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YouTube「良いニュースが悪いニュースと受け止められる局面が到来 - Takao Hirose」より

今日は株式市場で良いニュースが悪いニュースと受け止められる局面がそろそろ到来するんじゃないかという話をしたいと思います。
株式の投資家というのは天邪鬼な人が多いんだけれども、普通良いニュースは良いニュースですよね。
でも経済の局面に応じて悪いニュースでもそれがグッドニュースだというふうに強引に解釈されるケースもあります。
逆に良いニュースでもそれは悪いニュースだというふうに解釈する場合もあるんですよね。
一例を示せば、リーマンショックの後、2009年のころですよね。
悪いニュースが出れば出るほどFRBが金融緩和をしなきゃいけないんで、これはグッドニュースなんだというふうに逆の解釈をされました。
翻って今日の状況を見るとですね、ニュースのフローはよくなってると思うんですよね。
新型コロナのワクチンも完成しましたし、そのワクチンの注射が今どんどん捗ってます。
経済は再開してます。
ということで、経済は明るさを取り戻してるんですけれども、そういうふうに良いニュースが多くなってくると、逆にそろそろFRBはこれまで実施してきた支援策を手じまう必要があるんじゃないかというふうに考える投資家が増えてくるのではないかと思います。
つまり、良いニュースは悪いニュースになってしまうわけですよね。
通常こういう局面では、株式の投資は非常に難しいです。
具体的に今株式の投資家が心配していることはテーパリングですよね。
テーパリングというのが何かというと現在行われている債権買い入れプログラム、これは毎月1200億ドルという規模なんですけれども、その金額をだんだん縮小することをテーパリングというふうに言います。
ちょっとチャートをお見せします。
これは連邦準備制度、つまりFederal Reserve Bank (フェデラル・リザーブ・ バンク) の総資産、つまりバランスシートのチャートですよね。
直近の数字は45度の角度で右肩上がりに上昇してますけれども、これが毎月財務省証券を800億ドル、住宅ローン証券を400億ドル、合計1200億ドル買い増しているというチャートになります。
テーパリングというのは、そのペースを少し遅くしてやるということを指すわけですよね。
前回テーパリングの話題が出たのは、2013年5月だったと思いますけれども、その時はベン・バーナンキ議長でした。
債権の買い入れプログラムをちょっと縮小したいというふうにほのめかしたら、長期金利が上昇して、株式市場もギクシャクしたということですよね。
このように金利政策というのは緩和から引き締めへと転じる瞬間というのは、一番手綱さばきが難しい、投資家も難しいということですよね。
じゃあ、今回いつテーパリングが発表されるのかということなんですけれども、僕はしばらくテーパリングはないというふうに考えてます。
その理由は、FRBが去年「新金利政策決定枠組」というフレームワークを発表しました。
そこではインフレが2%を超えてもあわてて利上げすることはせず、しばらく様子を見るということが決められたんですよね。
一定期間で平均してみて、だいたいインフレ率が2%前後に収まっているのであれば、それで良しとしようと、それが新方針です。
だから瞬間的にインフレが2%を超えても、あたふたする必要は全然ないということですよね。
FRBがこういうリラックスした態度に変更した理由なんですけれども、例えば黒人とかヒスパニックとか、そういうマイノリティの人たちですよね。
社会的弱者というふうに言ってもいいと思いますけれども、その人たちの雇用はだいたい景気拡大局面の後半、最終局面そういった局面で急に伸びやすいということが知られてます。
そうすると今格差社会ということが言われているわけですけれども、その格差を是正するためには、なるべくFRBが粘って最後の最後まで利上げしないほうがいいんじゃないかという考えが、FRBのメンバーの中にだいぶ広まっているということですよね。
ジェローム・パウエルFRB議長もそういう考えの人です。
それから次期、ひょっとしたらもしパウエルが再選されないんであればね、次期FRB議長に最右翼の候補はラエル・ブレイナード理事と呼ばれる女性の方がいるんですけれども、彼女になるんじゃないかという下馬評がありますけれども、彼女もそういう意見です。
それから地方連銀で一番パワフルな連銀は、ニューヨークを除けばね、サンフランシスコ連銀になるんですけれど、サンフランシスコ連銀のメアリーデイリー総裁なんかもそういう考え方です。
なので、FRBの中でね、そういうふうになるべく粘ろうとそういう意見が今非常に強くなっているいうことなんですよね。
足元のインフレ率なんですけれども、これがチャートになりますけれども、直近では前年同期比2.6%になってますよね。
だからFRBのターゲットである2%をすでに上回ってます。
そういうふうになっている理由というのは2つあって、1つは去年新型コロナが出たときに、物価が沈静化したわけですけども、その低いベースから始まっているということで前年比較が容易であること、これが1つ目の理由。
2つ目の理由は、新型コロナワクチンの接種の進捗で今経済が再開してるんですけれども、それがあまりに急に起こってるんで経済のあちこちにボトルネックを生じているということだと思うんですよね。
これら2つの特殊要因で、物価は今2%のターゲットを超えてオーバーシュートしてると、しかしそのどちらも一過性の問題なんで、しばらくすればまた物価は2%よりも低い水準に自然に下がってくるだろうと、だから何もやる必要はないというのが今のFRBの考え方ですよね。
それはそういうふうに説明されれば、なるほどなというふうに思うんですけれど、実際に説明されるのと経済指標が出てきてその数字が強かったときのインパクトというのはまた別だと思うんですよね。
明日雇用統計ありますけれども、多分非農業部門雇用者数は、97万人がコンセンサスですかね。
なので、ひょっとしたらまた今回も100万人を超えるかもしれないということで、失業率も5.7%?ということで、いよいよ5%台に入ってくるということで、経済強いというデータが出てくると思うんですよね。
そのときに債券市場、そして株式市場がジタバタせずにね、そのニュースを冷静に受け止められるかどうか、ひょっとしたら経済強すぎるということで、嫌気して債権が売られるかもしれない、そういうリスクがあると思います。

実際の4月の雇用統計の結果は次のとおりでした。

米労働省が7日発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比26万6000人増と、市場予想の97万8000人増を大幅に下回る伸びとなった。
4月の失業率は6.1%と、3月の6.0%から上昇した。
7日の米株式相場は続伸し、S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均は最高値を更新した。4月の米雇用統計が予想外に弱かったことを受けて、インフレ上昇や刺激策縮小に関する懸念が和らいだ。

というわけで、FRBの金融政策引き締めの懸念は弱まり、株価も高値を更新しています。
景気が予想ほど回復していない悪いニュースですが、株式市場にとっては良いニュースでした。

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