わたしの仕事

私は医療従事者です。

治験コーディネーター(CRC)という仕事をしています。

なんやねんそれ、って人多いかと思いますので、今日はあまり知られていないであろう臨床開発の仕事を書いてみようと思います。

治験ってなに?

病院に行って貰ってくる薬、検査や治療に使う医療機器、これらは基本的に治験という段階を経て世に出てきます。

医薬品開発の流れを代表して書くと、
1.薬のもとになりそう(ある病気に効きそう)な化合物を見つける・作る
2.細胞を使用した実験や動物実験で毒性や効果を確認する(前臨床段階と呼びます)
3.健康な成人男性を対象に投与し、安全性(重大な副作用が起こらないか、どのような副作用が起こるか)と薬理動態(体に入ってから出るまでどのような流れを辿るか)、血中薬物濃度(血液や体内の薬の濃度のこと)などを確認する(第1相試験)
4.第1相試験で重大な副作用がなく使用できることが確認できたら、少数の患者さんに協力してもらって効果を検証する。どの程度の用量が良いか、食事の影響や他の薬の影響を受けるかどうかなどの確認もこの段階で実施する(第2相試験)
5.より多くの患者さんに協力してもらって既存の治療と同程度またはそれより優れているかを検証する(第3相試験)
6.第3相試験までで効果と安全性が確認できたら当局(医薬品医療機器総合機構:PMDA)に承認申請し、審査される
7.承認されると薬価(薬の価格)が決まり発売となる
この3〜5の段階を治験と言います。
今話題の新型コロナの薬も治験の段階のものが複数あります。

治験コーディネーター(CRC)って何をしているの?

治験を行なっている病院で、円滑に治験が行われるようサポートをしています。
治験はスケジュールや、やるべき検査、薬の管理、製薬会社へのデータ報告等様々な決まりの中で行われています。
多忙な医師がそれらすべてを管理することはなかなか困難であるため、サポートするのが私たちの仕事です。

主に
・治験に参加している患者さんのスケジュール管理や問い合わせ窓口・心身の負担に対するケア
・製薬会社の担当者さんとお医者さんの間に入っての様々な調整
・データ入力
・倫理委員会(IRBと呼んでいます)提出書類作成補助
などを行なっています。
特に患者さんのサポートが私たちの仕事の主軸になります。

治験コーディネーター(CRC)ってどんな人がやっているの?

様々な職種の人が働いています。
看護師、薬剤師、臨床検査技師、臨床心理士、管理栄養士、事務
など背景は様々です。
ちなみに私は事務出身です。
薬科大の4年制を卒業して、CRCを病院に派遣する会社で2.5年働いて、病院の職員として働くために転職して今に至ります。

事務職でもCRCってできるんです。
できるのですが…
カルテが読めること、病気に関する知識があること、薬や検査に対する知識、治験に関する決まり(薬機法の中で定められています)に対する知識、医療費に関する知識、統計に関する知識、倫理的な知識や配慮
など色々なことが求められる仕事でもあります。

お医者さんとの会話についていけないといけないので、めちゃめちゃ勉強します。
最初2〜3年くらいは知識不足で全然ついていけなくて辛かった。
でも、お医者さんに聞くと色々なことを教えてくれます。餅は餅屋です。
わからないことはプロに聞くに限る。

治験コーディネーター(CRC)のやりがいってなに?

一番は患者さん1人1人とじっくり関われること、その次に新薬や最新の治療を提供する最前線にいられること。

病院で働いていると、看護、検査、リハビリ、受付など各場所で断片的にしか患者さんと関われないのですが、治験の仕事はそのすべてで関わることができます。
もちろん時間的な限界はあるけど、待合室の椅子に腰を下ろしてゆっくり患者さんと話をすることもできます。
病気に対する思い、生い立ち、家族のこと、どんな生き方をしたいか、どんな死に方をしたいか、色々な話をじっくりと、時には家族も交えて話をすることができます。

私は患者さんと言うより一人の人間として考えるようにしています。病気である以前に一人の人間だから。
そしてその人と出会って関係を構築して、その人の人生を知ることができる、考えに触れることができる、その瞬間がとても愛おしくて有り難くて、心が温まる瞬間。
その瞬間が好きでこの仕事をしています。

病院って大変じゃないの?

忙しいです。
薄給で休みも少なくて正直激務です。
それは今回の新興感染症騒ぎの前から変わらないこと。
それを超えるやりがいを感じるから頑張れるんだけどね。

医療従事者として発信したいこと

実は私はこの仕事以外にも、院内の医療安全委員と感染対策委員でもあります。
病院の安全の話と、正しい感染対策の話はまた近々別の機会に書きたいと思っています。

ということで今日はここまで。
あまり知られていないこの仕事を1人でも多くの人に知ってもらえますように。

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