もっと語られていい『トールキン 旅のはじまり』

不遇な映画の話をしましょう。
現在公開されていて、そして間もなく公開終了します。多分、今週がラスト。

ま、タイトルに書いた映画がそれなんですけどね。
で、予告がコレ↓
https://www.youtube.com/watch?v=g9uL_SnAR4g
この予告見て「観たい」と思います?
私は思いませんでした。
またアメリカ映画特有の「無駄なラブロマンスで釣る系かよ」て、正直、予告公開段階では萎えました。
トールキン作品のFanだから、義務感で観に行きました。予告で萎えてたので初動が遅れました。
これね……

この映画……

むっちゃイイ映画だったんです!!!!!!!

かいつまんで言うと、「トールキン少年が、『伝説の作家、J・R・R・トールキン』になるまで」の話なんですけど、あのね、あのね、あのね、むちゃくちゃ直球の剛速球でトールキンFanの心臓をぶっ刺しに来ます!
ひねったところは全くありません。すごい直球勝負かけてきてます。まあ、時系列的には、ぶっちゃけると合間合間にWW1での体験が挿入されるので、その辺読み取れないと混乱するかもしれません。なお、WW1体験のシーンは、詳しい人によれば「いや、あの通りだよ」とのことです。塹壕から顔を出すと死が待ち構えている。そして、ところどころに空いた穴に溜まる水の色は、泥水の色ですらない(~が、混ざるからですね)

映画のLotRおよびホビットは、なんかヒロイックに仕上げられていましたけど、原作での合戦シーンは、勇壮なだけでなく、悲壮感があり、かけがえのない友を失う、という描写もありますよね。実は原作はそんなにヒロイックでもない。子供のために書かれたという『ホビットの冒険』でさえ、大きな悲しみを乗り越えなければならないくだりがある。
それは、トールキン自身が「悲しみを知る人」だったからなのかな、と、思わされました……。

ところで、あの、途中で「彼の作品」の中から出てきたみたいな人が登場したのだけど、あれは脚色!?

前述の通り、興行成績は非常に悲惨な状況で、デキの良さに対して不遇すぎる作品です。
興行が振るわないだけでなく、この映画について語る声がまるで見かけられないのです。
LotRは話題作だった記憶があるんだけどなぁ!ホビットもそれなり話題にされてた気がするんだけどなぁ!?みんな、原作者には興味無いの?トールキン作品の読者も、トールキン自身についてはどうでもいいと思ってるの?

観に行ってよ!!!!!
義務感からでもいいから行けってば!!!!!!

トールキンの伝記映画としても素晴らしいし、単純に、「その時代を描いた映画」としても素晴らしいんです!
トールキンはもちろん、ファンタジー作家ですから、ファンタジックな描写も挿入されるのですが、幻想と現実が交差する瞬間のむごいほどの重たさ!
少年であり、青年であり、大人へと成長していくトールキンは、単に「物語を書いた人」ではなく、世界が血を流した時代に生きた一人の人間でした。

ラストシーン、私は感極まって泣きました。
(お涙頂戴映画ではありません。念の為)

上映終了まであと数日ですが、「行けたら」ではなく、「無理してでも」観に行ってください。
上映延長や拡大なんて高望みはしてないんです。ただ、観るべき人は確実にある映画だし、願わくは、観るべき人全員に鑑賞されてほしいのです。

『トールキン 旅のはじまり』
まさしく「旅のはじまり」に至る物語でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?