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日常の延長線上で、ゆるやかに交わる。

2020年2月23日、日曜日、9時23分から走った。

この日は元々、3月1日に開催予定だった三浦国際市民マラソンに向けての、最後の調整日として考えていた。

しかし、このご時世、大会は中止となった。

様々なイベントが中止になるこのタイミングで、我々ランナーは何を学び、何を自分の日常へ持ち帰るべきなのだろう?

・・・

3月8日に開催される「名古屋ウィメンズマラソン2020」は、オンラインマラソンを実施するという。

今回、名古屋に集まってご参加いただくことのできないランナーの皆さまと少しでもその感動を体験いただくべく、「オンライン ウィメンズマラソン」を実施いたします。「オンライン ウィメンズマラソン」は、世界中どこの場所からも参加できます。42.195kmを完走したランナーには2020年大会オリジナルペンダントほか完走賞とオンライン版完走証を送付いたします。
http://womens-marathon.nagoya/news/20200220-1700/

私は去年、おそらくほぼ同じ形態で開催されたオンラインマラソン(lululemon SeaWheeze Virtual Half Marathon)に参加した。
その経験を踏まえて注目しているポイントは、一般ランナーのモチベーションをいかに補助するのか、という点だ。

ランナーは基本的にこの日のために練習している想定だとしても、ランナー自身の力で42.195km走破するというのは、なかなかハードルが高い。

ここでランナーに問われる能力は、いかに自分をもてなすか、という力だと思う。スタートとゴールをどこに設定するのか、どのような道を走るのか、中間地点でいかに気分を切り替えるのか。

一般的なマラソン…いつもと違う場所で、様々な人達の手によって作られ支えられている、ランナーがもてなされる形態のマラソンを「ハレ」のランとするならば、オンラインマラソンは「ハレ」と「ケ」の中間に位置する。
もちろん自力で「ハレ」を演出することもできるが、一人で走る分、当然リスクも伴う。
もし、知らない場所を一人で走っている最中に足の痛みを感じたとして、42.195km間でモチベーションをキープできるかというと、あまり自信はない。
かといって、日常のランニング・・・「ケ」のランとあまりに近しい形態をとってしまっては、おそらくこれもまたモチベーションの維持が難しい。皇居8周は流石に飽きるだろう。

42.195kmを走るというルールによって、ランナー達は半強制的に日常の外側に接続される。名古屋ウィメンズマラソンならではの、ランナーを楽しませるためのサポートがどうおこなわれるのか、楽しみだ。
(名古屋ウィメンズには「おもてなしタキシード隊」というものが存在することを考慮すると、出演者が全員超"イケボ"なラジオが聞けたりして…?)

去年、PLANETS CLUB ランニング部では、「オンライン・ラン」を複数回開催した。距離や速度などの制限は設けず、目的だけ共有し各々が走る、という形態。(例えば、飲んだことのないドリンクを飲む、令和と書かれた何かを見つける、等)
初心者のランナーでも、日常のランニングから半歩はみ出して新しい何かに出会えるよう設計したが、なかなか好評だった。
こういった目的の設定も、モチベーションを高めるためのルールとして役立つだろう。

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さて、2020年2月23日に話を戻そう。
この日、PLANETS CLUBランニング部内で、ちょっとしたイベントが開催された。共通の給水ポイントを設定し、そこで合流しよう、というオフ会だ。

5人のメンバーがとあるセブン-イレブンへ向かって走った。新青梅街道沿いに無数に存在するコンビニの、1店舗へ。それも、各々が自分のスタート地点から。

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10時前の、住宅街や商店街を抜けていく。知らない街の、知らない人たちの日常を縫って移動する感覚。

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新青梅街道沿いは、個性豊かな店や農園などもあり、景色としては非常に楽しい光景が広がっていた。
オープン前の薬局には、列ができていた。マスクの入荷が控えているのだろうか。

そして、セブン-イレブンで、クラブメンバーと合流した。
ありふれたコンビニの前にメンバーがいて、迎えてくれた瞬間は、これまでランニングであまり味わったことのない感覚を覚えた。

合流した瞬間、誰が何キロ走ったとか、どれぐらいのスピードで走ったとか、そういった情報は一切分からない。でも、迎えられる、というあたたかさ。

この日我々が体験したのは、とても豊かな「ケ」のランニングだ。
それぞれの日常の延長線上で、ゆるやかに交わり、また別々に走って帰路につく。合流していた時間は10分程度だったが、非常に心地の良い距離感だった。
(何より素晴らしいのが、この企画を立ち上げてくれたメンバーは、まだ走り始めて半年程度であること。)

「ハレ」のランニングであるマラソン等のイベントが、残念ながら中止になってしまっている今、いかに豊かな「ケ」のランを発見するか。
電車の中で咳をすることすら躊躇ってしまう世間の空気の中で、社会との距離を調節しながら走ることを楽しむ・・・そのための新しいヒントが得られれば、きっと、今後も走り続けるための役に立つだろう。

この記事より、PLANETS CLUB ランニング部による共同運営マガジンがスタートする。このマガジンもまた、各々の日常の延長線上で、ゆるやかにつながるような距離感で運営していきたい。

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(余談)
帰り際に見つけた、剥がれたソール。右奥の白い塊はiPhoneのイヤホン。
走りながらこういった誰かの日常の軌跡に遭遇するのが、私としてはたまらなく楽しみである。

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