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勝手にギャラクシー ~いまグレショーが熱い~

最近、あるテレビ番組にはまっている。友人たちにあの手この手で勧めまくった挙句、勢いに任せてnoteのアカウントまで作ってしまった。これは「とにかくグレショーはいいぞ」と言いたいだけのnoteです。

ステージの裏側が見られる番組

「THE GREATEST SHOW-NEN」、通称グレショーは土曜深夜のバラエティ番組だ。公式サイトによると、コンセプトは”本気の舞台”。関西ジャニーズJr.のAぇ! groupがさまざまな舞台演出家・脚本家とコラボして、およそ1か月に1本のペースで大阪ABCホールでの新作舞台に挑戦する様子を、裏側(稽古)と表側(本番)の映像を織り交ぜて構成している。

放送は約20分×だいたい5週、関西ローカル番組だけど2021年4月からTVerとGYAOでも配信されるようになった。このグレショーがものすごく、良い。とにかく熱い。

グレショーの良さの中でも特に大きいのは、演劇作品ができあがる過程が見られるところだ。数あるエンタテインメントの中でも、演劇って興味の薄い人にとってはなかなかハードルの高い分野だと思う。興味を持っている人でも、完成された舞台を観る機会はあっても、その過程を知る機会はあんまりないだろう。

グレショーは演出家との顔合わせから始まり、配役発表、読み合わせ、立ち稽古とじっくり裏側を見せてくれる。演出家によって方針や指導方法は全然違うので、この指導の部分だけでもすごく面白くて勉強になる。アイドルのAぇ! groupは演出家から厳しいダメ出しをされることも多い。でも、プロの俳優じゃないからこそ、指導を受けて変化していく様子もわかりやすいし、視聴者としても感情移入しやすい。

グレショー版「銀河鉄道の夜」

そんなグレショーで2021年7月現在放送されているのが、劇団鹿殺しとコラボする「銀河鉄道の夜」だ。もちろん、今までの作品もそれぞれに良かったが、今回はAぇ! groupと劇団や演目がぴったりはまっている感があり、本当に素晴らしい。

宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」は演劇の題材としても人気で、これまでさまざまな形の作品が生まれてきた。今回のグレショー版では演出家の菜月チョビさんが大胆にアレンジし、歌やダンスの比重が大きいものになっている。

演じるのは、Aぇ! groupの6名と劇団鹿殺しの俳優2名からなる劇団タンクトップス。衣装は基本的に、おそろいの白のタンクトップと黒のホットパンツ、サスペンダー、蝶ネクタイに裸足。全力のおふざけとメタなセリフ、直接的なグロテスクさも含む演出で、そうかと思えば急に原作の「銀河鉄道の夜」に忠実になる部分もあり、見ている側の感情は忙しい。

7月3日に放送された回では、川に落ちたザネリをカンパネルラが救うシーンを、男闘呼組の「TIME ZONE」を歌って踊ることで表現している。…文字で読んでも何がなんだかさっぱりわからないと思うが、実際に番組を見ても「TIME ZONE」は唐突だし、セリフは非常に説明的だ。失礼ながら、全員の演技がものすごくうまいわけでもないと思う。だけど、劇団タンクトップスのパフォーマンスには、有無を言わせない迫力と、何度でも見返したくなる中毒性がある。

本気の舞台

ジャニーズタレントのAぇ! groupにとって、歌やダンスは本職だ。でも、菜月チョビさんは、上手な歌やダンスの単なる発表ではなく、各自のこれまでの人生やプロ意識を乗せたパフォーマンスを求める。番組で放送される裏側はほんの一部だけど、稽古と本番では彼らの表情が別人のように違う。菜月チョビさんが稽古で言われていた言葉を借りるなら、「みなぎっている」。研ぎ澄まされ、自信に満ちている。

劇団タンクトップスはグレショーのために結成された劇団だから、この日の「銀河鉄道の夜」が旗揚げ解散公演になる。1度きりの上演のために100時間を超える稽古を重ね、一流のスタッフさんの力を借りる(今回の振付は梅棒の伊藤今人さん、劇中音楽はタテタカコさん)なんて、贅沢な番組だと思う。そして、こんな見方は邪道かもしれないけど、1度きりの上演にそこまで情熱を傾けられる劇団タンクトップスに、まぶしい青春を感じる。

もちろん、グレショーにも限界はある。ひとつのお芝居を約20分×5週のテレビ番組にしているから、本編はぶつ切りになるし、演出家にとっても演者にとっても不本意な編集やカットがあり得るだろう。そもそも、演劇を楽しむなら劇場に行ってこそだという意見ももっともだ。でも、このコロナ禍において、自宅で気軽に演劇の楽しさを味見できるグレショーは貴重な番組だと思う。勝手にギャラクシー賞をあげたいほどに。

ギャラクシー賞は難しくても、いつか劇団タンクトップスの「銀河鉄道の夜」を劇場で観てみたいと思うし、グレショーの演劇部分がノーカットで円盤化されるならすぐに買う。さらに、それが無理でも、番組を見る人がひとりでも増えたらとてもうれしい。演劇はそのとき・その場にいることが重要な芸術だけど、グレショーは配信期間中なら好きなときに好きな場所で、しかも無料で楽しめるのが強みだ。

(GYAOはこちらから)


最後にもう1度、グレショーはいいぞ。

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