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【虎に翼 感想】 7/3 声を上げる者、上げられない者

尊属殺規定に関する最高裁判決、親権問題、生理休暇、セクハラ、教育虐待。今日も盛りだくさんだった。


昭和25年10月

星朋彦前最高裁判所長官の死去により、2代目長官として山本紘作氏が就任している。

そして、尊属殺人(祖父母・両親・おじ・おばなど、親等上、父母と同列以上にある血族(尊属)を殺害すること)に対する合議の場が設けられていた。神保衛彦氏、穂高重親氏も、最高裁判所の判事として名を連ねている。

刑法における尊属殺の量刑は、それ以外の殺人の量刑より重いものとなっている。その規定が憲法に違反するかが争われていた。結果、最高裁判事15人うち、“合憲”13対“違憲”2となった。
穂高判事は、少数派の “違憲” を主張した。ただ、”合憲” を主張した判事たちの中でも、その熱量には差があることが、合議が終わって退室するときの振る舞いに表れているように見えた。

この規定は最終的には削除されることになるが、まだまだ先のことであり、次の世代へ託されたのである。桂場、頼んだぞ。

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寅子より直明のほうが、子どもたちへの説明が上手だ。少年少女保護連盟の活動が活かされている。直明って法学部だったっけ。
寅子も、裁判所では、相談に訪れる人たちに対して丁寧に話しているとは思うけど、子どもにも理解できる平易な言葉で説明するところは、まだ経験不足かもしれない。法曹関係者にありがちな課題だ。頭が良すぎる人ほど、素人が理解可能な説明ができるかが求められる。

昨日の竹もとでの星長官の序文の読み上げは、まさに、長官がこの能力に長けていることを表すシーンだった。個人的には、長官室で寅子と航一だけの前で静かに読み上げてくれたほうが、自分に向けて話してくれているような感じでスッと入ってきたのかなぁとは思っている。長官の真後ろに居た男性だけが反応が薄いように見えたのは、受け止める熱量はそれぞれでよいと言われている気がしていた。私がこういう心ない人間になったのは、長年、法曹資格を持つ者の助手という中途半端な立ち位置で生きてきたから、どのモードで聞けばいいのか分からなくなっているのだと思う。昨日、思いのほか感動できなくて、ちょっと悲しいくらいだった。
これが少数派の意見だとしても、私は隠さず伝えていきたい。

さて……理解力のある直人と直治、そして道男には、寅子の話はちゃんと伝わったようだ。これから彼らは、小さい声だとしても、声を上げる大事さは忘れないと思うよ。優未ちゃんも起きていればよかったな。そしたら、まずお母さんに声を上げる気になったかもしれないのに。


優未との隔たり

84点。たしかに微妙な点数ではある。だが、まず一旦褒めよう。そりゃ寅子だったら、いつももっと高い点数をとれていたのだろうけど。
ネットニュースを見て、慌てて録画を見直した。たしかに寅子が帰ってくる直前に、優未は赤えんぴつを持って何か書いている。そこに直人と直治もいる。母親に関心を持ってもらおうと必死だ。
だけど、もし点数を書き換えていたのだとしたら、答案全体を見れば気が付くはずだ。ざっと見っぽかった寅子は、それにも気づいていないということか。優未、ダブルショック。
でも褒めたら褒めたで、同じことをまた繰り返してしまう。母子の問題は、かなり複雑化してきている。

直明も苛立っている。だけど直明は、いつも寅子に遠慮している。稼いできている者が一番偉いわけではないのに。子どもたちの前で、尊属殺規定の矛盾や憲法第14条の話をしているのに、寅子を “父” とした家制度の縛りから抜け出せていないようだ。
早いとこ寅子の首根っこ捕まえて、言ってあげてほしい。「(寅子は)優未とじゃキラキラしない」の言葉は、かなりの危険信号なんだから。
もし寅子が航一と結婚するとなったとしても、「ママと一緒には行かない」って言われそうな展開だ。優未の寝顔を見ながらでも、調停のあの子のことを考えてしまっている。見たからこそではあるのだが。

かつて、日本初の婦人弁護士の一人である久保田先輩は話していた。
「仕事でも家庭でも満点を求められる」
猪爪家の家族も私たち視聴者も、決して寅子にそれを求めているわけではないはずだ。だけど、優未に100点を求めてしまった寅子に矛盾を感じているのではないか。

皆が結局、一人よがりなところがある。“愛の裁判所” を標榜する多岐川でさえ、寅子にセクハラをして女性を軽んじている。
寅子も、職場では女性としての理不尽さに憤っているが、娘の理不尽な思いには気が付いていない。
声を上げないと気が付くことのできない相手と対峙する徒労感は、相当なものだ。

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月経で調子が悪い中でも、寅子は忙しい。仕事を休むこともなく、昼休みに時間を作って航一と竹もとで待ち合わせをした。
航一が寅子に、義理の母宛にとサインをもらっている。寅子も悩みも打ち明けて、距離を縮めている。梅子はもう気づいているな。
大庭家では梅子が家を出て縁を切ったが、星家の相続問題は円満解決しそうである。


寅子、あらたな担当案件

親権は、取り合うものだけではない。押し付け合うものでもある。
共同親権の問題が上がっている中、こちらの方面から取り上げてくれて良かった。物事は、一義的に決めてはいけない。
人間誰しも、自分のバックボーンや現状置かれている環境を元に、ものを考え、発言する。だから、“そうでない者” に対して気が回らなくなる。
昨日、私たちが星長官の演説を、ある意味強制的に聞かされたことは、結局、法曹関係者だけでなく一般の人たちも、この問題に向き合うフェーズに押し出されたとも言える。

単独親権と共同親権、どちらもリスクがあり、辛い思いをする子どもたちがいる。そして、どのリスクを重要視するかの局面に向き合わされている。
離婚する際の親権について、夫・妻それぞれ主張の選択肢が増えることへの議論はし尽くされているのか。そして、案件が増えるかもしれない家庭裁判所に受け入れる体制があるのか。不安なことが多い。

一義的な議論をしない。今日、尊属殺規定においての最高裁判所の合議の話が出たのが、なんとも奥深いことだ。

梶山夫妻……戦争中は、共に苦難を乗り越えてきたんじゃないのか……『マッサン』を思い出してしまった。明日、そのあたりの事情も教えてくれるかな。


「虎に翼」 7/3 より

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