読書メモ 村上龍「五分後の世界」
感想
はじめて、五分後の世界を読みました。何回も読み返したくなる小説に出会えたという気持ちになるのは、初めての体験だった。
初めの一行を読んだ瞬間から、何が起きているのか全く分からない世界に自分がぶん投げられた感覚になる。五分後の世界とは何、この世界を構成している言葉、人々の考え方、すべてわからない。読み始めた自分の心情と主人公の心情が重なりながら読み進み、少しずつ五分後の世界という題名の意味を知っていく内容になっている。
正直内容は、何をどう言えばいいか、一回読むだけでは言語化できないが、「いきのびること」ということの大切さ、覚悟の重みというものを知り、俺はこれからもこの世界で生きていくぞという断固たる決意をすることができた。そして、五分後の世界と現実世界とのこっちとあっちの世界の違い、これは、日本人のもともと持っていた気高さ、誇りを思い出させてくれ、今の日本人へ村上龍さんの嘆き、自分へのお叱りのように感じた。自分は、この村上龍さんの小説などに登場する「人」というものが、かっこいいと思い、自分もなにか行動を起こしたくなる何かを心の底から沸いてくる。昨今の政治・経済問題による不安や、学歴により右肩上がりに自分の人生うまくなるという盲目的心の支えなどにより、自分で何も考えず、何をしても無駄だというあきらめていた自分の心を現実というもので一刀両断された。しかし、そんな中でも笑い続け、現実を知り、それでも立ち向かう勇気をくれるそんな作品だった。もう一回頭から読みなおして、主人公目線から俯瞰の目で見てみたいと思った。
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