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【虎に翼 感想】第66話 星航一との出会い


昭和25年

あの愛のコンサートから約1年が経った。寅子のスーツも新しくなっている。
何よりも、寅子は超有名人になっていた。取材に訪れた男性記者からも、妻と母にとサインを求められ、慣れた手つきで書いてあげている。そして、寅子本人がその環境に慣れてしまっている。

寅子の発言は、ときに一人歩きしてしまい、家事部の浦野と少年部の壇からクレームが来てしまう。そして、多岐川に諫められる。
「私はいつも確実にしっかり仕事をしています。」
ちょっと危険な発言だ。司法省で働き始めたばかりの寅子は自己評価が低かった。その反動で今は高くなりすぎていないだろうか。

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猪爪家では、直人が高校1年生、直治が中学1年生になっていた。よその子はすぐ大きくなるな。花江の髪型も新しいスタイルになっている。
直明も就職活動の時期を迎えている。やりがいと収入のどちらをとるか、多くの社会人につきまとう問題だ。
優未ちゃんも小学1年生になり、今週から新キャストだ。おそらく、学校のお友達と自分の家が違うことにも気が付いている。自我が芽生え、母親が家にいないことについて葛藤している。寅子が土日も出かけることになると話しても、うんともすんとも言わない。感情を押し殺すことに慣れてしまわないか心配だ。茨田りつ子に頼んで、福来スズ子の娘、愛子を紹介してもらいたい。
家庭裁判所に勤める寅子が、自分の子と向き合えていない。今後のストーリーの大事な要素となるか。しかし、そこがクローズアップされてしまうのは、寅子が "母親" だからということが大きい。


梅子と轟法律事務所の現在

梅子は、姻族関係終了届(配偶者の血族との親族関係を終了させる)からの復氏(ふくし)届(旧姓に戻す)の手続きをとって、“竹原梅子” になっていた。轟法律事務所で暮らしつつ竹もとで働いているから、寅子とも、ちょくちょく顔を合わせることができる。
梅子が轟法律事務所に集まる子どもたちの面倒をみてくれていることによって、轟とよねは仕事に集中できている。今日も身体障害のある依頼者の相談を受けている。

依頼者が書類に署名するときに、家族が手を添えている……それを補助する轟弁護士と助手のよね……そのシーンがアップで映される……。
後々になってから、“添え手” で書かれた遺言の有効性についての判例が出るようだが、やはりこの頃はいろいろなことがグレーだ。この件は大丈夫だろうけど、添え手は依頼者本人の意思確認があいまいになる。
依頼者が望んでいないのに、弁護士が強く言ったことにより押し切られて、後になって「そんなつもりはなかったのに、弁護士先生が言うから断れなかった」となると、問題となって懲戒請求をされるおそれが出る。だから、本人の意思確認は慎重に行う必要があるのだ。

轟法律事務所のそもそもの成り立ちが、カフェー燈台のマスターのお店だった場所を、マスターの死に乗じてよねが占有をしたことから始まっている。
この轟法律事務所(よね)のグレーさが、後々になって、よねが非弁行為で逮捕されたり、轟が懲戒処分を受けて弁護士資格を失ったりという展開にならないといいんだけれど……本作の緻密さから考えるとあり得ると思ってしまう……また考えすぎてしまった(反省)。


星航一との出会い

星長官の著書『日常生活と民法』、実際に三淵忠彦さんが書かれたもののようだ。
法律が改正されると書籍の内容も改訂される。その作業を寅子が依頼された。改訂者として「佐田寅子」の名前が載れば、本も売れるだろう。

桂場は団子と一緒に言葉を飲み込んでしまったが、いまだに寅子がいつ辞めるか分からないと思っているのか……それに反応する寅子の妙に自信ありげな表情もひと癖ある。桂場が、あのように伝えることによって寅子を原点に立ち返らせようとしてくれているのならよいのだが。

久藤は桂場のことだけは絶対ニックネームで呼ばないね。相当嫌がったんだろうな。

猪爪家の反応が薄い。勝手に決めてきてから家族に報告するのは、道男のときに免疫ができている。ますます寅子が “家に存在しない者” として扱われている。

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寅子は、指定された日に星長官の元を尋ねたが、長官は急用で不在だった。

星長官の息子、星航一。横浜地裁で裁判官の任に就いている。
相手が自分のことを知っているとしても、自己紹介はしたほうがいいね……ちょいちょい寅子が自分が有名人であることを自覚している様を描いてくれる。
横浜か……たしか、初の婦人弁護士の一人、中山先輩は横浜の法律事務所で働いていたけど、子育てのために辞めたんだよな……復帰していないのかな……航一、裁判で会ったりしていないかな……。

“あの” 佐田寅子さんが手伝ってくださるとは」
含みがあること間違いなしだ。寅子のことをちっとも良く思っていない。あのへんな間は、相手を怒らせるか根を上げさせるかしたいのか。男性の法曹関係者の間で寅子が悪く言われていることが伝わる。ただでさえ少ない女性の法曹関係者、寅子は日本初の婦人弁護士で、愛のコンサートを成功させた家庭局のメンバーで、連載も持っていて講演も行う超有名人だ。寅子の周りは基本的に、当時の価値観で “理解がある” といわれる男性たちばかりだから、反感を持っている男性がいることを忘れがちになる。

平成中頃に私が勤めていたA法律事務所の弁護士だって、「〇〇のような案件は簡単だから、女性の弁護士でもできる」と言っちゃうくらいだ。昭和25年の女性法曹者に対する男性法曹者のやっかみやさげすみは、相当なものだったとみえる。

初対面は最悪な二人。息子が寅子のことを良く思っていないことを知っているからこそ、星長官も名前を出さなかったのではないか。“急用” も、寅子と航一を対面させて、二人に何がしかの “気づき” を与えようとする作戦でしょうか?長官!


「虎に翼」 7/1 より

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