【虎に翼 感想】第106話 家族のあらたな一面
昭和31年春
寅子と優未は無事、星家に引っ越してきた。
のどかは明律大学へ入学し、寅子の後輩となった。
朋一は司法試験の受験を控え、現役合格すると意気込んでいる。
親子2代、3代で法曹界に入る人たちは結構いる。
おそらくおじいちゃん子の朋一とのどかは、航一よりは祖父の朋彦氏の教えに従って法曹の道を目指しているように見える。
二人は麻雀(花札、トランプ)も祖父にみっちり仕込まれていた。
顔にすぐ出てしまう寅子に対して、ポーカーフェイスを得意とする優未は麻雀も強い。さすがは元 “スン” の子なだけはある。
航一の笑顔を、朋一ものどかもあまり見たことがないのだろうか。この同居は、今まで知らなかった父親の一面を、まざまざと見せつけられる日々になりそうだ。
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同居を始めて知る新しい一面。
最初の頃は、百合が星家を取り仕切っていて、朋一とのどかは百合に従順なのかと思っていた。
朝から和食と洋食を選べる。“ホテル星” のバイキングは魅力的だ。だが、百合の負担は相当なものとなっている。朝食を多めに用意し、余った分は昼と夜で消費する生活……好きなものを食べたいときもあるだろうに……。
寅子に「おかあさん」と呼ばれて喜んでいる…… “後妻” だと遠慮し、家族には自分のことを「百合さん」と呼ばせていた。
再婚してからは15年くらいだろうか。航一が新潟に行っていた数年間は、百合と朋一とのどかだけの生活だった。ずっとこうだったのかと、百合の気苦労はいかばかりだったかと思うと、彼女のまったく違う一面が見えてくるのだ。
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そんな百合が作るお弁当は、彩りもよく美味しそうである。
寅子と同じ民事第24部には、秋山真理子という新しい女性裁判官が配属されていた。漆間とは同期なのだろうか。
この当時、日本の女性裁判官は12名。東京地裁にも数名しかいない計算だ。数少ない女性裁判官同士、仲良くしたいと思うのは当然のことだ。だからお昼を一緒に食べたがる。
裁判官に任官するだけあって真理子は優秀そうだし気が強そうだ。新婚とはいえ姑の圧にもめげていない様子である。
原爆裁判、第5回弁論準備手続期日
この日は4月4日である。
原爆裁判は、第5回弁論準備手続期日まで進んでいた。
といっても、その実まったく進行していない。だから調書も空白が多い(岩居の下の名前は “一正” と判明)。
昭和30年10月の時点で第2回期日だったから、そこから約2か月おきに期日が入っている。
この日は双方代理人の申請により、期日は5月11日に延期された。
2月に開かれた第4回期日で、被告である国側は、
「この件は法律問題ではなく “政治問題” だ。敗戦国が戦勝国に賠償を請求した例はなく、賠償請求権が放棄されるのが慣例。放棄される “宿命” なのだ」と主張していた。
雲野弁護士と岩居弁護士は、その言葉に憤っていたが、まったくそのとおりだ。おしゃれ風に言うものではない。
この冷徹そうな国側指定代理人に、『砂の器』で偏見や差別に苦しんだ主人公のピアニストが演奏する『宿命』を聞かせてやりたい。
汐見は「焦らずに」と、気がはやりそうになる寅子と漆間に話していたが、原告の中で亡くなる人が出てきそうで心配だ。今だったら裁判官に注意されそうなペースだよ……。
朋一とのどかの本当の面
一番ダメージを受けたのは航一ではなかったか。
のどかの「お父さんは居てもいなくてもいい」の言葉。
すりガラス越しに表情を見せない場所で、朋一に注意すると見せかけて、航一に聞かせようとしている。なんとも巧妙だ。親子の間にどんな溝があるというのだ。
兄妹の関係も、最初に思ったのと違った。のどかがお兄ちゃんに従順な印象だったけど、朋一は感情が先に立つところがあり、理知的なのどかに見透かされている。妹に一目置いているのか、意見されると従うようでもある。もし裁判官になったら入倉タイプか。
寅子の朋一に対する指摘は、過去の寅子を思い返すと “どの口が言う” 状態ではあり、優未に諫められるのもやむを得ないことだ。
だけど寅子は、あの登戸での家族会議を経て新潟の地での二人暮らしを始め、家事の大変さを痛感していた。最終的には、稲という最強のサポートを得て生活が安定したわけだ。
だからこそ、後妻という引け目を感じている百合に対し、朋一がこれ以上増長しないよう、何とかしたくなってしまったのではないか。
のどかは、寅子の「何かあったら、何でも言ってね」の言葉に答えなかった。冷静で理知的に見えるのどかは、本当の面を見せているだろうか。
「虎に翼」 8/26 より
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