見出し画像

ことわざを学んで何の意味があるのか?

子供の素朴な疑問にマジレスを試みるシリーズ。子供が「秋ナスは嫁に食わすな!」と音読しているのを聞きながら、妻と「これなんのために学んでるんだっけ?」と話していた。秋ナスの教訓が人生に示唆を与えるかは知らんけど、もう少し大きく「ことわざを学ぶ意義」を考えてみた。

ことわざは秘伝のエッセンス

ことわざは、過去の人たちが経験から得たコツを抽出して、いろんなことに展開できるように言葉に落とし込んだ秘伝のエッセンスだと言える。普段から頭に入れておいて、似たような状況で引き出す訓練をしておけば、人生の局面を上手く乗り越えられる。...というのが私なりの回答になる。

ことわざは当たり前の教訓を言っているようで、けっこう絶妙のバランスで成立している。物凄い天才肌の軍師が「良い感じにできるコツ」を持っていたとしても、無意識に実践するコツだと他の人に説明ができない。ことわざになるには、言葉に落とし込むハードルを越えねばならない

それに、「過去の人の経験が自分の人生に活かせる」のも簡単ではない。過去の軍師がいかに凄腕でも、今日の会社員が敵将を討ち取る状況なんて無いので転用がきかない。ことわざになるには、転用がきくコツを適切に抽象化し、端的に表現されなければならない

使う側にも創意工夫が求められる

すぐに使える応用知識には、応用先が変わるとすぐ使えなくなる宿命がある。一方で、何にでも幅広く使える基礎知識は、使う時に抽象度の壁を越えなければならない宿命がある。ことわざは後者の抽象度の高い基礎知識だと言える。

ことわざとして復唱されるのは呼び名にしか過ぎず、その背後にはどんな文脈においてどんな問題があるから、どう解決するべきかが隠されている。例えば「急がば回れ」であれば、締め切りが差し迫っている状況で、確実な選択を選んでいると間に合わない問題があり、でも近道を選ぶと余計に時間がかかるので、解決として「回れ」という選択肢を選ぶ。みたいな。

このような背景までセットで頭の中にいれておくことで、目の前の具象に適したことわざが引き出せる。覚えて引き出して使う訓練をすることで、ことわざが人生の局面で生きた知識として活躍する。

ことわざをパターンランゲージと見立てた

上記の文章を書くにあたって、私は「ことわざ」の意義は「パターンランゲージ」と共通しそうだと類推して、以下の記事を噛み砕いて文章に落とし込んだに過ぎない。
https://creativeshift.co.jp/pattern-lang/

知の記述方法である「パターンランゲージ」を説明なく引き合いに出したけれど、説明について上の記事で完璧に書かれている。ただ、この記事の最初の節「ことわざは秘伝のエッセンス」は「パターンランゲージは秘伝のエッセンス」に読み替えても成立するので、説明と言えば説明になっている。

過去にパターンランゲージをつくるワークショップ的なものに参加した際に、パターンとして「虎穴に入らずんば虎児を得ず」を導いたことがある。「当たり前の結論に帰着させてしまった」と反省したのだけど、「車輪の再発名」だとしても人類の英知をなぞる経験ができたのは凄いことじゃないかとも思う。次にリスクを取らねばならない状況に身を置いた時、強く意識するだろう。

オリジナルの創作ことわざがあってもいいかも

自分の素晴らしい経験を後世に残したいという人は、オリジナルの創作ことわざを作ってもよさそうに思う。私は「技術革新は軍事で生まれエロで普及する」を推したいけれど、抽象度も端的さも不完全な気がする。

もっと上手くことわざを創りたい際には、パターンランゲージを生み出す方法論が役立つだろう。そして、パターンランゲージ界の第一人者でおられる井庭先生がこのnote上におられたことや、直近で呼んだ本はnote本だったことを、この記事を書き始めてから知った。

画像1


「文章でメシを食う」の道を開くため、サポートいただけると励みになります。それを元手にメシを食ってメシレポします。