見出し画像

想像力の欠如とは

 遡ること19年前の2002年、当時の首相、小泉純一郎氏が北朝鮮に訪問し、拉致被害者5名が帰国した。私はその時、ある百貨店で働いていた。休憩時間に昼食を食べながら見ていたテレビ番組は、その報道でもちきりだった。そして近くに座っていた60歳近い女性が、曽我ひとみさんとジェンキンスさんが、故郷である佐渡島に戻ったというニュースを見て言った。「いいよねぇ、この人たち、もう一生国が世話してくれて、お金に困らない生活なんだよ。羨ましいわ。」


 私の箸がピタリと止まった。この人、何を言ってるんだろう?どこの誰かも分からない人に拉致されて、殺されるかもしれないという不安を常に感じながら、言葉も分からない異国で生活させられ、常に監視され、知らない人と結婚させられ、二度と日本に帰れないかもしれない、二度と親兄弟に会えないかもしれない・・。そのような想像を絶する恐ろしい思いをしたということは、誰にでも理解できると思ったのだが、そうではなかったらしい。その後の「日本での立場」だけを見て、羨ましがる。想像力の欠如というものは本当に怖いものだ。そして、曽我さん家族は生活には困らないかもしれないが、プライバシーも何も無い様なものだ。今でこそ、拉致被害の帰国者のことはあまり話題には上らないが、まだ拉致されたまま行方が分からない方がいらっしゃって、その問題に言及すると、必ず話題に上がるのだ。自ら有名人になりたくてなったわけではないのに、インターネットで検索したら、ウィキペディアも作られている。重ねて言うが、彼女やその家族は被害者だ。


 最近、同じようなことが起こっている。秋篠宮眞子様の結婚問題だ。私の家はテレビが映らないので、テレビでどのような報道がなされているのか知らないが、たまに実家に帰ったときに新聞を読むと、週刊誌の広告が小室圭氏と眞子様の結婚に対するネガティブな見出しだらけで驚く。


 このような記事があふれているということは、需要があり、掲載すると雑誌の売れ行きが良くなる、ということだろう。なぜそんなに眞子様の結婚が気になるのか?なぜ小室氏の母親がどうとか、髪型がどうとか、スーツがどうとかそんな話になるのか?さっぱりわからない。親の問題など関係ないではないか。本人たちの意志で結婚を決めたのなら、周囲、しかも全く関係のない野次馬の言うことなど関係ない。というか、ここまで悪しざまに言われて、逆に結婚を諦めない小室氏には頭が下がる思いだ。私だったら「こんな思いまでして結婚したくない」と、結婚をやめるだろう。そして、今もし、小室氏が結婚取りやめを言い出したら言いだしたで、徹底的に叩かれる。そりゃ、日本を飛び出したくなるのも当然のことだ。しかも皇籍離脱時に支払われる一時金の受け取りを辞退されたのは、お気の毒としか言いようがない。そのお金は結婚の準備金としての体裁だが、生まれてから結婚するまでプライバシーがなかったことに伴う損害賠償的な意味もあることを鑑みれば、今の小室氏に対するプライバシーの侵害、人権侵害への慰謝料としても支払われてしかるべきである。
 

 今のこの現象を不思議に思う。今の上皇上皇后両陛下がまだ若かりし頃、美智子様は流行の髪型に流行の服を着ていた。ミニスカートを履いている姿も見たことがあったと思う。そして、美智子様のことを「ミッチー」と呼び、ミッチーブームとやらが起きた。昭和天皇の人間宣言から20年も経っていなかったというのに、随分と庶民的だ。美智子様は初の民間からの皇太子妃ということで人並ならぬご苦労をされたとは思うが、いまのSNSの皇室への発言は尋常ではない。眞子様ファン、と自称する人が眞子様のことをつぶやき、拡散され、その発言について、しなくてもいい議論を続けている。もう、この結婚話については、そのことを公に取り上げること自体が眞子様を傷つけてしまうことになる。私も、このようなコラムを新聞というメディアに書き、眞子様と小室氏を被害者たらしめる立場になってしまったからには、二度とこの話は取り上げないことにする。


 人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて、なんとかかんとか(自粛)である。そして、そんなことより、衆議院総選挙について考えて欲しい。眞子様の結婚問題についてツイッターでつぶやく暇があれば投票に行って下さい、と切に願う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?