音楽よもやま話 -第5回 井上陽水- 誰も知らない夜明けが明けた時
初めて自分のギターを持とうと決意した明確なきっかけはもう思い出せない。12歳の春に、親父にせがんで買ってもらった2万円のアコースティックギターは、今では実家のクローゼットの中で眠っている。弾かれることよりも先に、その錆びついたダダリオのブロンズ弦を変えてくれと寝言を呟いている。でも、実家に帰る度、僕は弦を変えるよりも先に調子はずれのAmのコードを鳴らす。それが最初に覚えた曲のコードだからだ。少しだけアルペジオを弾いてケースにしまう。
本当はエレキギターが良かったのだけれ