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台所短歌

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2021年6月の記事一覧

文月を待ち侘ぶ空は浅葱鼠色の残せぬ雫となるや

苧環
2年前
22

離(か)れゆくと涙の川に浸れども水面に映る影もまだ見ず

苧環
2年前
20

踊るよに細紙の上で跳ね回る願いも持たずもはや幾年

苧環
2年前
21

爪を切り眉整えて頬2つぱぱんと叩き夏をいきいく

苧環
2年前
28

オンボロで埃まみれのこの身では所詮スペアになれぬけれども

薄くなりゆくほど増すと人言うを聞いた気がする他所ごととして

はかるにもはかれぬもののあることを今になり知る 愛しさという

苧環
2年前
23

黄昏に置いてゆかれた気になるは徐々に温もり冷めてゆくせい

苧環
2年前
18

ふれられることなきままに這い延びるへくそかずらの夏の自由度

わくわくが無くても苦なく着地する再放送を望む曇天

苧環
2年前
16

寄り掛かる先を探しているうちは何にもなれぬと語る朝顔

苧環
2年前
20

ころころと転がりゆけるオレンジはぽちゃんと鳴いて夕陽になって

苧環
2年前
22

当てはまるピースを探す旅ばかり続けていては何も変わらぬ

擦り傷も切り傷さえも自らで癒す術持つ身ではないかと

振り返る後ろの道の有様はただ目に映るものだけすべて

アクセルの在処も知らぬ我なれば振り切ることも出来ず佇む

苧環
2年前
22

捨て果てたつもりはつもりただつもりつもり積もってただつもりゆく

苧環
2年前
25

水無月の名の成り立ちを思いつつ文書く宛てもなきままに尽

苧環
2年前
24

同じ名で呼びあうヒトを流し見て置いてきぼりのこどもの気分