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【虎に翼 感想】第123話 今が振り返る時期


放送回数も残りわずかとなり、過去を振り返る時期に入っている。
尊属殺の重罰規定、女子部の皆のこと、美佐江のこと……


家庭裁判所で会議が開かれた

少年法の法制審議会。家庭裁判所側からしたら、改正ありきの政府の意向を汲む者たちは敵でしかないが、それを隠れ蓑に、設立時からの家庭裁判所を振り返ること、そして現在の家庭裁判所の至らない点を探る作業を怠っていたのかもしれない。

戦後、生き残った戦災孤児たちを救いたいと、大人たちがそれぞれの方法で取り組んでいた。よねたちの活動もそうだし、直明が関わった “少年少女保護連盟” もそうだし、家庭裁判所設立もその一つだ(家裁は子どもたちのためだけではないが)。何もないところから作り上げたあの頃は情熱があった。

だがすでに無理が生じている。働く人員の個々の努力と犠牲に支えられ、外形的には何とかやれているように見えることはよくある。その歪みの中で押しつぶされる人が必ず出てくるのだ。

設立時の家庭裁判所を思い返すと、プライベートは後回しでとにかく仕事という感じではあった。寅子も毎日帰りが遅そうだったし、何かにつけて付き合いでお酒を飲んで帰って、そのまま寝ちゃって翌朝優未に冷めた目で見られていたではないか。多岐川はさっさと帰ったりもしていたけど。
戦後だからあの働き方でも誰も文句を言わなかったが、少ない人員でがむしゃらに回していた体質がずっと残ってしまっていたのではないだろうか。

そもそもイマジナリー多岐川が言っていたように、地方裁判所と比べて家庭裁判所自体が軽んじられているところはある。家裁へ異動してきた裁判官の中には、左遷と受け止めて仕事への意欲を失う者もいるかもしれない。寅子の前に座っていた彼らもしかりである。
多岐川の情熱に引っ張られて家庭裁判所がまとまっている(ように見える)ことを奇禍として、上層部は家裁にノータッチだった。結果、個々の裁判官の情熱に委ねられて差が出て、そのあおりを調査官たちが受けてしまっているのだ。

愛の裁判所の理念を捨てる必要はない。それと人員配置は別の問題だ。

裁判官に差がある。裁判官も人間だからといえばそれまでだが、音羽の主張するような画一的になりすぎるのが良いとも言えない気がする。だが、イマイチな裁判官に当たった当事者はたまったものではない。
遅々として進まなかった裁判が、裁判官が異動で交代した途端、理路整然と訴訟指揮をしてくれて急に進行が早くなることもあったし、弁護士の見立てで “この裁判官、心配だ” という裁判は案の定、地裁で請求棄却されたこともあった。その後、高裁で逆転勝訴になったからよかったけど。今日はなんだか私も昔を振り返ってしまう。

少年法の改正と家庭裁判所の人員不足の問題、まさに現代とリンクしていることだ。
共同親権が導入されれば、父単独、母単独だけでなく共同の選択肢が加わるのだから、家庭裁判所のお世話になる件数が増える可能性がある。そのときに調停委員と裁判官の数は確保できるのだろうか。結論ありきで進める場合は、それを受け入れる体制づくりもワンセットではないかと思っている。

調査官の音羽は、横にいる裁判官よりよっぽど優秀だ。優秀な人ほど真剣に考えて抱え込んでしまうから心配で仕方がない。彼女が辞めないよう裁判所(桂場)は早急に対策を練るべし。


直明の変化

直明一家は、直人夫婦に子が増えることもあり、近くに引っ越すことになった。
久しぶりの直明はいくぶん髪も伸び、「正直なところ~花江さんをアテにしてまぁーす」の言い方も相まってBE:FIRSTみが増している。
末っ子みが強かった直明も、今となっては玲美と直正くんの存在がかけがえのないものとなり、実家の猪爪家を出ることには不安がなくなっていた。

猪爪家、佐田家が集合しての家族討論会が開催された。テーマはもちろん少年犯罪について。
直明はBBS連盟(少年少女保護連盟の流れ)の関係で法制審議会の部会への出席を求められていた。
「お、おぅ、知った顔ばかりになるな。まぁ頑張れ」
と思ったのもつかの間、直明は自分の生徒を優先し、辞退するつもりでいた(昭和46年を境にBBSの会員数が減少していく頃だったようだ)。

もう戦後すぐの頃の直明ではない。昔を振り返る必要もなく、今見るべき場所はどこか、今向かい合うべき人は誰なのかをよく分かっているのだ。


昭和46年夏

涼子は司法試験を受験すべく勉強を続けていた。受験日を前に玉と上京し、星家を訪問する。そこに集まる女子部の皆&轟なのである。
航一は、美位子の裁判を調査している立場だ。後で難くせをつけられないよう、再会の場を辞することにした。エプロンを外しながら階段を上ってくれると尚よかった。

そうだね。近況話は試験が終わってからでいいよね。
よねは依頼者のためだけでなく、仲間のためにも睡眠時間を削ることが当たり前なのだ。試験の模擬問題を作ってきてくれて、受かっている者と受かっていない者に分かれて解きはじめる。受かっている者たちにはプレッシャーなことよ……。

明律大学で学ぶ若かりし頃の皆の姿……皆、あのときの自分が人生の核となっているのだ……戦争も含めていろいろなことが過ぎていった今だからこそ、輝かしい記憶が強く蘇ってもいいじゃないか。古くなった者だからこそ振り返る権利を持っている。そこに今日の姿も重ねられていくのだ。なんと濃密な人生であることか。


美佐江に似た少女

そんな寅子には、別の振り返りも待っていた。
東京家庭裁判所の廊下。寅子は毎日、何往復もしているが、そんな日常を非日常に誘う人物に出会ってしまったのだ。

あの森口美佐江にうり二つの女子高生、並木美雪。一体何者なのか……。
あの古そうな、手帳のようなものは何なのか。

「え~っと、ニイガタでミサエがミサンガを……」などと寅子が説明したかは分からないが、音羽が事情を知っているようだから、明日聞かせてもらおう。


「虎に翼」 9/18 より

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