見出し画像

タイ最凶ファイターのコントゥアラーイ、ラジャの初メインでベストファイト~2024年1月6日のRWS

タイ最凶ファイターとして、このブログで何度か取り上げたコントゥアラーイ・JMボクシングジムは、1月6日のRWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)の2024年の初イベントのメインに出場し、イランのファハド・サーカスジムを相手に2度のダウンを奪うなど、終始有利な試合運びを見せ、判定勝ちを収めた。

判定の瞬間、明暗が分かれる2人

190ポンドのクルーザー級で行われた、3分3ラウンドのこの試合は、170センチのコントゥアラーイに対してファハドは187センチで、同じ体重ながら身長、体格(骨格)が全く異なる二人の闘いとなった。

頭まで全身入れ墨のコントゥアラーイとファラド

ラジャダムヌンスタジアムの大舞台ということで気合が入ったのか、コントゥアラーイは、ここ1-2年ではもっとも身体が締まっている印象を受けた。今回、2度のダウンはいずれも左ヒジでのダウンだったが、スピード、回転力があり、新境地を切り開いたかに思える。

改めてコントゥアラーイについて紹介すると、彼は殺人などの罪で刑務所に収監されていた元囚人ファイター。タイの刑務所内対抗戦などで、好成績を収めてタイ全刑務所チャンピオンに何度も輝いたことがある。刑務所内での成績から、ボクシングの大手プロモーター、ナリス・シンワンチャーの目に留まり、刑務所から試合会場へ向かう、囚人プロボクサーとしてデビューした。

プロボクシングではウェルター級でABF(アジアボクシング連盟)チャンピンとして防衛を重ねて、恩赦もあって、30年とも、無期とも言われていた刑期は短縮されて、13年で刑務所から出所した。以後、ボクシングと並行してムエタイ、キックボクシング、ベアナックルファイトのリングに上がり続け、自身のジム「JMボクシングジム」も主催している。

自身のジム、JMボクシングジムでのコントゥアラーイ。2022年のインタビュー時に撮影。

コントゥアラーイは、今回のRWSのプロフィールでは、38歳とされていたが「実は彼は既に45歳である」と、テレビ実況では視聴者に伝えていた。

著者は2年前にはコントゥアラーイに直接インタビューを行ったが、その際に「40歳を超えて練習の疲れが残るようになった。練習量もセーブしないと」と語っていたのが印象的だった。

↓ ↓ 著者のコントゥアラーイのインタビュー、前後編あり。これまでのコントゥアラーイの道程を紹介している。

そんなコントゥアラーイ、昨年は初の日本上陸を果たし、4月に実方宏介戦でのIMSAヘビー級王座決定戦のKO勝利後に、6月にRISEにも参戦、フェルナンド・アルメイダ(ブラジル)に勝利し、8月のRISEライトヘビー級王座決定戦と繋げた。

その決定戦の南原健太戦ではダウン応酬の激戦の後にKO負け。また、その後に出場した10月のベアナックルファイト、BKFC THAILAND 5でも、良い試合を魅せながらも最終的にKO負けと連敗となった。そんな中でも、彼のカリスマ性、日本での連戦(2勝1敗)のインパクト、これまでの実績にRWS側はコントゥアラーイのメイン活用を決定した。

BKFC THAILAND 5では、カナダのMMA選手、ジョニー・テロと対戦、4ラウンドにダウンを奪うも、5ラウンドに逆転KO負け。この日のメインはブアカーオ対センチャーイ。

対戦相手のイランのファラドは、コントゥアラーイと比べるとまだ26歳で、15勝2敗と戦績は少ないものの、勝率も高く、まずまずの選手のようだ。一方のコントゥアラーイは60勝20敗3分と紹介されていた。

この日、今年初めのRWSは客の入りも上々、セミファイナルではRWS期待のスーパーバンタム級、ペッシラー・ウォー・ウラチャーがスペイン選手を相手に、見事な試合を魅せて判定勝ちを飾り、観客の喝さいを浴びた。

ペッシラーは19歳ながら、強豪との対戦経験も多い。過去にスーパーフライ級現ラジャ王者のプレオプラーオや、パントー、奥脇竜哉の元ラジャ王者にも勝利した経験がある。

そしてメインのコントゥアラーイ対ファラド、コントゥアラーイは初回から、積極的な攻撃を見せて、左ミドルキックから、左ヒジをファラドの顎に決めてダウンを奪い、終了間際も左フックでファラドの腰を落とさせる(ノーカウント)

2ラウンド中盤もコントゥアラーイの右フックがファラドの顔面をとらえると、一瞬、ファラドの腰が落ちる。ファラドも近距離では首相撲を仕掛けて、長い距離ではキックやストレートを放つも精度が悪く、コントゥアラーイの勢いをなかなか止められない。焦るファラドは3ラウンドに放ったヒザがコントゥアラーイの金的に命中、試合は2度に渡って中断した。

初回、コントゥアラーイが左ヒジでダウンを奪う
突破口を見付けたいファラドだが、、。

休憩時間が与えられたコントゥアラーイだが、ダメージを引きずり、ファラドはチャンスとばかりに勢いづいて、攻め込んでいく。コントゥアラーイは冷静に、ファラドの顎にカウンターで左ヒジを決めると、尻もちをついて再度ダウン。ダメを押した。判定は、ジャッジ3者とも30-25の5ポイント差でコントゥアラーイを支持した。RWS初戦で存分にパフォーマンスを見せつけた。

ラッパーと一緒に入場のコントゥアラーイ

試合前のRWSのインタビューでは「私のようなファイターがムエタイ最高峰のリングに上がることが出来るなんて信じられません」「私のようなもの(罪を犯して償ったもの、更生者)への励みになればいい」と語っていたコントゥアラーイ、この日の試合は、数年の試合の中でも最も出来が良かったように感じられた。RWSのメインという大舞台で、大柄な選手を相手に自分の持ち味を存分に活かしたと言える。この日の試合は、コントゥアラーイのベストファイトのひとつにあげられるだろう。

そして、RWSは2024年は、まず、2月11日に東京の後楽園ホールでの興行が控えている。後楽園ホール、そしてタイの地方大会も実施していく方針で、ラジャダムヌンスタジアム以外でのイベントも積極的に行い、”RWS”を拡大、発展させていく。

2月の後楽園ホール大会では、現役のラジャ暫定王者、吉成名高の出場も見込まれるが、正規王者プレオプラーオとの統一戦はここで組まれるかはまだ未定。激闘王のプレオプラーオは12月27日のラジャ78周年興行に出場し、ノンタイトル戦ながら、ディンヌアトーンに3回KO負けしてしまった。10月のラジャ王者防衛戦でもディンヌアトーンと顔を合わせたプレオプラ―オ、初回ダウンを奪われてからの逆転勝利だったので、ダメージも残っているか。万全のコンディションで名高戦に挑んでほしいところ。または、ディンヌアトーンが名高と対戦しても面白い。

※1月6日の試合はRWSサイトでの観戦、写真はRWSとYoutubeより。photo from RWS (youtube, instagram, facebook ) and BKFC Thailand (Youtube)

10月のラジャ王座戦、プレオプラーオ対ディンヌアトーン戦は、プレオプラーオが勝利したが、12月のノンタイトル戦はディンヌアトーンがKO勝ち


 ↓ ↓ コントゥアラーイ対ファラドの動画(2024年1月6日)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?