日清日露戦争と株式市場の関係

今さらながらドラゴン桜という漫画にハマっている。落ちこぼれの生徒が1年間で東京大学を目指すストーリーだ。まず東大に受かるための戦略を立てる。そのために東大入試の問題の傾向や東大に「受かる人間と受からない人間の違い」などを全て事前に調べて把握した上で受験勉強に臨む。

「こんな漫画にもっと早く出会えていれば東大に入れたのに・・」と意味の分からない悔しささえ覚える内容だ。

さて本題だが言いたいのはここから。ドラゴン桜の作者である三田紀房さんが書いた「インベスターZ」という投資を題材にした漫画がある。これも昨年2021年にようやく読んだのだがこれもまた素晴らしい。

この漫画のワンシーンで印象に残る場面があった。「戦時下の株価は買いなのか?売りなのか?」を試案する場面だ。漫画によると日清戦争や日露戦争後の勝利後、株価が急騰したことは人々の記憶に刷り込まれていて、市場の常識では「戦争は買い」になっているそうだ。

それが本当ならロシアのウクライナ侵攻に伴い株価はここからまた上がるはずだ。では日清日露戦争の時に実際の株式市場はどうだったのか?まずこれを調べてみた。

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結論から言えば日清・日露の2つの戦争の時は戦争をきっかけにバブル状態になっている。特に日露戦争の時のバブルは激しい。約2年間で当時の東京証券取引所全体の株価は8倍にも膨れ上がっているようだ。

まず大前提として当時の日本は江戸幕府から明治になり近代化を実現したばかりの新興国である。例えば日清戦争が開戦した1894年のGDPと下関条約によって終戦となる翌1895年のGDPでは実質6.2%上昇している。これは戦争による特需があったと考えざるえない。

さらに日本は清からの賠償金を元に金本位制をスタートさせている。これは日本で初めての近代的な通貨制度だ。仮想通貨バブルに代表されるように今も昔も新しい通貨や金融システムに対する市場の期待は大きい。日清戦争の場合は8か月で戦争自体が終わったこともあり戦争終了後に株価のピークがきていることが見て取れる。

一方日露戦争はどうか?株価が上昇しているのは日本海海戦で秋山真之がバルチック艦隊を撃破したあたりからだ。これは投資家のマインドが強気になったためだと推測できる。戦勝ムードと賠償金などで国が豊かになる期待感から投資額が膨らんだのだろう。

ただし実際のGDPはどうだったかと言うとあまり伸びていなかったらしい。我々庶民が感じる実感としての経済と膨れ上がる株価の乖離はこの頃から生まれていたのだ。

ちなみに漫画の登場人物である投資部の初代キャプテン龍五郎という人物はこう言っている。「皆が買いに走っているときはバブルであって、必ずその後に反動的な大恐慌が訪れる」

実際にこの後日本はとんでもない大恐慌に襲われるのである。



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