を向け
足元に現れたひたすら暗いだけの影を
眼下に眺めることしか出来ない
視覚が完全に奪われることを覚悟して
光源を見つめ続けることこそが
生きることだと言われれば
私はもう生きていないのかもしれないが
日々濃く黒くなり続ける影を
視界の片隅に認めながら俯き
決して光源を直視せぬように
牛歩の如くゆっくりと歩を進めるこ

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正体

後悔している
その感覚だけが鮮明

具体例を挙げようとしても
咄嗟には出てこない

あの時ああしてれば
あの時あんなことしなければ
なんであんなこと言ったんだろう
なんで何も言えなかったんだろう
もっとやりたいようにやればよかった
もっと想いを伝えればよかった
この道を選ぶべきじゃなかった
あの道を選んでいれば

人生は常に2択で
必ずどちらかは正解で
どちらかは不正解
2択を当て続けて
正解だけ

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睡眠

睡眠という言葉や概念が
まだ存在しなかった頃
1日一回
いや
1日という単位すらない頃
ある一定の時間的間隔で
自分の意識が途切れて
夢の中へ
いや
夢という概念すらない頃

今でこそ私たちが認識している
夢と現実の境界のようなものは当然なく
夢と現実は切れ目なく地続きで
一塊の世界として存在していたのだろう

その時代において
睡眠は死であり
死は永い睡眠であり
覚醒は蘇生であり
蘇生は束の間の

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空気になりたい

私が
空気になりたい
と言った時の
フッと鼻で笑った
あなたの顔が
忘れられない

私が
砂になりたい
と言った時の
訝しげに眉間に皺を寄せた
あなたの顔が
忘れられない

私が
もう消えたい
と言った時の
まだそんなこと言ってんのか
と怒りを滲ませながら言った
あなたの顔が忘れられない

その時々には
分からなかったことも
今なら少しは分かるんだよ

あなたの
態度や
言動の
理由も
意味も

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呪詛

呪詛の言葉を吐き
もしくは書き連ね
憎き誰かを呪うたとて
呪うた後で
彼の人がどうなるかを
眼前で見届けることが出来ないなら
到底叶うことのない願いや祈りと
さして変わらぬではないか

決して許せぬ彼の人を
呪うた後で
厄災が降り注ぐのを
見届けるために
片時も忘れることなく
追いかけ想い続けるなら
慕情に取り憑かれた恋煩いと
なんら変わらぬではないか

好意も悪意も
決して届くことがないと知った

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バス停

バス停の前のベンチが濡れていた
少し前に降り出した雨のせいだろう
屋根はあるにはあるが
小さなバス停の
小さな屋根である
それほど大降りでなくても
横からの雨に
ベンチを守りきれなかったようだ

少し疲れていたから
座りたかったのに
屋根 頑張れよ

冗談 冗談
屋根があるだけ
ありがたい