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原宿での一幕

訳あって原宿は明治神宮前の橋を渡っていた時の話。

予定の時間には余裕があったものの、目的地までの経路が不明だったのと、僕の携帯の充電がなかった。彼女にケータイで地図を出してもらって、少し足早に歩いていた。

リン。
文字通り凛とした金属音。

振り向けば駅の方から橋を渡って右手奥に托鉢のお坊さんが立っていた。

明治神宮といえば、関東神道の中心とも言える場所だ。
考えてみれば別宗教の人間が、気合い入ってんなと、まずは思った。

彼女「あの音、自分が悪いことしているような気になるよね」
なまちゃ「見ちゃって何もしないとね」
彼女「あれって何したらいいの?」

そう言われてみると、托鉢に対してのアクションはなんとなく鉢にお金入れればいいのかなぁ、と思っていたが、正確にはわからない。

手塚治虫「ブッダ」を思い出しながら、喜捨の説明をした。

下記はその時話したことのまとめである。

お坊さん:乞食してご飯を食べられる。
信者(我々):喜んで捨てることで功徳を積むチャンスをもらえる。
宗教を媒介したWin Winの関係である。
しかも、お坊さんサイドは修行中にやる行なのだ。

彼女はまるで自分には関係ないことを話すように言った。
「私たち、お金がなくなったらあれをやろう」
僕はこう返す。
「でもお坊さんのコスプレ買うお金いるんじゃない?」

彼女は地図をしまってSafariで「僧 コスプレ」で検索を始めた。
「今から2人分買っておこうか」
「流石準備が早い。確かにお金があるうちに買った方がいいよね。出家したら先方がご用意してくれたりしないかなぁ」
そのタイミングで彼女は改めて地図を開いた。
「歩道橋の登り降りマストっぽい!!」

2人は腹を括って階段を登る。
その時彼女が前を向いたまま言った。
「でも、女だったらもっと他に稼ぐ方法あるな」
うわなんか言ってる、触れんとこ。
「もうすぐ着くねー、地図ありがとね」

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