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セレンディップな旅行の計画

彼女は、曰く、計画的な人間だ。
付き合う前、
「なまちゃさんは告白したことある?」
と聞かれ、質問に答えているうちにいつのまにか告白させられていた。
その際、もし付き合うなら、ということで条件を提示された。
いついつまでに結婚したいので、いついつまでに同棲をして、1年以内にうまくいかなかったら同棲を解消して別れる。それでもよいか?という具合だ。
告白させた癖に。

完全に誘導され、コントロールされている感じはなかなか楽しく、彼女と付き合っていて楽しいところの一つだ。

言いなりになっている僕は、対して、全く無計画な人間だと思う。
結婚もしたくなったらすればいいし、結婚前の同棲もあってもなくてもよいと思っているし、子供も授かり婚というのもありだなくらいに思っている。

最初のデート以降、ほとんどの店は彼女が決めている。
食べログとインスタグラムで行きたいお店をストックしている彼女の得意分野だということなので、そこはおまかせして、僕は全力で美味しいという担当だ。

そんな中GWの予定が空いているから、何かしたいね、という話をした。
A「まず、GWは一緒に過ごしたいよね」
B「わかる」
という、どちらがどちらを担当したか割とどちらでもよい会話をしたのち、第一案「旅行」、第二案「家でごろごろ」で素案の提出が完了した。それぞれの案の提出者は推して知るべし。

第二案の提出者である僕も、流石にGW以後の自分達が振り返った時、ごろごろしてましたでは思い出にしづらいだろうということで、真面目に旅行の計画を立て始めた。

彼女「旅行は旅のしおりとか作る派?」
なまちゃ「旅行は何も決めずに行ってみて、その場でやること決めるのが好き」
彼女「今回はそうしてみようか」
なまちゃ「え!そんな無計画な旅行、彼女ちゃん耐えられる?」

普通に耐えられないだろうな、と思いながら無計画旅行を実行することになった。

結局旅先が決まる前にGWに突入してしまい、1日目はどこに行くかの相談で潰れた。
初めは伊豆で検討していたが、予算上限ギリギリの老舗旅館を石川県に見つけたため、新幹線に乗って石川県に行くことになった。
行く場所、というか乗る新幹線と泊まる旅館が決まった。

出発はその翌日。
翌日、なんとか早起きして新幹線に乗り、金沢駅に着いた。
特に飲食店の予約もせず、兼六園へ。

僕は金沢が大好きで、以前行った時の記憶から、メロンパンアイスを食べようと思っていた。

日本で二番目に美味しいメロンパン的なキャッチコピーで一躍有名になった。
東京にも支店があっためっちゃうまいメロンパン。
熱いメロンパンに冷たいアイスが挟まって、最高の体験になる。必然屋台が最適の提供場所になる。

すると、以前あった場所に行ったらさっぱり店がない。メロンパンアイスで検索してみたら、その社長はコロナ補助金関係で不祥事を起こしており、会社を畳んでいるようなことが書いてあった。
つまり、よくわからんが色々あってメロンパンアイスは、東京はおろか、日本からなくなってしまったわけだ。

食べられなかったメロンパンに想いを馳せながら、鈴木大拙記念館に行った。
鈴木大拙記念館というのが僕が世界で一番好きな建築だ。

彼女は割と楽しんでくれていたように思う。
鈴木大拙の生き様に触れ、水のデザインを知り、風が建物のデザインによってある程度コントロールされて踊るのを見て、「なまちゃさんが好きなものに共感できてよかった」と言ってくれた。

鈴木大拙館の裏手から出てたまたまやっていたお祭りにふらっと立ち寄ってフルーツ飴を買い、
焼きそばやお好み焼きがないね、と言って笑った。

石川県で有名な寿司屋になんとか行き、たまたま見つけたバーに入った。

独特すぎる注釈の入ったメニュー

バーのメニューが独特すぎて、ケラケラ笑いながらお酒を飲み、進んだために新幹線を一本遅らせた。

僕が無計画から最も得たいこと。
それはセレンディピティ。
偶然に出会う素敵な出来事たちをデザインすること。
きっと僕の無計画に振り回されて付き合っている彼女は多少のストレスは感じていることだろうと思う。でも、不確実な出来事をデザインする僕を横で楽しんでくれたらいいな。

そして僕の方といえば、そんな不確実でコントロールできないスケジュールを楽しむ僕すら、コントロールして欲しいと思っている。

僕は彼女に出会えたことを偶然だと思ってるけど、きっと彼女は僕にあったことを必然だと思ってると思う。今夜は、どっちでもいい。どっちでも素敵だと思うぜ。

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