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台所短歌

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2020年9月の記事一覧

姿なき風を愛でるやささくれのひとつも持たぬ指先に秋

苧環
4年前
8

満月に少し足りないお月さんあの日なくした爪に似ている

苧環
4年前
9

その背なが視野をさらりと横切るを夢に見ていた夢だと思った

苧環
4年前
7

病葉を落とさば良しと思ふらむ言霊の持つ連鎖も忘れ

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放出して、そこから負の連鎖を呼び起こすような救いのない歌は嫌。想像の余地を残したい。難しいけど。言霊はこわい。吐き出せば良いのか…と自問。

苧環
4年前
6

濡れ髪をほぐして撫でる指先に奪われてゆく秋の夜の熱

苧環
4年前
7

とうせんぼされたわけでもあるまいに迂回ばかりで「遠く」は遠い

苧環
4年前
7

この熱を伝ふる術すら持たぬまま息も忘るる朝の来るかや

まち針でついてぷちんと消えてくれちっぽけすぎるプライドなんか

苧環
4年前
8

疲れし君

甘噛みをするよに唇結びつつ欠伸堪えて頬杖をつき

乱れてもいない前髪すと撫でるその空気ごと飲み干せたなら

苧環
4年前
10

梳る髪ののたうつ肩に背に 我まま気ままをうつす手鏡

苧環
4年前
8

生活(いとなみ)を難なく過ぐす難とは?と背中に問ふてみるにも飽きて

苧環
4年前
8

開きゆく蕾枯れゆく樹もそれぞれの先を生くるとわかりはすれど

苧環
4年前
4

幸せの満ち溢れたる文字列を井戸の底から眺むる日々に

隠るるや日向に影はつきものと今更ながらの視力疑ひ

秋風に砂のお城は崩れゆく今さらさらの音さへもなく

苧環
4年前
6

夕涼み薄暮の中に消えてゆく宛てを思えど影も見えない