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筋トレが癌を予防する(2)

免疫力が活性化したがん患者さんはがんが治りやすいとされています。
体内で発生した癌細胞は、私たちの免疫機能が正常に働いていれば免疫細胞の攻撃を受けて退治されます。がん細胞と戦う免疫細胞の数が多ければ多いほど回復に向かいやすくなります。
この免疫細胞は筋トレを行うとたちまち血中に増え始めます。中でもリンパ球の一種であるNK細胞は最も運動に反応し数を増やしていきます。
NK細胞は血流に乗って全身をめぐり、いち早くがんを見つけては始末してくれます。このNK細胞がたくさん増えれば、腫瘍に大量に集結し、大きくなったがん細胞を一斉に攻撃することができます。
私たちががんを発症せずに日々元気に生きられるのは、この免疫細胞が毎日のように発生しているがんを退治してくれているおかげです。

筋トレなどの運動を行うと、生体の調節機能に対して作用するマイオカインという物質が筋肉から血中に分泌されます。
このマイオカインには様々な生活習慣病を予防・改善する効果がありますが、近年新たなメリットが注目されています。
一部のマイオカインには、直接の抗がん作用やがんに対する免疫細胞の攻撃力を高める作用があると報告されました。
運動により、筋肉から天然の抗がん剤が生まれるというわけです。

主要なマイオカインは以下の3つです。
・イリシン…強力な抗がん作用があり、乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がんなどの増殖を抑制するとされる代表的な抗がん物質。
・スパーク…大腸がんに対して抗がん作用があり、血液中の濃度が低い患者は死亡リスクが高くなることが判明。
・インターロイキン6…がんの免疫監視機能で重要な役割を果たしているNK細胞を活性化し、がん細胞に対する攻撃を強める。

2013年に発表された、日本の男性約16万人と女性約18万人をおよそ10年間かけて追跡調査した大規模な研究によると、糖尿病の人はそうでない人と比べてがん発症率が1.2倍高くなりました。がんを発症し進行させてしまう有力な要因のひとつとして、血糖値が高い状態が挙げられています。
高血糖になるとインスリンが大量に分泌されます。このインスリンの分泌量が多いほどがんが進行しやすくなります。血糖値が高いがん患者さんは、そうでない患者さんよりも早い速度でがんが進行し、生存期間が短くなってしまいます。
筋トレなどの運動を行うことで血糖値が下がることが明らかになっています。

筋トレと有酸素運動を組み合わせて行なった患者さんは、抗がん剤の副作用の軽減が見られたという研究もあります。
病気の症状や副作用が少しでも緩和することができれば、生活の質を上げることにもつながります。

筋トレ初心者の方にはどのようなメニューがいいのでしょうか。
効率よく大きな筋肉に効かせることができ、どこでも行うことができるシンプルな動作のものがお勧めです。
自重トレーニングという自分の体重を使った運動法を用いて、上半身、腹筋・体幹、下半身という、3つの最もオーソドックスな筋トレを行うと良いです。

(例)
上半身…腕立て伏せ10回を2〜3セット。
腹筋・体幹…プランク1分を2〜3セット。
下半身…スクワット10回を2〜3セット。

回数やセット数は自分の筋肉量・筋力に合わせて調節します。
ちょっとつらいと感じる回数と時間を1セットあたりの目標として設定することで効果が上がります。
そして慣れてきたら少しずつ負荷を上げるということを続けてみましょう。

また、有酸素運動も加えることでがん患者さんの治療効果がさらに高まることが研究でわかっています。
無理なく継続できるものを選ぶようにしましょう。
ウォーキングは軽く息が弾むくらいの速度で早歩きをすると効果的です。

米国の癌生還者のための栄養と運動のガイドラインによると、有酸素運動の目安は1週間に計150分以上、筋トレは1週間に2〜3回とされています。
65歳以上のがん患者も可能であれば同様の運動が望ましいですが、そのほかの慢性の病気によって制限がある場合、長時間の運動は避けた方が良いとされています。

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