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日記

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現在進行形で書き続けている日記をエッセイ風にのっけてます
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#毎日note

2018/9/16の日記~寄生虫、平成の夏の切れ端、September~

夏の帰省中、夏風邪を引いてしまってどこにも行けなかった。  背中から滴り、床に染みていく汗を不快に感じつつ、「最後なんだから」と期待され、揶揄され、消費されていく平成の夏の切れ端を過ごした。まったくこの国の人間は「最後」と枕詞がつけばなんでも食べちゃうのだなと達観していた。  湿気を重く纏った風はシャツの内側を泳ぐ能力もないのか、アブラゼミの鳴き声に糾弾され、夏の容赦ない日差しを前に潔く蒸発していくしかないみたいだった。やっぱり夏風はどこにも連れて行ってくれないのだなと僕の

12/2の日記~ワルサーPPK、ロケットえんぴつ、蜂球~

地上ではひどい雨が降り続いていた。都営三田線の暖房の効いた車内は人であふれかえっていて、誰もかれもが傘を自分の第三の足のようにピッタリつけていた。交戦の意思はございません、これは武器ではなく私を支える第三の足ですから、と。観光客らしい外国人が日本刀のようなデザインの傘を持っている。僕が中学生で、今が修学旅行中ならば、絶対買ってしまっていただろうな。火縄銃のようにくたびれた茶色い傘を持っている人もいれば、マシンガンみたいな精巧な黒い傘を持っている人もいる。でも、僕の持っている小

2017/5/23の日記~レディ・マドンナ、オランウータン、天照を誘う~

夜も更けて風が少し肌寒い頃、立ち寄ったラーメン屋に流れるビートルズを僕は聴いていた。ラーメンに「レディ・マドンナ」の組み合わせはいささか不自然な気がして、変わりの組み合わせを思い浮かべようと、ここ数カ月の思い出を一つ引っ張ってきては、また違う記憶を慎重に取り出し、ビートルズに託した。まるで鏡の前で服選びに迷う、10代の少女のように。少し並んでいる行列の待ち時間をつぶすためだけの、ほんの些細な試みだった。  GWの動物園。その時、手すりに寄りかかりながら僕は10メートル先のオ

11/17の日記~楠木正成像、奇妙なステップ、性選択~

竹橋駅をその身に孕んだパレスサイドビルのファミリーマートで、僕らはなるべく度数の高い缶チューハイを選ぶことにした。檸檬堂、鬼レモン。 奥行きのない幸せを見せつけられるカラオケボックスのMVを背に、モヒートやラムコークを持って歌い騒いだ後、夜の皇居東御苑を散歩したくなったのだ。そういう気持ちの良い夜には、まだもう少しアルコールが必要なのだ。  ゲーム・ショウで、太陽は、北風に敗北した。そして彼は地平線の向こう側に去った。今、街には夜のカーテンが平等に垂れている。土曜日だとい