【虎に翼 感想】第109話 大切な一歩
情報通の桂場は気がかりだった。寅子たちが竹もとに集まっていると聞いては行かない選択肢はない。団子の味見もできて一石二鳥だ。だが大勢の中に一人で行くのはちょっと……久藤を誘おうとなったわけか。もちろん、おごる前提で。
昨日、寅子は桂場が提案書を突き返すことは織り込み済みだったのではと書いたが、桂場も、寅子が最高裁へ直談判することは織り込み済みだったようだ。だから事務総局へ根回しをしていた。久藤もそれとなく周りに話をするのは得意だ。
権力者である桂場と立場弱き女性法曹者たちの対立が始まるのではと心配したが、そうならなくてひとまずホッとした。
女性法曹者たちは、一人ひとりの歩幅は違っても、大事な一歩を歩み始めたところなのである。
いつまでも寅子の支えとなってくれるトリオ・ザ・裁判所の存在のありがたいことよ……。
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いろはと漢数字の棚、懐かしい。
航一は今日は、棚を作ろうと、朋一にも歩み寄りの姿勢を見せている。拒否られることへの免疫はまだついていないようではあるが。
それでも変わろうとする父親の姿は、朋一の心に訴えかけるものがあったに違いない。
母親とのピアノの思い出を語ることによって、当時の具体的な出来事がアンサーとして届けられ、思い出を積み重ねることができた。朋一の嬉しそうな顔ったら……。
昭和31年秋
夜遅くに芸術家の集まりに参加していたのどかは警察に補導されてしまった。厳重注意で済んだのが幸いだ。
のどかのこの行為は、家からの逃避行動なのだろうか、それとも真にのどかが求めているものなのだろうかと、考えてしまった。
戦時中の芸術家たちがどのように生きていたかには詳しくないが、それでも戦後、抑圧から解放された感はあったはずだ。芸術について自由に語る場では、皆が平等でいられたのではないか。
翌朝。
美味しいものを美味しいと言って食べる。皆で食べると美味しい。優三さんの教えは星家にも浸透してきている。そんな場では朋一は寅子にも遠慮なく話をして、打ち解けている。
この頃にはすでに司法試験は終わっていた。朋一は口述試験を終えて結果待ち。久しぶりに何もしなくていい休日を過ごしている。棚がまだ完成していないのであれば、そろそろ作ろう。筆記で落ちた直人は、やっと気持ちを来年に向け始めたようだ。
遅く起きてきて百合に和食とだけ伝えるのどかに、
「先に言うことがあるだろう」と朋一がたしなめるのはごもっともだ。それに対し、こうなっているのは、そもそも誰のせいだと言わんばかりののどかの態度である。
航一は相変わらず恐る恐る接している。航一まで責めてしまったら逃げ場がないからちょうどよいのかと思ったが、謝られるのも辛いことだ。思い切って寅子と優未を好きになれないと言った手前、のどかの手持ちのカードは自分が出て行くことしか残っていない。
百合が、家族を繋ぎとめようと必死になる……百合のこの不断の努力が、今まで星家を繋ぎとめてきたのだ。
優未も寅子も、恐る恐る接することなどしない。
優未は、麻雀という星家のルールに則って解決策を講じようとした。
寅子はちゃんと財布を持って出て行ったようだ。たい焼きを人数分買って、何事もなかったように戻ってきた。
美味しいものはみんなで食べよう作戦を発動しようと思ったら、なぜ麻雀大会なのか?状況を飲み込めない寅子は、もう仲直りしたと思ったかもしれない。
その実、優未からしたら、自分が負けたらのどかが出ていってしまうプレッシャーの中の真剣勝負をしているのである。
そのプレッシャーのせいか、お腹を押さえ、汗が止まらない優未……その痛みは、優三さんゆずりのほうなのか、寅子ゆずりのほうなのか……。
「虎に翼」 8/29 より
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