見出し画像

再販リノベの考え方

昨年、再販のための団地リノベーションの計画に関わらせていただきました。
敷地は京王/小田急多摩センター駅近くの団地の一室です。
現在販売中のため、不動産サイトの販売情報を共有させていただきます。

少しでも興味をお持ちの方がいらっしゃれば、私でも売主さん(直接販売していらっしゃいます)宛でもお気軽にご連絡ください。

ここからはリノベーションに至った経緯や、一見何もないように見える住戸空間の意図を設計者目線でご説明させていただこうと思います。

■敷地について

駅への道すがら見える景色
住戸のバルコニーからの景色

商業施設が建ち並ぶにぎやかな駅前空間からゆっくり歩いて敷地へ向かうと、街の景色が緑の質とともにグラデーションを帯びて豊かに変化していくようです。
ペデストリアンデッキを活用して駅から平坦に歩けるようになっているニュータウン独特の雰囲気の中で、街とともに育ってきた街路樹や公園の緑がとても心地よく感じられます。
利便性の高い土地でありながら、周辺を成熟した緑に囲われて暮らせるという団地特有の環境(しかも自身で管理しなくてもいい!)は、都心の新築マンションや戸建てではなかなか手に入れることができない恵まれた環境だと思います。

■住戸について

あえてがらんどうに作ってある住戸空間
北側は安定した採光を受けつつ、落ち着いた緑に囲われている

よく見かけるマンションや団地の再販物件はどうにも作り込みすぎていて、住まい手が考える余地がないなぁと思うことが多くありました。どんな住まい手がここで暮らすのかを想像して作り込むことは、よほどターゲットを絞って計画しない限りはとても難しいことだと思います。
とはいえスケルトンのまま販売することもまた、多くの住まい手にとってはその後の暮らし方の想像が全くできなかったり、売主側にとっては利益だけとれればよいといったような無責任さも感じてしまい、それもまた少し違うように感じていました。
今回の売主さんとはそのような感覚を共有しながら打ち合わせを重ね、一つの答えとして、住まい方を考える余地を残して最低限作っておく、というテーマで今回のリノベーションを完成させました。
プランについてはできるだけ将来的な自由度を上げるために最低限の収納(これも必ずしも収納としてつかわなくてもよい)だけを壁際に寄せて計画、あとは玄関廻りに収納のボリュームと自由に使えるカウンターを造作してあるだけ。
仕上げについても住まい手それぞれのカラーがしっかり反映されるように極力クセのないシンプルな素材でまとめています。何かを模したようなフェイクのプリント素材(メーカーの既製品に多い)などを使ってしまうと、後から入ってくる家具や仕上げとミスマッチになってしまう可能性があるので、造作収納類はベニヤや集成材ではありつつ本物の木材を使用してもらっています。

玄関廻りは収納力や動線を考慮し、機能性をもたせつつコンパクトにまとめた

このまま販売するだけではそれこそ住まい手に具体的なイメージを持ってもらえないので、販売情報の中に現状のがらんどう空間をベースに少しだけ手を加えることで完成する参考のプランとそのイメージパースをいくつかのせてもらっています。
間仕切り壁を1~2枚ほど作る程度の簡単な工事を行う(工事でなく、持込みの家具をおくだけでも)ことで空間の使い方を大きく変えることができる、そこがこの物件の大きな魅力になっていると思います。

再販リノベは売主買主の相互の利益がもちろん大切なことですが、その前提でこのぐらいのゆるい(?)リノベーションの感覚が、もう少し一般に浸透していくとよいなぁと感じています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?