テロリストたちがバイクに乗って人々を虐殺した
NOVA音楽祭に着いたとき、私たちはすごく盛り上がって飲みすぎていた。だから、少し酔いを醒ましたくて、すぐにテントに寝に行った。
朝6時頃、友人のノアムに起こされた。「アルマ、起きて!頭の上をロケット弾が飛んでいる!」。
テントを出ると、アイアンドームが迎撃したロケットの軌跡が空いっぱいに広がり、爆発音が聞こえた。私の周りでは、誰もが荷物をまとめて逃げる準備をしていた。音楽祭のスタッフたちが「パーティーは終わりです!その場をすぐに離れるように」とアナウンスした。ノアム、エイナヴ、ガル、メイと私は1台の車に、そしてアミット、ガル、アナトはもう1台の車に乗り込んだ。荷物は全て会場に置いたままだった。
この時点では、私はまだロケット弾だけのことと信じていたし、荷物をまとめる時間はまだあったのに、と友人たちと言い争ったりしていた。昨年からガザとの国境地域に住んでいる私としては、怖くはなかった。
車に乗り込み逃げようとすると、駐車場の出口で渋滞に巻き込まれ、周囲は大混乱だった。ノアムは怯え始め、車を置いて走って逃げるべきかみんなで話し合ったが、私は彼女を落ち着かせ、大丈夫だよと励ました。
突然、周りにいた人たちが、「車が撃たれた!怪我人もいる!」と叫びだした。弾痕のある車が見えたし、気づくと周りで銃声がしていた。すぐそばに負傷者らしき人は見えなかったし、私たちを取り囲んでいたテロリストも姿が見えなかった。しかし、実際にはテロリストたちは左からも右からも私たちを取り囲んでいた。車ではもう逃げられなかった。
私たちはエンジンをかけたままの車から飛び降り、東へ走って逃げた。周りには警察官が数人いたが、怪我をしていたし、避難誘導をすることもできず、その場は大混乱だった。
テロリストたちが音楽祭の会場側から銃撃してくる間に、私はエイナヴ、ガル、ノアム、メイと共に畑のほうへ走り、道を離れた。エイナヴがパニック発作を起こし先に走って行ってしまったので、彼女を見失い、さらに他の仲間を見失った。後ろから銃声が聞こえる中、一人で走り続けた。私はまだ戦闘状態にあるこの状況を飲み込めないでいた。
突然、前方から銃声が聞こえ始め、その銃声はどんどん近づいてきた。「テロリストが二人来る!撃たれるぞ!」と誰かが叫んだ。私は方向を変え、南に向かって走り出した。
人々が四方八方に走り、銃弾が飛び交う中、私は後ろを振り向かず、ただひたすら前を見て走った。道路に出たので、放置されていた車の陰に隠れた。一緒に隠れた人たちは、知らない人ばかり。その内の一人が、エンジンがかかっていることに気づいて、みんな一斉に中に乗り込んだ。私は、まだ外にいたが、運転席に座ったアビと言う人は、もうこれ以上人が乗る場所がないにもかかわらず、私に「乗れ!」と叫び、私は彼の膝の上に飛び乗った。
アビは狂ったように運転した。飛び交う銃弾の中を走り抜け、頭上にはロケット弾、またみんながパニックになっている中、なんとか対処しようとしていた。
バイクに乗ったテロリストたちが逃げ惑う人たちを虐殺しているのが見えた。警察はもはやいない中、私たちはどの方角が安全なのかわからないままただ走り続けた。
途中、道端にひとりで立っていた陸軍将校(最初はテロリストかと思った)の横を通り、彼はネティボットへの行き方を教えてくれた。畑を横切ったり近道を通ったりしてネティボットに着くと、バルコニーにいた人たちが私たちを見つけて招き入れてくれた。
最初は正統派ユダヤ教徒の家族の家にいた。その後、私たちはオフラの家に行った。オフラは私たちをまるで自分の子供のように世話してくれた。バルコニーから見下ろすと、逃れてきたばかりの畑からは炎が燃え上がり、銃声が聞こえた。
チェン、アビ、そして私はセーフルームに案内してもらい、そこでアビの母親の友人がテルアビブまで車で迎えにきてくれるのを夕方まで待った。テルアビブまで戻る間も、サイレンが鳴り響き、ロケット弾が頭上を飛んでいた。それでもなんとか無事にテルアビブに着くことができた。
アミット、ガル、アナト、ノアム、メイ、エイナヴ、エイテル、ガルは、パティシュ(ガザ地区周辺の村のひとつ)から救出された。
神に感謝しよう。美しい9人の友人たちと音楽祭へ出発し、9人全員が無事に戻ってこれたのだ。「車に乗れ!」と叫んでくれたアビに感謝する。私がここにいることを神に感謝する。脱出のために手を差し伸べてくれた親切な人達にも賛辞を送り続けたい。
アルマ・C
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