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【月はいつも見ている 〜兎〜 】第1章 ep.08

「いらっしゃいませ!」

正に隠れ家とは、このことなんだろう。外は全く人の気配は感じなかったのに、中にはいると一変した。

「うわぁあ、いっぱいやん…」

「ヒロミちゃんごめん、今1つしか空いてないんだけど…今日はお化け屋敷になっちゃってるから。」

「聞こえてるよ!だれがお化けだって?」

「聞こえるように言うたんや!他のお客さんが入れなくなるから、早くでてくれよ!」

「うるさいよ!私達もお客だろ!ボトルもたくさんおろしてるし、客も連れてきてるし、あっ!ヒロミ!ひさしぶり!」

薄暗い部屋の中、最初はみえなかったがすぐに目が慣れてきて先客の姿が見えてきた。濃いメイクをして髪は派手な色、体は体育会系のガッシリ大きな身体の方もいたりして。そんな方たちが7人、8席しかないカウンターを彼女?たちが陣取っていた

「こんばんは!どうしよう…私しばらく中に入っとく、ミユさんはその席に座って」

「いいんですか?」

「このひとたちショーパブの人たちで、もうすぐ出勤しないといけないからそれまで」

「マスター、いいでしょう?それまで少し手伝うからお酒サービスしてよ!」

「コキ使うからよろしく!」

「ミユさん。マスターのタケダさん。」

軽く会釈をしてクールな顔立ち。黒のパンツに、黒のTシャツ。バーにしてはラフな格好で、Tシャツはピチッと彼のたくましい胸板と腕を強調させるような着こなし。

「奥に居る子が、ケン坊。アルバイト。今で言うフリーターかな」

「おい!ケン坊!お客さんや!こっち来い!そんな化け物相手してないで!」

「はいっ」

「だれが!化け物や!こんなベッピンつかまえて」

奥でショーパブの方たちに、いじられてるように見えた彼が呼ばれた、彼も普段着と思われるラフな格好で、黒のベースボールキャップを深く被って、目は帽子のつばで見えないが口元を見ると愛嬌のある表情はしてそう

「いらっしゃいませ、何飲まれますか?」

カウンター後ろの棚をみるといろんなお酒の瓶が並んでいる

軽く右手で頬杖をつきながら、その並んでいるお酒を見ながら

「いろんなお酒おいているんですね、カクテルなんか出来るんですか?」

「はい、レパートリーはすくないですが、マスターは凄いですよできないものは無いと思います。」

「俺にふるなよ!お前が作れ!」

「何にしよっかなぁあ…」

カウンターに肘を立て、両腕でピラミッドを作り、頂上の指先を曲げたり伸ばしたり焦らすような雰囲気を作り出すmyu(ミュー)。マスターとケン坊とヒロミ。そしてmyuの隣りにいるお姉さん?が何故か聞き耳を立てる中


「じゃあビールお願いします。」


聞き耳立てていた4人が体を傾けずっこけそうに

「ビールですか(笑)生と瓶がありますがどっちにします。」

「生できるんですか?」

「あなた、つかみ上手いねぇ。うち来ない?稼げるわよ!」

「こらっ!ピグモン!この人いま来たばっかで、なにスカウトしとんねん!手当たりしだい来る人来る人スカウトしやがって営業妨害じゃ!それにこの方女性や!」

「あたしも女性よ!って誰がピグモンや!」

「カンナさん!ツッコム順番間違えてます。それに男に戻ってますよ(笑)」

「あらっやだわ…あ、そうや!」

「マスター!ケン坊くれたらもうスカウトしないわ」

「アホか!こいつバカだからそのうち本気にしてまうやないか!」

「いいじゃない…」


「生ビールお願いします」


「はいっ…」


「じゃあ私は、自分で作ろうかなぁ…」

「おいおい!大ジョッキやないかい!」

「いいじゃない!おかわりするのが面倒だから」

氷を入れ、大ジョッキでヒロミはジントニックを作った

「はいどうぞ!」

myuには「大ジョッキでビールで提供された。

「じゃ、乾杯しよっか!」

「あっ!ちょっと待って!マスターとケン坊にも!」

「いいんですか?ありがとうございます!グラスビール2つもってこい。」

「はい」


「じゃいきますか!」


「かんぱぁあーい!」


カウンターの角でやっていたこのやり取り。がいつの間にかカウンター全体が一体となって、大きな乾杯となっていた




「これ、なんの乾杯?」

「さあ、ご新規さんの入店祝い?」



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何事も中途半端だった今年で55歳になるじじぃ。クオリティーは求めずまずは小説を完結させることを目指して書いていきたいと思っています。 書き上げたエピソードは何度も書き直し手直しをしちゃいますので、その点を踏まえて読んでいただければありがたいです。

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