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日本人の幸福感を考える

幸福度を論じる際に、幸福を左右すると思われる様々な指標(所得、生活環境、災害など)を総合して判定する方法がよく用いられます。
しかしこの方法では、どの指標を用いるのか、重きの置き方でいくらでも恣意的になります。
主観的な幸福度そのものを重視した方が有用なこともあります。

「OECDのガイドライン」では主観的な幸福度の測定方法として以下の3つを区別しています。
①生活評価(生活満足度など生活の全体評価)
②感情(喜怒哀楽など、機嫌の良し悪し)
③ユーダイモニア(Eudaimonia)(人生の意味や目的、生きがい)

①では0〜10までを段階別に回答した「生活満足度」のデータを用います。
②では、回答者の感情状態から作成した「ネガティブ感情度」のデータを掲げ、分析を行います。
③には国際比較できる高品質データがまだありません。

世界価値観調査の「幸福感」と、OECD幸福度白書が掲載している「ネガティブ感情度」、両方のデータで幸福度の各国比較を試みます。

世界価値観調査の「幸福感」は、「幸福かどうか」の設問に「非常に幸せ」及び「やや幸せ」と答えた割合の合計です。
※世界価値観調査の選択肢は、(1)非常に幸せ、(2)やや幸せ、(3)あまり幸せでない、(4)全く幸せでない、です。「分からない・無回答」を含めた総回答数に占める(1)と(2)の割合の合計を「幸福感」としています。

対象国はOECD38ヶ国のうち31ヶ国。世界価値観調査の「幸福かどうか」と、ギャラップ世界調査から算出した「ネガティブ感情度」の両方のデータがある国です。
OECD(経済協力開発機構)はヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する、いわゆる先進国クラブと称される国際機関です。
生活レベルが一定水準以上の先進国だけで比較したい場合、OECD諸国のランキングがよく用いられます。統一基準で収集されたデータベースが整備されていて、相互比較の信憑性が高いです。
※最近はOECDの新規加盟国が増え、ラテンアメリカや東欧圏に属する必ずしも先進国とは言えない国々も含まれるようになっているので、分析上の配慮が必要です。

結果、日本の幸福感は31ヶ国中20位でした。(2022年に公開された世界幸福度調査では146ヶ国中54位。)

ネガティブ感情度とは、調査日前日の感情状態についてネガティブな回答がポジティブな回答を上回っている割合です。
ネガティブな感情状態とは、怒り、悲しみ、不安、恐れを抱いている状態です。ポジティブな感情状態とは、くつろぎ、喜び、笑ったり微笑んだりしている状態です。
指標値の低い方が幸福度が高いと解釈することができます。

結果、日本のネガティブ感情度は31ヶ国中27位でした。

感情面だけから判定するなら日本人の幸福度はそう低くないのですが、幸福感を問うと低くなります。
日本人はネガティブな感情を抱いているわけではく、幸せかどうかの自己理解の基準が厳しいと考えることができます。

主要先進国の中で日本と似ているのはドイツです。
幸福感では31ヶ国中23位、ネガティブ感情度は19位でした。

他の主要先進国も検討してみます。
英国やフランスは幸福感が高く、ネガティブ感情度も高いです。
普段の感情状態は悪くても幸福であると考えていることになります。
米国やイタリアは幸福に関する感情と幸福の自己理解にあまり齟齬が見られませんでした。

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