そうだ、ステーキを食べよう『イップ・マン外伝 マスターZ』

 ステーキが食べたくなる映画でした。
 チョン・ティンチを応援する立場としては白粥と揚げパンこそを食すべきなのかもしれません。しかし身体はステーキを欲する!
 なぜなら、ステーキのためにチャリをとばし、ステーキを食べ損ない、ステーキを皆でたいらげ、一枚のステーキを奪い合い、ステーキが美味しくなる間にげほごほぐぼぼぼげぼっっっ!!!!!!気がつけばそこにステーキ!「牛肉料理なら他にもあるだろ!」て、劇中でも言及されますが、皿の上乗っているのはステーキなのです!
 圧倒的ステーキ!!
 観終わった時、あなたもこう思っていることでしょう。

 「ステーキが……、食べたいな……」

 ステーキ以外の話をしましょう。
 トニー・ジャーが――唐突に表れます!!!
 ほんっと唐突!
 いきなり!
 ラブ・ストーリーは突然に!ラブ・ストーリーちゃうわっ!!!
 最初、なんでこんなに突然に現れるのか理解できませんでした。話が進んでいくうちに、トニー・ジャー出現の法則がなんとなく読めてくるようになってきました。そして、終盤、「そろそろトニー・ジャーが来そうな気がするんだけどなぁ……」と、そわそわしてたら現れたんですが!「そんな手を使うのかよ……」最後まで意表を衝かれるトニー・ジャーでした。
 久々のアクション映画でのミシェル・ヨー。そういえば、ミシェル・ヨーは昔、『詠春拳』というそのものズバリのタイトルの映画で主演していたのですよ。監督ユエン・ウーピン。詠春拳の創始者、詠春役!機会があったらこっちも見てね!若かりし頃のドニー・イェンも出てますよー。
 そのミシェル・ヨーですが、アクションも美貌も貫禄も健在でした。ステーキと突然のトニー・ジャーは頭に突き刺さっていても、ミシェル・ヨーが登場すると「あ、これは香港アクションだった」って、正気に戻ります。何より、マックス・チャンとの応酬が、純粋にオシャレでかっこよかった!ありがとうミシェル姐さん!これからもお元気でミシェル姐さん!
 後回しになってしまったマックス・チャンですが、第一印象、「こんな美人なパパが実在するはずがない」
 良くも悪くも貴公子顔なんですね、マックス・チャン。もっさりした服を着せても全然市井に埋もれた感が無い。うらぶれた感が出ない。髪や服装を乱したところで色気が増すだけで落ちぶれないんです。これはもう、喩えて言うならば京本政樹が市井に埋もれられないのと同じなのでどうしょうもありません。そういう部分、マックス・チャンという素材の難しさを感じさせられます。ウェイタースタイルは似合ってました。先に言及した、ミシェル・ヨーとの、ほとんど手首から先のみのグラスの応酬はとてもオシャレで楽しかった。もっとオシャレにキメた姿も見たかったのですが、ラストバトルはわりとラフに着崩した格好で、アクションのみは華麗でした。
 マックス・チャンは男性としては華奢な部類なのですが、塗り壁のようなデイヴ・バウティスタ相手に、「なるほど!」と納得させる闘いを見せてくれたあたりは拍手を贈っても良いと思います。詠春拳はそもそも、力で劣る女性がいかにして強敵と闘うか、ということで編み出されたもの(という風に映画『詠春拳』では見せていたの)ですから、こういう場面で活きるのですね。柔道じゃないけど、柔よく剛を制す。

 ところで、突然のトニー・ジャーがとても楽しかったので。
 その突然のトニー・ジャーの背後に、仕掛人だか仕事人だかの元締めらしき人物も存在するようなので。
 真面目に人生とか拳法とかに語るのもいいけど、「必殺カンフー仕事人」或いは舞台を現代にして「ザ・ハングマン」みたいなのでもいいから見てみたいですよぅ。お願いユエン・ウーピン!他の監督でもいいけど。

 そんなわけで、ステーキな映画だったんですが、ステーキといえば、昨年、ちょっと縁あってランクの高いステーキをご馳走していただいたのです。高級な肉はナイフの通りから違いました。
 私が自力で「ちょっと贅沢しちゃうぞ!」て、たまに食べるステーキなんて……、靴底です……。
 美味しいステーキが食べたいですねぇ……。

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