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【月はいつも見ている 〜兎〜 】第1章 ep.06

「ほんと申し訳ない」

「いいですよ、店長には色々よくしてもらっているから」

「明日は、しっかり入れとくから!指名受けても大丈夫ですか?」

「はい、昨日と今日の分取り戻さないといけないですから」

「タクシー呼びますね」

「いいですよ、ちょっと帰りに買い物でもして帰りたいから、お先失礼します。」

いつもは、深夜閉店間際まで働いているのだが、この日はまだ夕飯の時間にもまだ早い午後5時半すぎ、客の数とキャストの数が釣り合わなくなってきたので、早く上がることにした

2日連続、フリーとなると他のキャストの手前、私ばかり振ってもらうわけにはいかないので、客の入りが悪いと必然的にこうなってしまう。

まだ夕方の帰宅ラッシュは、始まっていないが満員の電車は避けたい。買い物はしたいとこだけどまっすぐ家路に着くことにした。

授業を終えた学生たちが、大声で笑い叫んだりで、賑やかになっている駅。そこの群衆をすり抜け足早にマンションに向かった。

数ヶ月前なら、こんな早い時間に帰っても少し待っていれば男も当たり前のように帰ってきた。一緒に買い物に行って食事を作って、食べながら今日あったことを互いに話して、そしてセックスをして朝を2人で迎える

アイツと別れてから、時間がこんなにある日は初めて。別に男が欲しいとは思わないけれど、独寝が寂しくなりそうで、今日はすごく怖ろしくなりそうだ。

小さな頃から独りで寝床につくのが怖ろしくもあり寂しくもあった。気がつけばお酒くさい母親が添い寝をしていた、それが私の救いでもあり安堵でもあった。

男と寝る時も、セックスよりも一緒に朝まで寝てくれるのが私には幸福感を感じた。



あ〜今から何しよう‥



自分が帰るマンションを見上げ、足が止まった

今の食欲は、そんなにないけど、夜寂しくなると‥過食で紛らわす。そうなることは予想できる

その過食をするために買い物に行くか、我慢して部屋に帰るか、マンションの前で、身体は硬直して顔だけが、マンションのロビーと自転車置き場を行ったり来たり。


「ムカイさん!」


この間肉じゃがと米をくれた人、容器を返さないといけないと思っていた。‥あれっ!?名前なんだっけ?

「あぁああっ!あのっ‥」

「ヒロミです」

「あっ〜!ヒロミさん。肉じゃが、すごく美味しかったです。あとご飯も冷めているのに甘いというか、容器を返そうと思ってたところなんです」

「いいですよそんなのいつでも、それより今、私の名前忘れてたでしょう(笑)」

少し意地悪な顔で、問い詰められた。

「今日、お仕事お休みなんですか?」

「そーじゃないんですけどね、仕事がないとこうやって早上がりになっちゃうんです。まぁこんなことは滅多にないんですけど」

「あ〜そ〜なんだぁあ〜。この後何か予定入れています?」

「特に、これといった予定はないですけど‥」

「もしよかったら、今から飲みに行きませんか?この間のお礼もしたいし、お酒は大丈夫ですか?」

「まぁ、普通には飲めますけど」

「じゃぁ行きましょうよ!初めはすごく面食らうとは思うけど、なんでも話せてすぐに打ち解けますから!」

ヒロミの人懐こい話し方に、流され返事はしたけれど、大丈夫なのかな?とも思ったけど、今から何をしようか考えていたこともあり一緒に行くことにした。

「じゃぁあ、よろしくお願いします」

帰るはずのマンションから駅へ逆戻り
背は私よりかなり高いのに、ヒロミの歩く速度は私よりもはるかに遅く少し苛立ちさえもあった

「ちょうど、今から何しようか考えていたとこなんですよ。ごめんなさい、ヒロミさん苗字はなんておっしゃいました?」

「ノグチです。今から飲みに行くんだからヒロミでいいですよ。ムカイさんは、名前聞いていいですか?」

「ミユです。ごめんなさい言ってなかったですね」

「ミユさん、もうタメで話しませんか?今から行くとこ敬語使っていたら多分肩こっちゃうから」

「場所はどこですか?」

「敬語!やめましょ!梅田!治安が悪いと言われている東通り」

「あっ!私そこから帰ってきたばかり」

「じゃぁ今度行く時は、仕事帰りにちょっとってできますね。」

「あっ!敬語。」

「あ〜ごめん。言い出しっぺの私がやっちゃった(笑)」

都市部から帰ってくる人々に逆流するように2人は駅に出向いた。


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何事も中途半端だった今年で55歳になるじじぃ。クオリティーは求めずまずは小説を完結させることを目指して書いていきたいと思っています。 書き上げたエピソードは何度も書き直し手直しをしちゃいますので、その点を踏まえて読んでいただければありがたいです。

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