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ガガーリンガール

高校2年生ぐらいの時から、あまりにもきれいな空を見ると反射的に涙が出るようになった。

強すぎる感受性、脆々やわやわメンタル。

6月に、東京駅近くのビル最上階にあるフレンチで、出版のお祝いをしてもらったのだが、そこがすごくいい場所で。
駅周辺のビルを覆う空が、日が沈む前の皇居周辺の街を包み込む光が、きれいで優しくて、温かかった。空に1番近いところでこれからご飯を食べるのかと思うと、その行為でさえも尊いと思えて泣いてしまった。泣きたいとも思っていないときにいつも涙が出る。感受性が発動してほしいとも思わない時に発動する。

話はググッと方向を変えるが
福岡で大学生しながら趣味で絵を描くのが好きなTuna.(ツナ)ちゃんと旅に出た。
旅館に閉じこもって本を読み続け、ひたすらインプットしまくるという「インプット奴隷合宿」(ゆる言語学ラジオ)の動画をみて、うちらもやってみたいね、という話になり、1泊2日、武雄温泉の旅館に閉じこもった。合宿みたいな、旅みたいな。

1日目は大雨で最高の引きこもり日和だったので、ひたすら本を読んで、夜はお酒を飲んで寝た。私は宇宙の解説本とか小説とか漫画を読み、ツナちゃんは、小説をたくさん読んでた。
兵庫出身のツナちゃんが話す関西弁が心地良くて、新鮮で、インプットに疲れたらツナちゃんと話した。博多弁の私は、よく関西弁につられそうになる。

途中の買い出しで雨に濡れまくったせいか、疲れがどっときて、せっかくのお泊まりなのに夜更かしもせず、充電0%で再起動を待つスマホのように爆睡をかましてた。

翌朝、目を覚まして横を見ると、ツナちゃんは本を読んでた。
インプットし続けるなあ、ツナちゃん偉いなあと思いながら本を読むツナちゃんを横目に寝た。(寝たんだ)

昨日の夜寝る前に童謡の「にじ」を、アイナ・ジ・エンドがカバーする動画をみたおかげで2日目はいい天気だった。

2度寝から覚めて、ギリギリでホテルのチェックアウトを済ませ、武雄町温泉街周辺をお散歩した。
本当に「きっと明日はいい天気」(「にじ」の歌詞)になった。
少しお散歩して、ひと休みしようと、喫茶店に入ってカレーを食べた。食べ終わった頃に、喫茶店のおばあちゃんが私たちの席に来て、話しかけてくれた。よっぽど暇だったのだろう。
「どこから来たの?」

(私)福岡です

「福岡は今外国人いっぱいよねえ。武雄もだけど。」

(私)福岡の街歩くと、ここ、アジアかな?って思います 

おばあちゃんは、地元の話よりも福岡の話をしてくれた。

「昨日は雨だったけど今日は晴れたねえ。こっちはビルいっぱいじゃないから、よく景色が見えるでしょう」
おばあちゃんの話に、

(ツナちゃん)
ですねえ、『空って広かったなあ』みたいな(笑)


急にツナちゃんの口から出た言葉。なんだろう、ツナちゃんの言葉が刺さって抜けない。

広いんだなあ、じゃなくて、広かったんだなあと口にしたツナちゃんが。
広いんだなあ、で表現するには言葉が足りなさそうなツナちゃんが。


「ツナちゃんが、さっき『空って広かったなあ』って言ったのすごくいいなって思った。私だったら『空広いなあ』って言ってたとおもう」

「ただ福岡から来てるだけやったら、「広いなあ」かもしれんけど、地元(兵庫)に帰省して神戸にふらっと行ったときに、空が広いことに気づいたんよね」

ツナちゃんが20歳のとき。神戸のミュージアムロードの空の広さに彼女は初めて気がついた。
そして今年、再度地元に帰省した時に、20歳で感じた空の広さを神戸で思い出し、同時に福岡の空の狭さも感じたそう。
神戸で気づいた空の広さを、今回の武雄の晴れた空でも同じようにツナちゃんは思い出したらしい。

私は生まれてから20年ずっと福岡にいるけど空が広いなんて思ったこともなければ、知ることもなかった。天神とか博多とかべらぼうに高いビルがあるわけではないけど、福岡の空を広いとは思わなかった。

ツナちゃんは空の広さを知ってる人なんだろう。

「地球は青かった」という当たり前構文的なガガーリンの名言がどうして名言と言われるのか、ずっと不思議だったけど、なんか分かった気がする。

もしかして、あの東京の最上階のフレンチで働いてる人も、空の広さを知った人なんだろうか。

空がきれいだと泣いてしまうのは、空の広さ、きれいさを私は知らなすぎるから。美しさに感動するより先に、びっくりして泣いてしまうんだろう。知らない人に抱っこされて泣いてしまう人見知りな赤ちゃんみたいに。
佐賀の田舎の人も、東京の最上階のフレンチで働く人もそこに泣かないで座ってられるお客さんも空の広さを知ってるんだろう。

ガガーリンガールなツナちゃんの表現がただただ素敵だった。

喫茶店の薬膳カレー(バナナ黒糖ペースト付き)


あまりにもきれいすぎた空



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