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音楽よもやま話

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自分を形作ってきた大切な音楽たちをエピソードを交えたり、交えなかったりして話します。
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2019年12月の記事一覧

音楽よもやま話 -第6回 SMAP- 君は今すぐ翔び立てるのさ

 僕は今でも、時々SMAPのことを想う。空気のように常にそばにあった存在だから。  特別大ファンというわけでもなかったし、CDを借りたのだって解散騒動が起きてからだ。でも、彼らの音楽は、ずっと街のいたるところで流れていたし、テレビをつければいつでも彼らがいた。彼らの音楽っていい歌ばかりだし、カラオケで歌いやすいし、色んな人に受けがいいのだ。中居くんパートを声真似して歌ってみたり、キムタクを真似して崩しまくって歌ってみたり。  彼らが解散したあとでも、毎週月曜夜10時になるとT

音楽よもやま話 -第5回 井上陽水- 誰も知らない夜明けが明けた時

 初めて自分のギターを持とうと決意した明確なきっかけはもう思い出せない。12歳の春に、親父にせがんで買ってもらった2万円のアコースティックギターは、今では実家のクローゼットの中で眠っている。弾かれることよりも先に、その錆びついたダダリオのブロンズ弦を変えてくれと寝言を呟いている。でも、実家に帰る度、僕は弦を変えるよりも先に調子はずれのAmのコードを鳴らす。それが最初に覚えた曲のコードだからだ。少しだけアルペジオを弾いてケースにしまう。  本当はエレキギターが良かったのだけれ

音楽よもやま話 -第4回 椎名林檎- 一介の26歳男性による抽象的概念的考察

はじめに、空っぽな人間に 10代の少女が自分を指し示す言葉を見つけあぐねている時、僕はその真横でテレビに映る椎名林檎を見ていた。CDTVの歴代なんとかランキングだ。ギブソンのギターを鋭角に持ちながら彼女は「ギブス」を歌っていた。テロップに流れる、いわゆる林檎節な歌詞が刺激的だった。10代の僕にとって、少々刺激が強く、かなり暴力的でセンセーショナルな魅力で溢れていた i 罠 be wiθ U 傍に来て ごくごくイメージな話  その時の椎名林檎は、心を失いかけたかぐや姫か、声

音楽よもやま話-第3回 ニガミ17才-  ちぇっ しゃー ばさっ ごそごそ かたかた ごくっ ぱきぽきぱき きゅー

夏の切れ端、渋谷「まさかこんなところでニガミ17才の名前聞くと思わなかったわ」と彼女はハイボールに浮かぶ氷を指で回す仕草を一時中断して言った。  季節は夏の切れ端、渋谷の一角にある少し高めの居酒屋。最近よく聞く音楽は?という話題の中で僕が挙げた名前「ニガミ17才」。右端の女の子から、きょとん、きょとん、1人飛ばして、きょとん、という顔をされた。飛ばされた1人は、僕の話など飲み会開始早々からまったく興味なさげに聞くともなしに聞いていたようだった。だが、ニガミ17才の名前を聞いた

音楽よもやま話-第2回 ポルノグラフィティ-雨男と貝女と冷蔵男のトライアングル

はじめに ポルノグラフィティは人生である。と豪語しておこう。なぜそう言える?というのはおいおい、回数を重ねて語っていくとして、今回は歌詞について深堀り(というか妄想)していこう。とはいっても、歌詞の素晴らしさについて語るにしても、ダラダラと語ってしまうことになり、余裕で10万文字とかになっちゃうから、もっと絞って語ってみよう。イメソンの帝王とも呼ばれたポルノグラフィティの歌詞世界における、ある3人の恋愛模様についてだ。 ポルノ世界の定義 ポルノ世界(ちょっと表現がアレだが悪