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君は「お母さん」になりすぎた、だから、もうセックスはできない(後編)

<前編はこちら>

子供が9歳の時、わたしは子供と2人で、当時住んでいたアメリカを離れ、イギリスに戻ることにした。子供の進学を考えてのことだった。

夫はアメリカに残るので、わたしたちは別居をすることになった。

この時点で、レス歴10年、別室で寝始めて3年以上経っていたので、夫婦関係において大きな変化というわけではなかった。

子育てがひと段落、夫婦関係の再構築を目指す

子供の学校は、コットヒルハウスという全寮制男子校で、オクスフォード郊外にある。

この学校を選んだ主な理由は、

  • 最終的に子供を進学させたいイートン校に生徒を送り込んでいる実績がある(→息子はその後イートンに進学した)。

  • 生徒たちが、輝くような笑顔で、広大なグランドをのびのびと駆け回っている

  • 1学期間、フランスの姉妹校で学ぶというユニークなプログラムがある

という点だった。

子供は、親が拍子抜けするほど、すぐに学校に馴染み、とても楽しい、と言っていた。

成績は学年トップ、引っ込み思案ではあるが、性格も素行もよく、親友も出来て、これ以上望むことはなかった。

わたしにとっては、子育ての大きな一区切りだった。

夫ともう一度向かい合う余裕が、やっと出来た。

もう一度あなたに恋をしたい

夫との溝を埋め、関係を再構築したいと思った。2人で過ごす時間を増やし、旅行先にベッドで誘ってもみた。

ところが夫は冷ややかだった。気持ちが伝わっていないのかなと思ったわたしは、メールでメッセージを送った。

「ここ数年、距離ができてしまったけど、2人の関係を取り戻そう。わたしは、もう一度、あなたに恋をしたい」

ドキドキして返事を待った。
この時、既にわたしは、彼にもう一度恋をし始めていたと思う。

もう女としては見られない


それに対して届いた返信を、わたしは一生忘れないだろう。

「もう、君のことは女性として、性的対象としては見られない」

女性として見られないなんて、言われたことがなかった。
育児真っ最中でも、身なりに気を付けた、みるみる体重が増加していった夫とは違って、体型も維持した、家庭という狭い世界に安住せず知的好奇心も維持した。
育児中に仕事復帰した職場では、何度も「誘われた」。

でも夫にとっては、もう女ではない、という。

「……じゃあ、わたしはあなたにとって何?」
「食事や飲みのパートナーってところかな。あ、でも、家族としては大事に思っているし、愛情もあるよ」

よく、ここまで伴侶を馬鹿にできるものだ。

わたしの女性としての自尊心は、これ以上ないというまで叩きのめされた。

傷心、憎悪、悲しみ……


夫は、更にこう言った。

「君はお母さんになり過ぎた。だからもうセックスは出来ない」。

わたしは、夫のこの発言を絶対に許さない。

女をなんだと思ってるんだ?
「お母さん」の大変さを知っているのか?
その一言が、どれだけ妻を傷付けたかわかっているのか?

最低、という言葉を何万回重ねても足りないくらい最低な男だ。

そして、最愛の人であるはずの夫に対して、そんな感情を持つ自分が悲しい。とても、とても悲しい。

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