歌詞短評/ケプラー/THE 2

「君に恋してる」って伝えるために、古舘佑太郎は遠回りする。

宇宙の果てまで広がって、宇宙人なのか、かぐや姫なのか分からないけれど、照れてしまうからデケー建前拵えて、でも本音は隠せないから大声で歌う。

後半、頼りにした宇宙の規模感にときめくのではなく、そこでも打ち拉がれて、自分の社会的ポジションに苦虫を噛み潰し、不甲斐なさを嘆く。でも伝えることをやめられない。「地上で」なんて言ってるが、大好きって言っちゃってるから。

宇宙と地球の距離感をギュンギュン行き来する、マクロとミクロのリズムが美しい。
少し自嘲気味になってしまうところが、泥くさくい。
でもそれは失敗や敗北のような、底の底でしか味わえないものを知っているからで(多分ね)、彼の目の奥のほうは燃えている。
だから、恥ずかしいんだけど、恥ずかしげも無く歌う、君に恋してる。最高。

2017年、渋谷の事務所で、この仕事終わんのかぁ〜?とか、自分このままでいいのかな...とか思っていた時、ラジオで何回も流れていた。
毎日流れてんなくらいにしか思わなかった。そんなに大音量でラジオがついていた訳でもないし、何て歌ってんのかよく聴き取れなかった。でも耳についた。

ある日、この歌を歌ってるヤツがラジオのスタジオに現れた。夕方だから多分グルーヴラインだ。
2(ツー、当時THEはついていない)と言う名前だから世界一検索しづらい。とかいうしょうもないギャグとケプラーを残し、ソイツは去っていった。

その後タワレコに走ったんだか、ネットで注文したんだか、YouTubeを聴きまくったんだか、いきさつはもう思い出せない。けどコイツは聴かなきゃいけないバンドだと思った瞬間があった。思ったはずだから、僕の手元にはコイツらの1stがある。名を「VIRGIN」と言う。

そこからおよそ7年、未だ聴く。だってアガるじゃんあの5秒のイントロでさ、一瞬で迷いが消えるじゃん、誰を想えば良いのか分かるじゃん。

聞いているか古舘佑太郎、歌えよ古舘佑太郎!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?