見出し画像

X350という可能性

 ハーレーダビッドソンは2024年モデルとして新たにXシリーズというカテゴリーを追加した。そのXシリーズとはX350とX500という小排気量モデルから構成され、エンジンは水冷式並列2気筒、トランスミッションはエンジンと一体型、シャシは41mm倒立フロントフォークにリアはモノショック。ホイールサイズは前後共に17インチと、いわゆる国産車ライクな仕様となっておりハーレーダビッドソンの他のラインナップとは一線を画すシリーズとなっている。

 読者の方々にはこのXシリーズはどう映るのだろうか?マーケティングとして率直な意見が聞いてみたいところだが、私は一眼見た時にカッコいいと思った。そして同時に秘める高い可能性を感じ”売れる”という予感がしてたまらなかった。実際近所のディーラーのセールス曰くそれ目当ての来客は多く、既に売れているとのことだ。やはり魅力は価格とX350に関しては中型免許で乗れるということだろう。

 私はこれらのファクターに可能性を感じているのだが具体的に分解して述べると、現在日本のバイクシーンでは400cc以下のとりわけ250ccあたりのバイクの人気が高く価格帯もXシリーズのそれと同様である。そういった現状に合わせるかの様なハーレーのニューリリースは言うまでもなくマーケティング戦略である。そしてそのターゲットはいわゆるハーレーダビッドソンというステレオタイプを持っていない若者だ。ハーレーのこの思惑はこれまでも何度となく見受けられてきた。ビューエルやV-RODなどがそれだ。しかしどれも十分な結果を得てはいないだろう。では今回もまたそうなるのか?私は今回の試みはいつもと熱量が違う様に感じられている。いわばマーケティングの本気度が違うようだ。

 数多あるファクターの中でOEM生産が一つの肝ではなかろうか。それが成り立たせる低価格帯の実現によって競合他社と同じ土俵に立てるということと、これまでアレルギーの多かったハーレーの水冷エンジンだが、このOEM水冷エンジンはハーレー=OHVのV型エンジンというステレオタイプのないZ世代にスッと入り込め、既存のターゲットをうまく除外し新規ターゲットを獲得するのに好都合だということではないだろうか。

 確実にターゲットは新規層だ。Xシリーズには様々なキーワードがあるが全てが1箇所に帰結しているように感じられるためその本気度が伺えるのであろう。さすがのデザイン力が魅せるエクステリアは、かのXR750がソースなのだがXR750はフラットトラックレーサーであり、現在関東をはじめ全国的に人気が高まっているのがフラットトラックレース(ダートトラックレース)なのである。これは単なる偶然ではないはずだ。

 そして魅せ方、売り方のマーケティングに関して、この手法はBMWがはしりだと思うが、メイカーが国内や世界において著名なカスタムビルダーにカスタムを依頼しそのモデルの魅力を増大させるという戦略をXシリーズもしっかりトレースしている。

Xシリーズカタログより
Xシリーズカタログより

 もちろんここでの著名性は新規層には無縁だが、やはりトップオブトップが生み出すアーティスティックなそれは誰しもを魅了するだろう。そしてさらにアパレルの側面からもアプローチすることでよりZ世代にうけるマーケティングが完成する。

Xシリーズカタログより

 これは抜かりないなと思うが、そもそもハーレーダビッドソンはバイクだけを提供するのではなく、ライフスタイルを提供するメイカーである。しかがってこのアパレルからのアプローチはハーレーの十八番である。

 この様に戦略の詰まった今後のXシリーズの動向が非常に楽しみで目が離せない。そんな私は近所のディーラーにて今週末から試乗が可能になるX350を近々乗りに行く予定なので、そのインプレッションを書こうと思う。

ODA SYCLE
小田

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?