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【16】「探さない、待つの」は嘘です。21世紀を生き抜く「変化を起こす」姿勢 #小原課題図書

#小原課題図書 16週目のテーマは、激動の現代を泳ぐためのマインドセットを養いつつ、迫り来る未来を理解する(自己解釈)です。編集者である以上、世の中の動きを最先端でキャッチアップすることが必須です。学び多い週だった…。では、早速レポします。


『THINK WILD』/リンダ・ロッテンバーグ

成功を阻む最大の要因は、構造的な障壁や文化的な障壁ではない。それは精神的、感情的な障壁である。

そう語るのは、『THINK WILD』(リンダ・ロッテンバーグ著、 江口 泰子訳、ダイヤモンド社)の著者リンダ・ロッテンバーグ。彼女はこれまでに4万人を超える起業家と面談し、審査の上選ばれた1000人以上の起業家を支援してきました。支援した起業家たちが生み出す価値は年間70億ドル。

自身の経験を踏まえ、成功する起業家のマインドを数々の事例から解説。過去に読んだ『20歳のときに知っておきたかったこと』『20 under 20』に通ずることも多くありましたが、より一般の人々にも再現可能となるよう整理されていたと思います。

『20歳のときに知っておきたかったこと』の著者ティナ・シーリングは、たとえ起業家ではなくても「起業家精神」を持つことが重要であると指摘しました。その理由は上記noteに詳しいですが、本書は「起業家精神」を養う、もしくは「起業家精神」を持って生きる方法を詳細に述べています。

起業家は、変化を待たない。変化を起こすのである

何事も、新しいことを始めるときには苦痛が伴うもの。会社を辞め転職するのも、起業するのも、新規事業を起こすのも、ある意味未知への挑戦です。つまり最初の一歩を踏み出すことは、少なからず心的ハードルがある。

ブルゾンちえみは「探さない、待つの」と名言を残していますが、リンダは、優秀なアントレプレナーたちのことを「彼らは変化を待たない。彼らが変化を起こすのだ」という。

とはいえ、優秀なアントレプレナーにも共通する課題があるそうだ。それは「考えすぎ、計画と分析に時間をかけすぎていることである」。仮に完璧なビジネスモデルを作成したとしても、外部要因のいかんではそれが完璧に作用するとは限りません。それならば、まずは行動を起こすべき。起業家精神のカギは「実践を通して学ぶこと」であるため、「尻込みしたくなるようなプロセスは、小さく区切り、まずは始めてみるものだ」と考えておくことが変化を起こす一歩になります。

“thinking big, starting small, and scaling fast.” 

ただ、苦痛は変化を起こすときにだけ訪れるものではありません。変化を起こすことはリスクを伴います。リンダは、困難に直面するアントレプレナーが自身のもとを訪れた際にとあるホワイトボードを見せるのだといいます。その中に書かれている一つが、「大きく夢見て、小さく成果を積み重ねる」ことです。シリコンバレーのアクセラレーターの調査によると、スタートアップの主な倒産理由は「競争ではなく自滅」。時期尚早の事業拡大が、自らを崩壊に招くのだそう。

「アクセル全開で、いきなりゼロから時速100キロメートルまでスピードをあげようとするな。大きく夢見て、小さく成果を積み上げるのだ」

大きく夢見たら、周囲から向けられる「白い目」と「クレイジーだ」という揶揄に耐え、まずは行動を起こしてみる。行動を起こしたら、小さく成功を積み重ねる。謙虚さをもち、夢を達成することが、夢に通ずる近道を探すことにすり替わらないようにする。これが、僕が同書から得た最大の学びです。

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本書はおよそ400ページに膨大な成功のエッセンスを凝縮しているため、すべてを紹介しきることはできません。他には「リスクのスマートな取り方」や「逆境を乗りこる戦術」等、具体的なチップスTIPSも盛り込まれています。

ややお値段が高いですが、繰り返し読むに値する良書です。起業家として、組織の一員として、フリーランスとして…困難に直面してもゴールをブラさず、常に目標の一点を見据えて成長を続けられる人材でありたいのなら、手に取ってみてください。


『なめらかなお金がめぐる社会。』/家入一真

周りの20代の子たちを見ても、名誉やお金に全く興味がない子が明らかに増えている。彼らはいわゆる「さとり世代」と呼ばれていて、その流れはもちろん、若手起業家界隈にも浸透してきている。「起業」と聞くと、少し前だと「有名になりたい」「億万長者になりたい」「権力を持ちたい」といった若干ギラついたイメージがあったけど、今の若い起業家はお金儲けのことより「社会のために何ができるのか」と純粋に考える子が増えている。

そう語るのは、『なめらかなお金がめぐる社会--あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』(家入一真著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著書であり、起業家の家入一真氏。家入氏は「物質的な豊かさ」を求めてきた高度経済成長期以降の価値観が崩れ去り、物欲を満たす生きがいが目的を達成することに取って代わると指摘しています。

本書で例示されている「マズローの欲求五段階説」が分かりやすくこの変化を捉えているので紹介します。

画像の出典:モチベーションアップの法則

先進国の日本は世界的にみて成熟した社会であり、生理的欲求や安全欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求が満たされているといえます。日本人は欲求段階の最上位にある「自己実現の欲求」を求めるフェーズに突入し、お金に代表される物質的な欲求は付随的なものになっているのです。

国全体が豊かさを求め、大企業に入り高い収入を得ることが幸せだと認知されていた時代は既に過去のもの。その変化は社会がより成熟していることのあらましですが、ただ、それによって不幸になる人がいることも忘れてはいけません。

「大きなことはいいことだ」という今までの絶対的な価値基準がなくなったことで、どこを見て進んでいけばいいのかわからず、つらい思いをしている若者が増えている。

つまり達成したい目標や譲れない価値観など、確固たる幸せの基準を持たない人が路頭に迷ってしまうのです。そうした混沌とした社会を救うのが、家入氏の語る「小さな経済圏」なのだそう。

家入一真的「幸せな社会」=小さな経済圏

幸せとは何かと考えたら「自分のやりたいことができる」ということなんじゃないか、と思う。だとすれば「いい社会」とは「各自が自由に、自分の幸せを追求できる社会」ということになる。つまり、経済的というよりも、精神的に持続可能な社会だ。

家入氏はこうした仮説のもと、「機会の平等」を実現する資本主義のアップデートを目指しています。その取り組みの一つが、クラウドファンディングのプラットフォーム「CAMPFAIRE」。

CAMPFAIREは「資金調達を民主化し、世の中の誰しもが声をあげられる世の中をつくる」とビジョンに掲げています。目指しているのは、クラウドファンディングによる資金調達を通じ、有名でない人も、お金がない人も、夢や目標に挑戦する機会が得られる社会です。

…それって「経済的」に持続可能な社会じゃない?と思う方がいるかもしれませんが、同サービスには家入さんの想いが反映された仕掛けがたくさん施されています。

秋田の学生が「こんなことをやりたい」と声をあげたら、東京で働く社会人がそれを支援し、学生の目標が実現する。そんな、“個人を中心とした小さな経済圏”をつくる仕掛けです。

一つ例を挙げると、支援したプロジェクトのリターンが返ってこないトラブルを防ぐ「クラウドファンディング保険」。クラウドファンディングは支援したお返しにリターンを用意することが通例ですが、海外のサイトではリターンが返ってこないこともしばしばあるそう。こうした事例が増えると、クラウドファンディング自体が定着しなくなってしまいます。なぜなら、支援する側はもちろん、支援を受ける側も「もし約束したリターンが返せなかったらどうしよう」とプロジェクトの立ち上げにハードルを感じてしまうからです。

しかし、保険があれば立ち上げる側も思い切って挑戦ができます。この積み重ねは小さな経済圏を数多く生み、家入氏が構想する“精神的に持続可能な社会”をつくる一因になるのです。

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同書の最終章「おわりに」で、家入氏は「小さなコミュニティを作ったり、小さな経済圏を作ったりするほうが日本人は得意なのではないだろうか」と語っている。そして、「自分の半径数メートルのところで満たされる世界みたいなのをつくる方が幸せになれるかもしれない」とも。

たしかに、地方から出てきた一人として頷く部分があります。地元秋田では、近所の余り物をいただいたり、農家の友達がお米をくれたり、極論仕事がなくてもご飯が食べられる。おばあちゃんなんか、1本数千円の記事を書いただけで(結果の云々問わず)褒めてくれる。それがいいことなのか悪いことなのかは一旦さておき、いわゆるそうした“非貨幣の経済圏”は幸せに満ちています。

ずっとそこに止まっているのはなんとなく歯がゆいけれど、そうしたコミュニティを持つことは個人の幸福につながり、日本社会が突入する「自己実現の欲求」ニーズに合致しているのではないかと思いました。


『ブロックチェーン入門』/森川夢佑斗

最近よく耳にする「ブロックチェーン」。世界に変革をもたらす技術と期待されているそうですが、ビットコインを成立させるための仕組み…くらいに捉えている人も多いのではないでしょうか(僕がそうです)。

IT業界に足を置いているわけでもないし、用語を知っておけば大丈夫かな…と思っていましたが、ちょっと浅はかだったようです。『ブロックチェーン入門』(森川夢佑斗著、ベストセラーズ)の著者、森川氏が言うことには「ブロックチェーンがあらゆる産業に影響を与え、新しいサービスを生み出していく時代に急速に突入していくでしょう」。「もしかすると人工知能が人の仕事をなくすことよりも、現実的でインパクトがあるかもしれません」。「理解しにくいため大半の人が二の足を踏んでいる今が最大のチャンスとも言えます」。

ということで、ブロクッチェーンとはそもそもどのような仕組みであるのか。そして、ブロックチェーンによってどのような産業革命が起こるのかを勉強していきます。

ブロックチェーンとは?

ここでは、ブロックチェーンの解説を森川氏の言葉を拝借しながら、ビットコインの取引に関して話を進めます。

ブロックチェーンとは「全ての取引(トランザクション)が記帳された仮想的な台帳」のこと。「仮想通貨ビットコインを、何時何分に誰が誰にどれくらい送ったか」という記録を仮想的な台帳に記録する技術です。

記録は10分ごとに箱の中にまとめられ、その箱が時系列とともにチェーンのように連なることから「ブロックチェーン」と呼ばれています。

ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンのキーワードや特徴はいくつかあるのですが、ここでは特に注目すべき2つのポイントに絞って解説します。

まずは、「中央システム不在の分散型システムである」こと。ブロックチェーンは個人間でダイレクトにビットコインのやり取りをすることができますが、銀行では個人間送金を行う際に、厳密には第三者が仲介する仕組みになっています。銀行に一度お金を預け、銀行が送り先に送金を行っているのです。この第三者が仲介するモデルの場合、仲介者が不正を行うリスクがあります。しかし、不正を行ったところで被害を被るのは自分なのです。たとえば、銀行が不正を行っていたら、誰もお金預けなくなります。すると銀行のビジネスモデルは成り立たず、不正をすることがかえって不利になる。中央集権システムは、圧倒的な信用があるからこそ成り立っています。

ブロックチェーンは中央システム不在の分散型システムですが、信用が担保されています。これが2つめのポイントです。例えばお金を借りた場合、借りたまま逃げる、もしくは相手がそれを意図的に忘れる…なんてこともなくはありませんが、ブロックチェーンを採用するとそうした「不正をすること自体が非合理」になります。

ブロックチェーンも銀行のモデルと同じように、データを改ざんすると、ブロックチェーンそのものの信頼が失われてしまうのです。そもそもデータを改ざんすること自体が困難なのですが、データを改ざんしてちょっとした不正利益を得たところで、そのものに価値がなければ、その苦労すら意味がない。もともと改ざんが難しい上に、仕組みを維持する上で不正があると誰にも利益がなく、個人の直接的なやり取りにも不正が起きないのです。

分散化が巻き起すイノベーション

信用を担保しつつ分散化できることで、産業にも大きなイノベーションが起きます。ひとつ例を挙げると、シェアリングエコノミー。UberやAirbnbなのどシェアリングエコノミーサービスは、個人と個人をつなげるサービスですが、仲介する機関があり、そこが手数料を頂戴しながら信用を担保することで契約が成り立ちます。つまり、本当の意味で個人間のやり取りではありません。

しかし、ブロックチェーンによって信用が担保されれば、個人同士がダイレクトにつながる、まさにシェアリングエコノミーが機能するのです。こうした機能は、ライターの利用者も少なくないクラウドソーシングにも効果を発揮します。

クラウドソーシングは、外注に手数料を要するため、仕事の単価が低くなりがちな問題がありました。暗号通過は少額のやり取りにも有用なため、ちょっと仕事であっても手数料を取られないのであれば発注が可能になり、仕事の幅を広げることもできます。

また、仮想通貨で出資を募るICOが普及するなどすれば、国の法定通貨に頼らない仮想通貨が誕生する可能性があります。仮想通貨が個人のアイディアやサービスに紐付くことで、将来的にそのコインだけで生計を立てる人が生まれる可能性すらあるのです。

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「ビットコイン」は、ブロックチェーンがもたらす変革の一部。既存のビジネスモデルはおろか、社会をアップデートするインパクトを持っています。森川氏が言うように、学ぶなら「今が最大のチャンス」。興味を持たれた方は、ぜひ一読を!


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