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あの血と死体の臭いは、一生頭から消えることはない

彼らは、私にとって第二の家とも言える、基地を奪った。

そこは、完全に墓地へと化した。

最も安全な場所から最悪の悪夢へと。

午前6時、指令室から、今まで聞いたことのないような爆発音で目を覚ました。勤務にあたっていた兵士たちは、基地があらゆる方面からテロリストに侵入されていると叫び始めた。
基地監視塔で勤務する監視員が、夢にも見たことない悪夢が実際に起こったのだ。
テロリストが基地に潜んでいるからには、私は全員を指令室に呼ばなければならない。

不安を抱えつつ、全員を呼び寄せた。
指令室の入り口の方へ向かうと同時に、100メートル先にロケット弾が着弾して煙を上げていた。
突然の狙撃だ。監視カメラはもはや機能しない。
これで、おしまいか。テロリストが正門を陣取っているのが見えた。

副大隊司令官の奥さんと生後8ヶ月の娘さんと一緒に、私たちはコンピューターの後ろに隠れ、どの海軍戦闘兵もこれまでに聞いたこともないような爆発音を聞きながら、赤ん坊が怖がらないように、何事もないふりをしなければならなかった。
数分後、正門前におよそ200人のテロリストが現れ、友人たちへの銃殺がそこから始まった。

心の中では、これが私の最後になるかもしれないと思っていた。トイレには行けず、そのまました。みんな泣きながら、シェマ・イスラエル(ユダヤ教の祈り)を祈り、生きて帰れたら安息日を必ず守ると誓った。赤ん坊は泣き叫び続けた。

時間が過ぎていく。
指令室に辿り着かず殺されたと思っていた友人アディから、突然連絡が入った。この12時間もの間、彼女がどんな経験したのか、想像もつかないし、想像するにもおぞましいけど、彼女は621部隊(エゴズ)に無事救護されたのだった。

指令室を守るために、兵士たちが次々と指令室に戻って来た。負傷した兵士が一人、また一人と、負傷がかなり酷い兵士もいて、その場で息を引き取っていく者たちもいた。損傷が酷すぎて、誰が誰だかも見極められない。

残り少ない水を負傷兵たちに少しずつ飲ませた。しばらくして停電になった。とてつもなく暑くなり、床は血だらけで、見たこともないような殺人現場、血や汗のにおいが充満し、気を失いそうな兵士たちが、眠ってしまわないように努めた。寝たらそのまま逝ってしまうから。

突然、血まみれの親友が入ってきて、『みんな死んだ』と叫んで私に泣き崩れてきた。私は、指令室にいるみんなが、出来るだけ冷静を保つため、彼を落ち着かせようとした。
私はできる限り、兵士たちに止血帯を巻いていた。するとまた、別の負傷した友人が入ってきて、全員、死んだと、そして70発の手榴弾が投げつけられ、耳が聞こえなくなったと叫んだ。奇跡的に彼はここに辿り着いたのだ。

私たちは小さな指令室で防御を固めたが、徐々に戦える兵士の数は減り、中隊全体で7人が生き残り、残りは戦死した。

午後10時。
指令室はまったくの闇の中。
テロリストは指令室の屋上にRPGを設置している。どうにか助かるようにと切に祈った。あと数分以内に救出されなければ、みんな死んでしまう。私たちは机の下に隠れ、シェマ・イスラエルと祈りながら泣いていた。死が近づいていることを分かっていたから。血のにおい、焼けた爆弾のにおい、汗のにおい、これらの匂いは一生私の記憶から消えることはないだろう。その瞬間、私は、命さえあれば、他に何もいらない、何かあるとすれば、それはすべて恵みだと思った。

突然、親友が怪我もなく入って来た、どれほどの安堵で満たされたか。
夜の11時、621部隊が到着した。11時5分、部隊の半数が迫撃砲の爆撃を受けて壊滅した。今までに聞いたことのないほどの爆音だった。
司令官が入ってきて私たちを落ち着かせ、生きて帰すと宣言してくれた。
11時34分、私たちは2列に並んで、できるだけ静かにし、テロリストに見つからないようにひたすら神に祈った。指令室を出て、歩いたあの7分ほど、時間を長く感じたことはない。基地の中は友人たちの遺体で埋め尽くされ、シナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)は焼き払われ、基地全体が完全に破壊されていた。生きて帰れるようただただ祈った。

私が経験したことをみなさんと分かち合うことで、あの残虐なテロリストたちが私たちにしたことを世界中が知ることが出来ますように。

第51ゴラニ大隊へ、あなたたちが私の命を救ってくれた。一生、感謝し、この命ある限り、毎日あなたたちに敬礼します。真の英雄です。そして、戦いを生き延びることができなかった戦友たちへ、あなたたちが息を引き取るまで、最後まで戦ったこと、私は心からわかっています。あなたたちに、深く敬意を表します。
指令室にいた友人たちへ-あなたたちなしでは生き残れなかった。
あなたたちのためにも祈り続けます。

アリエラ R.


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