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迷路遊びとツクールのダンジョン

私が御幼少の頃に或る1冊の本を夢中で遊んでおりました。
それがこちら…

めいろあそび


内容はこの繪本の表紙に描かれている3人のキャラクター(確か「ぴょこたん」「みんち」「けろたん」だったと思います…)が色々な迷路やなぞなぞ等に挑戰していく一種の冒險譚なのでありますが、實はこう云う迷路のパズルが昔から大好きな性分でして、この本もボロボロになる迄何度も夢中で遊んでおりました。
あの頃にとっての真夜中…、21時過ぎに親からもう寝なさいと言われる頃の時間までずっと夢中でこの3人と一緒に迷路の中を冒險していたのを憶えています。

最後の迷路をクリアすると、この3人がこちらに向かって「またね」と言ってお別れする繪で締めくゝられるのですが、この終わり方が好きでした。
「さようなら」ではなく「またね」と言ってお別れするのが良いのです。

だから何度でも會いたくなる…。
最後に遊んだのはいつの頃か…、もうずっと昔で残念乍ら具体的な日時は憶えていないのですが、この3人と最後の「またね」をしてからもう幾十年…。
この本の影響か今でもこうした迷路を遊ぶのは大好きなのでありまして、見知らぬ街を彷徨う事さえも樂しいと思っているのでございます。

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これは数年前に友人と今は亡き東武線の快速電車(安易に特急を使わないトコロが良いのです)で栃木縣某所を訪れた際に樂しんだ巨大迷路ですが、地圖も無い場所を手探りで考えながら進んで行くのは私にとってワクワクと心躍る大冒險なのです。


…そんな思い入れのある「迷路」ですが、今では私も度々それを作る側になってしまっていたのです。

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趣味で密かに作り續けているRPGツクールですが、時代劇である私の作品にも一丁前に「ダンジョン」が存在します。
このダンジョンと云うやつは當然プレイヤーにとって關門とも言うべきで容易に進めない様に出來ているのが一般的なのでありますが、私の場合も同様なのです。

但し友人に遊ばせたところ、私の作るダンジョンは色々に面倒である様です。
詳しく所見を伺うと「單に入り組んでいて迷うのではなく、考えないと進めない」との事であります。
折角洞窟やら何やらを探險するのですから「そこはもう一寸色々考え乍らやろうよ」と云うのが私の考え方なのです。
従って、どこのダンジョンでも單に「行き止まりの多い通路」を通り抜けるだけではなく、構造や仕掛けを考え乍ら進まなければならないのが多いのです。

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主人公、不用意に滝に近附いて滑落せる之圖

基本的に意地惡な仕掛けが多く、イマドキの人達が最も忌み嫌う「面倒」なのです。
マップなんて歩き乍ら方眼紙に書いていた世代ですから、現代っ子にとって親切である筈がないのです。
最初から便利機能満載の地圖が用意されているなんてツマラナイのです。
つまり、注意深く進まない方が惡いのです。

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先の画像で「火種が使い物にならなくなった」とありますが、ご覧の通り洞窟の中は一部例外を除き暗いのです。
明るくするには「火種」と云うアイテムが必要で常に幾つか持っておかないとこの通りです。
最初期のドラクエもそうでしたが、周りが見えない方が迷路は樂しいのだと思います。
不必要に難易度を上げるだけとの意見も有りましたが、そもそも私はそこまで親切ではありません。
それでもシャドウゲイトの様に明かりが無くなったら即理不尽な死を迎える様な事が無いのは私の数少ない良心です。

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可燃性の天然ガスが湧き出ている洞窟と云う厄介な場所も存在します。
こうなると火種が使えないので余計に厄介です(持って行くと引火して大ダメージを受けます)
こう云うプレイヤーを困らせる事が好きなのです。

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何せ危險な洞窟へ行くのですから準備が必要なのは言う迄もありません。
町で情報を聞き、小間物屋で事前に必要な物を賈い揃えないと攻略は困難なのです。
元來、RPGとはそう云うものだったと思います。

現實によく輕装で山や洞窟で遭難するあまり頭の宜しくない連中が年に数人はニュースで取り上げられますが、そう云う事なのです。
なにせ「ファンタジー」ではないものですから御容赦願っております。

またダンジョンの構造も色々にこちらを惑わす作りが多く「行き止まりに當たらない様に進む」だけと云う訳にはいかないものが多い様です。

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山道等はあちこち木陰に隠れてゐたりします。
しかも木陰の中に入ると敵との遭遇率が上がるおまけ附き。
當然、主人公の周囲だけ視界が開けるなんて氣の利いたシステムはございません。
現實でも不用意に林道を外れたら、元居た場所に戻ってこられる様にしておかないと簡單に道に迷います。

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騙し繪の様な地形を進んでいきます。
一般的に2DのRPGと云うのは画面上方が高台で下に行く程標高が低くなる様に描かれておりますが、そんなのお構い無しです。
あちこち凸凹しておりますので自分が今何段目の高さに居るか把握しておかないと脱出する事は出來ません。
地形的に矛盾する箇所はさっきの「木陰」で隠すと云う姑息な手を使っております。

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それでも時にはこうした景色も拝める様にしております。
なにせマップを構成する部品が1つ當り16×16マスのドット繪で出來ておりますので、画像としては極めてチープです。
あまりこう云う状況が續くのも面白くないので時には遠景で旅を樂しませます。
ダンジョンと雖も「冒險の旅」なのですから、その辺の雰囲氣はとても大切だと思っております。
因みに画像は富士山周辺の峠を越えている場面であります。

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地形を把握するのと同じ様に建造物の中では階下・階上の間取りを頭に入れておく必要が有る場面もあります。
画像は代官所の天井裏なのですが、下の階の間取りと梁組みを整理しておかないと「曲者だ!出会え出会えー!!」になってしまいます。
所々小屋束(屋根を支える柱)が邪魔しているので思う様に進めないのが特徴です。
同じ様なシチュエーションで屋敷の縁の下も登場します。
…時代劇ですからね、お馴染みなのです。
こう見えても住宅に關わる仕事をしているので小屋梁や足場の描写が細かいのです。

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敵に見つからない様に身を隠し乍ら進んで行く事も有ります。
しかも初期のメタルギアの様に敵の視界が直線上に限られている訳ではないので一寸した事で簡單に「ん!誰だ!?」になってしまいます。

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屋敷も屋敷で時折火事になったりします。
當然制限時間附きの脱出なのですが、逃げ遅れた人を助けたり屋敷に残された重要なアイテムを回収したりと脱出以外で何かと忙しい事が多いのです。
炎は大小2種類で大きな炎は触れると大ダメージを受けますが、小さな炎は水をかける事で消せます。
この「水を持ち運ぶにはどうしたら良いか」が鍵で、屋敷の風呂場の水を竹筒に入れておくと云う事に気附くか否かが攻略の分かれ道です。
しかも水は有限なので使い過ぎると脱出出來なくなります。
何事も状況判断が大事なのです。

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制限時間附きのイベントとして多いのはこの様に「水中を進むダンジョン」なのであります。
画像は先程出てきた金山の水没した坑道内を進む之圖であります。

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しかも水底を歩くのではなく、ちゃんと泳いで行きます。ご丁寧に泡まで表現しております。
ここでは潜水と泳ぎを會得している専用のキャラクターを仲間にしていないと進めないのでありますが、それでも息が續くのはわずかな時間しかありません。
途中で空氣の有る場所を探して息継ぎをしないと…

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この通り残り30秒を切るとBGMが一変します。
緊急回避として空の竹筒を持っていると簡易酸素ボンベとして少しだけ残り時間が増えますが…

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それでも間に合わないと…

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ぷかぁ~…

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そしてお馴染みのゲームオーバーです。

…と、こんな感じで日々厭らしいダンジョンを作っているのでありますが、こうしたところでかつて夢中になって冒險したあの繪本の存在があるのかもしれません。
あの本に出てくる迷路も橋やお城、蜘蛛の巣と色々な場所を通っていきました。
あのワクワクした感じが、もしかしたらこう云う形で顕れてしまったのかもしれません。

否、もしかしたら、あの頃に一緒に冒險して「またね」と言って別れたあの3人組は今でも氣附かないところで時々會いにきてくれていたのかもしれません…。


よく面倒だからクソゲー扱いされておりますが、私から見ればイマドキのゲームが優遇され過ぎているのだと思っております。

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少しは自分で考えて行動しましょう。

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