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パズル20(2次小説:類つく)

このお話は花より男子の2次小説(類つく)です。作者様・出版社様とは関わりがありません。妄想の世界へようこそ…

〜司〜

沖縄最後の夜、自分の部屋に戻ってからもなかなか眠れずにいた。 類を思って涙する牧野の顔が頭から離れず、新しい酒をグラスに注ぐ。
俺達の前であいつが涙を流すなんて滅多に無い事だ…それだけに胸に刺さる。 俺があいつを忘れた時もあんな風に泣いてくれたんだろうか…バカな事を考えて自分を笑ってしまうぜ。

あの日、海の中に入っていく女が見えた…波間に沈む彼女を無我夢中で追いかけてグッタリとした彼女を砂浜まで運ぶと激しい頭痛で俺も気を失い…目覚めた時には牧野の記憶が戻っていたんだ。俺が記憶を戻した事でお袋は今までの事も話してくれた。どうしようもない後悔に襲われたが、生きる気力も失くなっていた牧野の為に俺なりに調べる事にした

類の親父さんを訪ねた時には憔悴していたが話をしてくれた
白井と言う男は狂っている。医師としての腕は良かったみたいだが、花沢の融資をあてにし病院を大きくしてずさんな経営、娘には贅沢三昧で何でも望みを叶えて来たらしい。そんな娘の恋した男が類だった

類父「琴音ちゃんは小さい頃から白井と一緒に屋敷にも遊びに来ていたんだ。類はあんな風だし話しもした事も無いが…高校卒業のお祝いを渡そうと屋敷に招待した時、庭で類と牧野さんが一緒の所を見たそうなんだ…それからはパーティーで類のパートナーにして欲しいとか…いろいろ私に頼んで来ていた。
類が承知するはずもなく断っていたんだが…私は白井に恩義があってね。病気の事を知らされた時は自分から協力すると申し出ていた…バカだったよ。
類は最初から疑っていたが、白井はお見通しだったんだろう。牧野さんを人質にしたんだからね。 彼女にも申し訳ない事をしたと思っている。せめて…天国で2人が幸せでいてくれればと今は思っているんだ。」

親父さんには牧野の無事も話していないが、すっかり2人の事を諦めているように見えて、これ以上の情報は得られないと考え、白井と親父さんの関係も調べさせた。
彼の言った『恩義』とはどうやら学生時代の事故の身代わりだとわかったがそれも白井が仕組んだものでは?と疑惑を持った。ともかく人の優しさにつけ込む事が上手い男だ。
なぁ類…お前はどんな気持ちであの親子の申し出を受け入れたんだ?牧野が消えてから皆んな必死で探したらしいが誰も俺に協力を求めては来なかった。まさかお袋が居場所を知っていたとは誰も思わないよな?俺だって聞いた時は驚いたぜお袋が類の父親がかつての自分のように牧野を排除したいんだろうと考えたのは当然だよな、まして白井なんて狂った男がそばにいた。だからお前に教えなかったのは勘弁してやってくれよな。
今は…牧野の為に必死に調べてるぜ
そうやって思い返してみると…こんなにも情報が入って来ないのはやっぱり変だ白井だってもう類を探そうとも思っていない、隠してもいないはずだ。類が落ちた場所の周辺は何度も調べさせたがどの調査会社も生存の見込みは無いとの報告だった。でも牧野は類は生きていると確信している

なぁ類…お前は今どこにいる?生きているなら早く戻って来い!もしかして…お前もあいつの事を忘れてしまったのか?
どうにも眠れずグルグルと考えてしまう。
そうだ…俺達が聞いた航海記録は最後に一緒にいたあの女の証言を元にして調べた物だった。もう一度、そこから調べてみた方がよさそうだな
牧野がちゃんと納得がいくまで調べよう。あいつの本物の笑顔を取り戻す為に…

***

次の日 道明寺のPJの中
「つくし〜沖縄楽しかったね!またみんなで行きたいなぁ」

翼は牧野の隣に座りご機嫌な様子だ。俺とお袋は早速秘書に渡された書類を読んでいると
つくし「そうだね。すごく楽しかったね」
牧野の声が聞こえた。ホテルで一面に広がる海を見た途端に倒れた時は直ぐに 引き返そうと思ったが、最終日には波打ち際まで歩く姿も見せてくれた。   あいつにとって翼の存在が前を向いてくれるきっかけになってくれたらな…
『ついて来て良かった』牧野の心の声が漏れたのを俺とお袋の耳にも届いた。

〜つくし〜
沖縄の海は透き通るほど透明でキラキラと輝いていた。
この海の向こうに類がいるかも知れないと引き込まれそうにもなったけれど…
翼の笑顔が私を癒やしてくれる。昨夜、楓社長から聞いた白井さんや琴音さんの事…両親の事。私は本当に守られていたんだと今更ながら実感したの。そろそろ…前を向いて歩き出さないとダメだよね…

**回想(22歳 春)**

あの山の中から助け出されてからも私はテレビやラジオ、新聞などに目を通す 機会が無かった。8ヶ月以上の山の中での生活でそれは日常化していたから気にもならなかったけれど、道明寺邸の別荘に移って安心して庭も歩けるようになったあの日、庭師の荷物に挟まっていた新聞がチラッと見えた。「花」の大きな文字が気になり手に取ってしまった…

日付は少し前の物だった…『花沢物産 御曹司 新婚旅行先の豪華クルーズ船から投身自殺』信じられない文字の羅列…一面いっぱいに書かれている記事を震えながら読んでいた…信じられないような記事、琴音さんの言葉。
『類…自分から海の中に飛び込んだの?もう…会えないの?』
それからの事はよく覚えていなかった。庭師さんが通る裏門から外に出てあてもなくフラフラと歩いていると波の音がした
「つくし 会いたかったよ」類の声が聞こえたの
早く類の所に行きたいのに波が邪魔をして進まないの…でも怖くはなかった  足が届かなくなって海の中に呼び込まれた時に腕を強く掴まれた。

目覚めると白い天井が見えた…私は類のいる海に拒絶されたと悲しかった  「牧野」「つくしさん」「先輩」 いろいろな声が聞こえるけれど声は出ない。何も考えたくもないし体も動かない。類のいない世界は色も消えてしまったの
腕に繋がれている管… 引き抜けば類のそばにいけるのかな?そう思うのに力がなくてそれも出来ない。私はただベッドの上で息をしているだけだった。それはどれくらい経った頃だろう…よく聞こえる「先輩」と呼ぶ声が震えていた…

桜子「先輩…点滴だけでは栄養は不十分ですよ…こんなに痩せてしまって…このままでは死んでしまいます!そんな事…私が許しません。お願いします…桜子の為に食べてください。私を昔みたいに一人ぼっちにしないでください」

ベッドの背を起こされると泣いている彼女が見えた…その手にはスプーンが握られ、私の口の中に入れようとするから唇を固く結んで抵抗したけど…その手が震えていて涙で濡れていたの。なぜだか彼女を拒絶する事が出来ずに中身を飲み込んでいた。

桜子「このスープは栄養満点なんですよ。さぁもう一口食べてくださいね」
それからも毎日彼女は私にスープを飲ませに来てくれて、私もそれだけは口にする様になった。懐かしい彼女の声にも心は開けないままだったけれど…


花より男子の類ファン、原作の切ない類を幸せにしたくて類スキ向けにお話を書き始めました。老化防止の為に妄想を巡らせるおばちゃんです。拙い文章ですが応援していただけると励みになります。よろしくお願いします