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ナギと一緒に暮らし始めました。

一人暮らしを始めたら、部屋に花を飾ろうとずっと前から心に決めていた。

花がある暮らしは文字通り華やかで、心のゆとりを感じられる。
部屋の中が明るくなる。

どんな花を飾ろうか。花瓶を買ってみようか。
一輪挿しの方が可愛らしくて良いのではないか。
部屋に花がある毎日を考えるだけで、ワクワクする気持ちが止まらなかった。


ようやく始めた念願の一人暮らし。
家具や家電を一通り揃え、ある程度出費が落ち着いた頃、私の部屋にはまだ花はなかった。

地震が来て花瓶が倒れて割れたり、水がこぼれたりするのが嫌だなぁと、今まで全く気にしていなかったことが気になってしまい、購入に至っていなかったのだった。


でも、部屋に何か飾りたい。
花とか、そういう自然の何か。
そう思っていた時、雑貨屋さんに立ち寄った私の目に、観葉植物が飛び込んできた。

花ではないけど、観葉植物もいいかもしれない。
花瓶に刺さった花は綺麗だけれど、あっという間に儚く散ってしまう。
鉢に植えられた花も、一度咲けばやがて枯れてしまう。
でも鉢に植えられた植物は、水と光を与えればどんどん成長していく。
この先長く一緒に暮らしていけるのは、そういう植物の方ではないか。

ここで、私の頭の中に観葉植物という選択肢が浮かび上がった。


それからは買い物に行くたびに観葉植物を物色する日々。
これまで何気なく見ていた植物たちも、よくよく見ると葉や幹の形、色合い、背の高さなどなど種類が多すぎてめちゃくちゃ迷う。

あとでじっくり検討しようと、気になった種類をスマホのメモに打ち込んでいた。


そんなある日。
ショッピングモールに行った際、いつものように観葉植物パトロールへと向かった。
ガジュマル、パキラなど他のお店で見たのと同じような、おそらく観葉植物界ではメジャーな種類のラインナップが並ぶ。

しかし、違う棚をふと見ると、これまでに私が出会ったことのなかった種類の植物が目にとまった。


それが「ナギ(梛)」だった。


ほとんど一目惚れだった。
白い鉢に植えられたまだ小さなナギはとても可愛らしく、葉のかたちも私好み。
何本かまとまって生えている細長い幹も、主張が強すぎず、部屋の風景に上手く溶け込んでくれるような気がした。

可愛い。
というか、まず「ナギ」という名前からしてめちゃくちゃ可愛い。

一気に購入候補のトップに躍り出たナギをお迎えする最大の決め手となったのは、そこに掛けられていた札に書かれたこの言葉だった。

「幸せを呼ぶ ナギ」

なんでもナギは葉が裂けにくいことから、「縁が切れない」縁起の良い木とされ、縁結びの木とも呼ばれているらしい。

占いとか開運とか、こういうのにめっぽう弱い私は、ここで完全にナギと一緒に暮らすことを決めた。


こうして始まったナギとの生活は、今までよりなんだか少し楽しい気がする。


心の中で「ナギちゃん」なんて呼んじゃって、まるで家族が増えたみたいだ。

そういえば、母が昔ガジュマルを買ってきたことがあったが、母はそれを「ガジュ子」と呼んで世話していた。
植物を愛称で呼んで育てる家系なのかもしれない。


誰かが育てている花を枯らしてしまったという話を聞いたら、今までは「そっか~…残念だね…」ぐらいの感想しか抱いていなかったのだが、
いざ自分が育て始めたら、まじで、絶対に枯らしたくない。

足りないと思われないようにしっかり水やりしたいし、晴れた日にはちゃんと太陽の光を浴びてほしい。
一度、葉っぱに白っぽい模様が出て、めちゃくちゃ焦ってネットで調べたりもした。(拭いたら取れました。)


部屋の隅でちょこんと佇んでいる姿が可愛くて、新しい葉が出てくることが愛しくて、帰ってきたら思わず「ただいま」って言いたくなっちゃう。
こんな気持ちになるなんて、一人暮らしを始めなければ、ナギに出会わなければ、きっと私はまだ知らなかっただろう。

私とナギとの生活は、まだまだ始まったばかり。
ころからも、ナギと一緒に成長していきたい。



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