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陽を仰ぎ、花は咲く【FOCUS ON:永井葵】

明治安田生命J1リーグから数えて「J8」の東京都社会人サッカーリーグ2部に所属しているTOKYO CITY F.C.。渋谷区をホームタウンに活動するクラブには、いったいどんな選手が在籍し、どんな思いを胸に秘めてプレーしているのだろうか。選手1人ひとりのパーソナリティに焦点を当てる連載企画「FOCUS ON」がスタート。第6回は加入2年目の最年少守護神、背番号1の永井葵(@aoi_nagai)に迫る。

永井葵のプロフィール詳細

高校卒業とともに社会人サッカーへ

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 僕がサッカーを始めたのは幼稚園の年中の頃で、小学2年生の時にGKになりました。最初のきっかけはGKをやっていた友だちが怪我をして、僕が代わりにやったことだったんですが、それからは気づいたらずっとGKでした。

 中学時代にはフットサルで全国大会に出ることもできて、スポーツ推薦で成立学園高校に進みました。

 高校サッカーは「理不尽」というイメージが強いのではないかと思います。僕が経験したのもまさにそんな感じで、長距離走のタイムで序列が決まってしまうような状況に「サッカーをしにきているんだけどな…」とふてくされていた時期も長かったですね。特に高校3年生の頃は自分自身の成長が感じられず、自信も失っていました。

 それでも両親からは高校卒業後もサッカーを続けて欲しいと言われ、某Jリーグクラブに練習参加できるかもしれないチャンスもありました。でも、当時の僕はちょっとグレていたので、お世話になっていた指導者の方にも「お前は参加させられない」と言われて頓挫してしまいました。

 そんなタイミングで「社会人サッカー」という言葉をふと耳にして、インターネットで調べてみたら、検索結果の一番上に出てきたのがTOKYO CITY F.C.だったんです。まだ高校生だったので、なかなか自分と年の離れた大人とサッカーをするイメージは湧かなかったですが、練習参加させてもらったことで失いかけていたサッカーに対するモチベーションが蘇ってきた感じがしました。

 最終的には自分がサッカーを続けていくにあたってCITYこそがベストな環境だと考えて、加入することに決めました。

 でも、自分の独りよがりな考えによって、危うくたった1年で最高の環境を捨ててしまうところでした。

 昨年10月の全国クラブチームサッカー選手権が終わった頃から「自分はチームに良い影響を与えられているのか?」「正直、自分がいてもいなくても変わらないんじゃないか?」と考えるようになりました。決してそれまで試合に出られていなかったからではなく、漠然とチームに貢献できていないと感じる自分が歯がゆかったんです。

「決断は正しかったのか?」

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 そうするうちに一度は退団の意思を固めて、今年はじめのミーティングでチームのみんなに「辞めます」と伝えました。するとたくさんの選手たちが「もったいないけど、お前が選んだならしょうがないね」といった言葉をかけてくれました。

 それは本当に予想していなくて、その場で「軽はずみな考えで、自分の勝手な思い込みで辞めてしまうのはもったいない」と気づいたんです。

 ミーティング後には近くのフットサルコートに移動して、初蹴りのような形で選手やスタッフも交えてボールを蹴ったのですが、とにかく頭が「辞める決断は正しかったのか?」ということでいっぱいで誰とも喋れませんでしたね。

 結局、「このままCITYを辞めたら絶対に後悔する」と感じて、すぐに深さん(深澤佑介GM兼監督)に連絡して今シーズンもCITYでプレーを続ける意思を伝えました。「戻ってこいよ」という言葉もいただいて、心のつっかえが取れました。

 CITYに入って感じるのは、年が離れていようと「お前は年下だから」で終わらせることなく、1人の選手としてダメなところは「ダメ」とハッキリ言ってくれる先輩たちのありがたみです。

 特に翼くん(#7 松本翼)とはよくLINEなどを通してアドバイスをもらいます。そうやって年上の選手や高いレベルでの経験が豊富な選手たちも一緒になって考えてくれる環境が自分には合っているんだと思います。気持ちよく、楽しくプレーできていた中学生時代に近い感覚が戻ってきつつあります。

 とはいえCITYに入ったばかりの頃や、試合に初めて出た時などは、自分で「僕はサッカー初心者なのか?」と思うくらいダメダメでミスばかり。ノムくん(#8 野村良平)にはめちゃくちゃ怒られていましたし、峯くん(#20 峯達也)に比べて自分がまだまだなのもよくわかっていました。

 一緒に試合に出ているのが自分よりもはるかにすごい経験をしてきた選手ばかりなので、正直「自分が出ていて大丈夫なのか?」と感じる瞬間はまだあります。それでも少しずつ成長できていることを実感しながら、試合に出るたびに「自分がやらなきゃ」という気持ちは強くなってきています。

大人への階段を登る

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 やっぱりGKはピッチ上で最も重要なポジションだとも思うので、自分のところからチームが崩れる原因を作るわけにはいきません。もっと周りから信頼してもらうためには、峯くんみたいに的確なコーチングができるようにならなければいけないし、セービングやキックの正確性を高めて、プレーの幅を広げていかなければと強く思っています。

 サッカーに対する意識もCITYに入ってから確実に変わり始めました。僕は普段専門学校に通って、柔道整復師の資格を取得するための勉強をしているのですが、CITYでプレーするようになって文武両道を絶対に貫かなければならないと思うようになってきました。

 入ったばかりの頃、定期テスト前になるとCITYの練習や試合を休んでは「僕、おかしいことしているか?」なんて思っていた時期もありましたが、深さんや翔さん(小泉翔=クラブスタッフ)から「勉強の時間は努力しだいで作れる」と諭されて目が覚めました。

 例えば、電車に乗っている間に参考書を開いて勉強することだって、少しずつ積み重ねていけば大きな成果につながるかもしれません。

 社会人の先輩たちはフルタイムで仕事をしながら、僕のような学生よりも時間のやりくりが大変ななかでしっかりサッカーにも100%でやっています。自分なりに考えて、工夫して、勉強とサッカーの両立は最終的にはやる気しだいでどうにでもなるというのを、社会人サッカーを通して実感しています。

 正直、自分のことでいっぱいいっぱいなところも、まだ甘めに見てもらえている部分も多くあると思います。でも「CITYの中では最年少だから」と周りの優しさに甘えるのではなく、社会人の先輩たちに少しでも近づけるように努力して、自分なりの形で発信しながらチームにいい影響を与えられる選手になりたいです。

 自分にとって自己表現の場であり人生そのものとも言えるサッカーを通して、たくさんの人と喜怒哀楽を共有しながら成長していきたいと思います。

永井葵のプロフィール詳細

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