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【続・続・続】〇△◇パズルでSTから教わったこと

3種のパズルから、〇だけ残して、△と◇を外すST先生。

そこには、〇のピースと、10cm×20㎝のパズルマットのみが残った。

〇を、パズルマットの〇の窪みのすぐそばに置いて、ST先生は言った。

「〇の所に、〇のピースを入れて下さい。」

「分かるかい?〇は角がない。つまり、回転させなくても、回転させたとしても、ちょっと指で押しさえすれば、窪みにアッサリはまっちゃう。そして、マットとピースを渡すことで、半強制的(外発的)ではあるけど、モチベーションも与えてる。これが俺の考える、一番簡単な方法(笑)」

納得しかなかった。分かりみしかなかった。あの時の感動は、思い出すと今でも鳥肌が立つ。

「おつさんもOT学生さんだから、分かるよね?あとは、どんな段階付けがあるか。」

「例えばさ、△、◇は角があるから回転させないと、うまく窪みに入らない。でも、そのままピースを渡すのか、角を窪みに合わせてあげて、渡すのかによっても、難易度って変わると思わない?失行のある人なんか、そうだけど、難易度下げて、成功体験与えるっていう使い方だってできるよね?」

「じゃあさ、一番難しい方法は?これは、いろいろあると思うんだけど、例えばさ、3つのピース全部とって、シートと一緒に患者さんに渡すでしょ?その時、〇と◇しか渡さないとするよね?そしたら、認知機能の低下した患者さんだと、△と◇で悩んだりする人もいるかも知れない。そんな人にとって、角の数が一つしか違わないって、案外、難易度高いんじゃないかな?」

あの時、僕は完全に退行してたと思う。4歳くらいの、”男の子おつ”にだ。

まるで手品みたいだった。なんでこの人は、〇△◇の、こんな小さなパズルだけで、こうも世界を広げられるんだろう?

ST先生は、パズルをしまいながら、続けた。

「STも、OTも、高次脳機能評価するじゃん?なんで?」

「どっちもリハビリテーション課にいるなら、どっちかがやればいいよね?」

僕は、持てる知識を総動員して答えた。

「例えば、脳梁離断症候群の人がいたら、それが失語なのか、いわゆる失行なのか、それぞれの立場で評価した方が、より正確な判断ができるからではないでしょうか?」

今度は、ST先生は目を輝かせながら言った。

「素晴らしい!ほぼ正解。」

僕は、この日、ST室に入ってから、初めて笑顔になれた。安堵の笑顔だった。

                             (続く)

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